美味くなきゃ意味がない
──世の中には、レコーディングにたっぷり時間をかけて作品の完成度を上げていくタイプのアーティストも多いと思うんですが、ザ・クロマニヨンズはそういうやり方を選ばないんですね。
マーシー そういうのキリがないんですよ。それを言い始めちゃうと「そこにギターの弦のスライドのシュッていう音入ってるけど、その音出すなよ」みたいな話になってきて、だんだん人間の手では不可能な作業になっていく。煮詰まる要素がどんどん増えてくるってことを僕ら経験で知ってるんです。
ヒロト だって「アーティスト」っていう言い方がもうおかしいもんね。いつからそんなふうに呼ぶようになったんだろうな。
──確かにお二人を見ていると「アーティスト」より「バンドマン」という肩書きのほうがしっくりきます。
ヒロト うん、その日暮らしのバンドマンですよ(笑)。
マーシー だから4人が集まってドーンってやって「カッコいい! いいじゃんこれで!」っていうのが正解なんです。それを僕らは知ってる。それが一番楽しいんだっていうことも。
──でもそれは「楽しくやれればできあがった作品は80点くらいでいいか」という話ではないですよね。
ヒロト うん、いつでもベストを目指してますよ。このアルバムも最高傑作だと思ってる。だからね、トンカツに例えるなら、小難しいレシピとかどうでもいいんです。美味けりゃいい。店にお客さんがいっぱい来て「うめーな!」「おかわり!」って言ってくれたらそれが最高じゃないですか。もし誰かが実験室に入って、朝までかかって1枚のトンカツ揚げて理屈こねてたとしてもさ、それは技術的にはすごいのかもしれないけど、だけど美味くなきゃ意味がないもん。
──そんなに悩んだりこねくり回したりしなくても、美味いものは作れる。
ヒロト そうそう! そこで「世界で誰も作ったことのないソースをかけるんだ」とか言われても「やめて!」って思うでしょ(笑)。そういうことなんです。
「ハッセンハッピャク」の意味
──歌詞についてはどうですか? テーマみたいなものを決めて書くこともあります?
ヒロト レコーディングしながら改めて自分の歌詞を見てるときなんかに、「あっ、この歌詞こういう意味なのか」って自分で気付いたりすることはあるよ。作ってるときは意識してなくてデタラメに書いてるんだけど。
──例えば「ハッセンハッピャク」という曲は、サビで「ハッセンハッピャク」と繰り返し歌われますが、何が“8800”なのかは最後まで示されないですよね。
ヒロト これも書いたときはとりあえず「ハッセンハッピャク」って語感がいいなって思っただけなんだよね。でも途中で気付いた。
──「ハッセンハッピャク」には意味がある?
ヒロト あります。でもそれはみんなが好きに受け取ればいいし、別に考えることでもないです。
──歌詞を書いたときじゃなくて、あとからその意味に気付くんですか?
ヒロト うん、でも別にそれはどうでもいいんだ。みんなが「面白いな」と思ったり「楽しいな」と思ったりすることが大事だから。「ハッセンハッピャク」ってみんなで言ったら気持ちいいだろうなって。
──でも私たちファンがライブに行って一緒に「ハッセンハッピャク!」って叫ぶとき、そこにどんな気持ちを乗せればいいんでしょうか? 例えば「ギリギリガガンガン」で「今日は最高!」って叫ぶときは「今日は最高だな!」と素直に思えるんですが、「ハッセンハッピャク」の場合はどうしたものかと……。
ヒロト それもいいじゃないですか(笑)。みんなが「?」と思いながらでっかい声を出すんです。
ロックンロールは贅沢なオモチャ
ヒロト これちょっと話がズレるんだけど今の話で、前に行ったコンサートのことを思い出した。日本武道館にSex Pistolsが来て演奏したとき、まず武道館にピストルズっていうマッチングもおかしかったけど、さらに客席に日本人がびっしりいて「Anarchy in the U.K.」を大合唱してるっていう光景が。
──天井に日本の国旗がぶら下がってる中で(笑)。
ヒロト あれはシュールだったな。一瞬「?」が浮かんだけど、そのおかしさも含めて、「ロックンロールってなんて楽しいんだろう」「いろんな面白さがあるんだな」って思ったんだよ。
マーシー あと「なんだこれ?」と思ったのは、ブルース・スプリングスティーンのライブで日本人の観客がみんなで「♪Born in the U.S.A.」って歌ってたときかな。
ヒロト 「お前日本人だろ!」って?(笑)
マーシー でも観てるときはそんなこと全然思わないんですよ。「うお、カッコいい!」って思ってるだけなの。あとで冷静になったときに「あれ?」っていう。
ヒロト 面白いよね。だから僕らの歌詞も、あんまり肩苦しく捉えず、オモチャだと思ってもらえたら。ロックンロールっていう贅沢なオモチャなんです。一生飽きない。
──だからと言って、あえて意味から離れてナンセンスなものを作ろうと考えてるわけでもないですよね。
ヒロト そんな狙いもないよ。わざとナンセンスにしようなんて全然思ってないです。さっきマーシーが言ったように「あっ、カッコいい」って思えればいいの。その瞬間カッコいいと思ったことでもうその料理はできあがる。だから「ハッセンハッピャク」も作ってて楽しかった。意味はわかんなかったけど、そんなの考える必要もないんです。
──じゃあ歌を通して伝えたいメッセージみたいなものはないですか?
ヒロト 自分で意識してなくても、知らず知らずにメッセージはにじんでると思う。それが何かのタイミングでじわっとつながることもあったり「あっ!」って気付くこともあったり。そういう楽しみを残しといたほうがいいんじゃないかな。
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悩み相談 その1
- ザ・クロマニヨンズ「ラッキー&ヘブン」
- 2017年10月11日発売 / アリオラジャパン
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[CD]
3146円 / BVCL-837 -
[アナログ]
3146円 / BVJL-28
- 収録曲
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- デカしていこう
- 流れ弾
- どん底
- 足のはやい無口な女子
- ハッセンハッピャク
- 嗚呼! もう夏は!
- 盆踊り
- ユウマヅメ
- ルンダナベイビー
- ワンゴー
- ジャッカル
- 散歩
- ザ・クロマニヨンズ ツアー ラッキー&ヘブン 2017-2018
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- 2017年10月26日(木)北海道 札幌PENNY LANE24
- 2017年10月27日(金)北海道 札幌PENNY LANE24
- 2017年10月29日(日)北海道 小樽GOLDSTONE
- 2017年11月3日(金・祝)大阪府 なんばHatch
- 2017年11月4日(土)大阪府 BIGCAT
- 2017年11月5日(日)大阪府 BIGCAT
- 2017年11月8日(水)山梨県 甲府Conviction
- 2017年11月11日(土)愛知県 DIAMOND HALL
- 2017年11月12日(日)愛知県 DIAMOND HALL
- 2017年11月17日(金)福井県 福井まちなか文化施設 響のホール
- 2017年11月19日(日)新潟県 NIIGATA LOTS
- 2017年11月23日(木・祝)秋田県 Club SWINDLE
- 2017年11月25日(土)青森県 青森Quarter
- 2017年11月26日(日)岩手県 Club Change WAVE
- 2017年11月28日(火)東京都 赤坂BLITZ
- 2017年11月29日(水)東京都 赤坂BLITZ
- 2017年12月2日(土)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
- 2017年12月3日(日)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
- 2017年12月6日(水)京都府 京都FANJ
- 2017年12月7日(木)京都府 京都FANJ
- 2017年12月9日(土)香川県 高松festhalle
- 2017年12月10日(日)高知県 X-pt.
- 2017年12月13日(水)群馬県 高崎clubFLEEZ
- 2017年12月16日(土)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
- 2017年12月17日(日)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
- 2017年12月20日(水)千葉県 KASHIWA PALOOZA
- 2017年12月23日(土・祝)福岡県 DRUM LOGOS
- 2017年12月24日(日)福岡県 DRUM LOGOS
- 2017年12月28日(木)神奈川県 CLUB CITTA'
- 2018年1月13日(土)沖縄県 ミュージックタウン音市場
- 2018年1月16日(火)宮崎県 MIYAZAKI WEATHERKING
- 2018年1月17日(水)鹿児島県 CAPARVO HALL
- 2018年1月19日(金)山口県 周南RISING HALL
- 2018年1月21日(日)鳥取県 米子 AZTiC laughs
- 2018年1月27日(土)宮城県 チームスマイル・仙台PIT
- 2018年1月31日(水)東京都 新木場STUDIO COAST
- 2018年2月3日(土)福島県 郡山HIP SHOT JAPAN
- 2018年2月7日(水)岐阜県 岐阜club-G
- 2018年2月9日(金)滋賀県 滋賀U★STONE
- 2018年2月10日(土)滋賀県 滋賀U★STONE
- 2018年2月12日(月・祝)和歌山県 SHELTER
- 2018年2月14日(水)兵庫県 Harbor Studio
- 2018年2月15日(木)兵庫県 Harbor Studio
- 2018年2月20日(火)長野県 Sound Hall a.C
- 2018年2月24日(土)岡山県 岡山市民会館
- 2018年2月25日(日)広島県 はつかいち文化ホールさくらぴあ 大ホール
- 2018年3月2日(金)北海道 新冠町レ・コード館
- 2018年3月4日(日)北海道 幕別町百年記念ホール
- 2018年3月10日(土)栃木県 栃木県教育会館
- 2018年3月11日(日)埼玉県 さいたま市民会館おおみや
- 2018年3月17日(土)愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
- 2018年3月21日(水・祝)静岡県 三島市民文化会館ゆぅゆぅホール 大ホール
- 2018年3月24日(土)福岡県 サザンクス筑後
- 2018年3月27日(火)神奈川県 鎌倉芸術館 大ホール
- 2018年4月1日(日)大阪府 フェスティバルホール
- 2018年4月7日(土)千葉県 市川市文化会館
- 2018年4月8日(日)東京都 オリンパスホール八王子
- 2018年4月14日(土)富山県 クロスランドおやべ メインホール
- ザ・クロマニヨンズ
- 1980年代からTHE BLUE HEARTSとTHE HIGH-LOWSで活動をともにしてきた甲本ヒロト(Vo)と真島昌利(G)を中心に2006年夏より始動。甲本と真島に小林勝(B)と桐田勝治(Dr)を加えた4人で、2006年9月にデビューシングル「タリホー」を発表する。その後もリリースを重ねながら年間を通してコンスタントにツアーを開催。数々のフェスにも出演し、ロックファンを熱狂させ続けている。2017年8月に16枚目のシングル「どん底」を発売。10月にはアルバム「ラッキー&ヘブン」をリリースし、翌年4月まで続く全国ツアーを実施する。