音楽ナタリー Power Push - ザ・クロマニヨンズ
趣味に没頭してるだけ
基準は自分が感動できるかどうか
──クロマニヨンズは、新しいアルバムを作ったあとのツアーで、アルバムの収録曲をほぼ全曲演奏しますよね。そこでのお客さんの反応を見て、この曲は盛り上がったから次のライブでもやろうとか、フェスのセットリストに入れようとか、そういったことは考えますか?
ヒロト スタッフから「これウケてたからもっとやれば?」みたいな助言をもらうことはありますけど。でも自分たちにとっては、お客さんの反応は関係ない。
マーシー どの曲も全部カッコいいと思ってやってるからね。
──ライブやフェスで盛り上がる曲を作ろうと思ったことは?
ヒロト そういうの狙ったことはないですね。
マーシー ウケを狙って曲を作るってことですよね? 考えたことないです。「ヒット曲作るぞ」って言ったって、そんなんで作れるもんじゃないし。
ヒロト たぶんね、そうやって作れる曲もあるんだよ。でもそんな曲を作っても自分が満足できないと思うし、それを聴いても自分が感動できない。僕らは毎回自分が感動して「うわ、カッコいい!」と思いながら1曲1曲作ってるだけで。もちろんそれは自分の舌がうまいと思ってるだけだから、好みが違う人にはなんにも響かない場合もあるかもしれない。でもそれはそれでいいんです。
──自分がいいと思えればそれでいい?
ヒロト もちろん。だからそういう意味では全曲キラーチューンだと僕は思ってます。そこが大事なんですよ。
マーシー 「自分ではこの曲イマイチだと思うけど、なんかウケるからやろうか」とかそういうことはないよね(笑)。自分が楽しいかどうかが一番だから。
ジジイが隠居してるのと同じ
──ヒロトさんもマーシーさんも30年以上ロックバンドを続けていますが、「このままジジイになっても続けていきたい」みたいなことは考えますか?
ヒロト っていうか、もうすでにジジイなんで(笑)。あの、僕が言うジジイっていうのは年齢のことだけじゃないよ。昨日もある人と話してて、その人は役者をやってるんですけど、「俺たち全然変わらないけど、昔と比べて1つだけ変わったことがあるよね」「うん、今はバイトやってねえもんな」って言ってたの。
──なるほど。
ヒロト バイトをやめたときからずっと趣味に没頭してる。ずっと音楽だけをやってる。だから今の生活は、もうジジイが隠居してるのと同じなんです。
──じゃあ仕事をしてるっていう意識は?
ヒロト ないです。例えば盆栽いじりが趣味だっていう人が、ある日気が付いたらバイト全部やめて盆栽だけいじってた。これはもう隠居ですよね。そして隠居を引退するときっていうのは、それはもう死ぬときなんです(笑)。僕らは20代後半からずっとその状況で、ずっと好きなことをやってるだけだから。
──飽きたりもしないですか?
ヒロト 飽きたらやめます。趣味の盆栽いじりだからね。そんなにがんばってやるもんでもないじゃん。それを「プロとしての責任感がない」って言う人もいるかもしれないけど、でも僕が客だったらそういうバンドを観たいです。
──趣味でやってるバンドがいい?
ヒロト うん。趣味でやってて、責任感とかじゃなく、ただ本当に歌いたいんだっていう人の歌を聴きたい。それはバンドを始めたときからずっと同じです。僕らはただ趣味に没頭してるだけなんですよ。
- ニューアルバム「BIMBOROLL」2016年11月2日発売 / アリオラジャパン
- 「BIMBOROLL」
- CD / 3146円 / BVCL-747
- 完全生産限定アナログ盤 / 3146円 / BVJL-23
収録曲
- ペテン師ロック
- マキシマム
- ピート
- おれ今日バイク
- デトマソパンテーラを見た
- ナイアガラ
- もれている
- 誰がために
- モーリー・モーリー
- 焼芋
- 光線銃
- 大体そう
ザ・クロマニヨンズ
1980年代からTHE BLUE HEARTSとTHE HIGH-LOWSで活動をともにしてきた甲本ヒロト(Vo)と真島昌利(G)を中心に2006年夏より始動。甲本と真島に小林勝(B)と桐田勝治(Dr)を加えた4人で、2006年9月にデビューシングル「タリホー」を発表する。その後もリリースを重ねながら年間を通してコンスタントにツアーを開催。数々のフェスにも出演し、ロックファンを熱狂させ続けている。2016年11月には通算10枚目となるオリジナルアルバム「BIMBOROLL」をリリース。その後2017年4月まで、約5カ月間56公演におよぶライブツアーを実施する。