音楽ナタリー Power Push - ザ・クロマニヨンズ
ヒロトとマーシーが明かす“変わらないバンド”の秘訣
聴いてる音楽とやってる音楽はつながらなくていい
──以前ヒロトさんはドレスコーズの志磨さんとの対談で「ロックンロールっていうのは目的地に向かって進んでる感じじゃなくて、1カ所をずっと掘ってる感じ」と話していましたよね(参照:甲本ヒロト×志磨遼平対談)。
ヒロト 僕がそう感じるっていうだけですけどね。
──でもクロマニヨンズは本当にその言葉通り、脇道にそれず、1つの穴を深く掘り続けてるイメージがあります。
ヒロト それがどういうことなのか自分ではちょっとよくわからないけど、掘っていくって感覚はある。それはリスナーとして特にそうかもしれない。この音楽は何に影響されてこうなったんだろうって、それでさかのぼってブルースを聴いたり、1920年代の音楽を聴いたりするわけですよ。それはやっぱり“掘る”っていう表現が合ってる気がします。根っこをたどっていく感じがするんですよ。
──お2人とも毎日たくさんのレコードを聴いてると思うんですが、それらがクロマニヨンズの音楽に影響を与えることはありますか?
ヒロト 影響はもちろんあるよ。でも音には出ない。例えばジョン・コルトレーンを聴いてカッコいいなと思っても、似たような曲をやろうとは思わないし、ボブ・マーリー聴いてカッコいいなと思っても「よし、レゲエやろう」とは思わない。コルトレーンの情念だとか、吹いてるときのあの感じ!みたいなものがこのアルバムに入ってればいいなとは思うけど、でもスタイルは違うものになるよね。
──ヒロトさんがTHE BAWDIESのROYさんとの対談で言っていた「曲をカバーするんじゃなくて、そこにある熱をカバーするんだ」という話に通じるものがありますね(参照:甲本ヒロト×ROY対談)。
ヒロト だって朝から晩までいろんな音楽聴いてるわけで。バップのジャズや20年代のブルースからソウル、レゲエ、フォーク、アイリッシュ。クラシックはめったに聴かないけど聴くときもある。そのすべてから影響受けるけど、僕はそういうのを聴く人で、その僕がやってるバンドがこれだっていうだけ。それだけのことなんで、聴いてる音楽とやってる音楽がつながらなくても、それはどうでもいいんです。
──マーシーさんも同じような感覚ですか?
マーシー うん? そうなのかな?
ヒロト よくわかんないよね。
マーシー わかんない(笑)。
ヒロト 俺だって今、無理やりしゃべってるんだよ(笑)。わかんないけど、あまりにもページが真っ白になっちゃかわいそうだなと思って。
──ありがとうございます(笑)。
ヒロト 正直に答えようとするとどうしてもこうなっちゃうんだよ。
お互いに影響されないわけがない
──ヒロトさんとマーシーさんはお互いの作風についてはどう感じてるんですか?
ヒロト もう麻痺してて客観視できないなあ。ずっと一緒にやってて、数え切れないぐらい歌ってて。僕は30年間、自分の曲かマーシーの曲しか歌ってないんです。そうするともうわかんなくなってくる。どっちがどっちの作品なのか。
──確かに昔は曲を聴けばどちらが書いた曲かすぐわかったんですけど、最近はわからないことが増えました。
ヒロト こんだけやっててお互いに影響されないわけないからね。しかもなんにも考えてないわけだから、自然な影響ってのはやっぱりあると思いますよ。
──お互いの曲を聴いて、自分にはない要素を感じることはありますか?
ヒロト もちろんいっぱいあると思う。でもそれはうまく説明できないな。
マーシー うん、当然あるけど、そんなたいした問題じゃないですね。
──ヒロトさんはマーシーさんが作った曲を歌うとき、例えば「歌詞のこの部分の意味がわからないんだけど」みたいなことはないですか?
ヒロト いやいや、だって自分の歌詞も意味わかんないんだから(笑)。歌詞の意味について深く考えて、心を込めて歌うみたいなタイプじゃないんです。
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収録曲
- 生活
- やる人
- 夜行性ヒトリ
- 這う
- 生きてる人間
- エルビス(仮)
- 俺のモロニー
- オバケのブルース
- 原チャリダルマ
- ボラとロック
- 中1とか中2
- 今夜ロックンロールに殺されたい
ザ・クロマニヨンズ
1980年代からTHE BLUE HEARTSとTHE HIGH-LOWSで活動をともにしてきた甲本ヒロト(Vo)と真島昌利(G)を中心に2006年夏より始動。甲本と真島に小林勝(B)と桐田勝治(Dr)を加えた4人で、2006年9月にデビューシングル「タリホー」を発表する。その後もリリースを重ねながら年間を通してコンスタントにツアーを開催。数々の夏フェスにも出演し、ロックファンを熱狂させ続けている。2015年10月には通算9枚目となるオリジナルアルバム「JUNGLE 9」をリリース。同年11月から全70公演におよぶ47都道府県ツアーを実施する。