音楽ナタリー Power Push - ザ・クロマニヨンズ
ヒロトとマーシーが明かす“変わらないバンド”の秘訣
人の言うことを聞かないのがコツ
──でもそうやって自分勝手なスタンスを保ち続けることは、逆にすごく難しいことなんじゃないかとも思うんですが。
ヒロト それが難しくないんだよ。
マーシー ラッキーなんだ。
ヒロト そうそう、ホントにね。
マーシー 僕らがこうやってヘラヘラやってるのを、お金払って観に来てくれたり、レコード買ってくれたりする人たちがいるわけでさ。
ヒロト 運がいいよなあ。
マーシー もしそういう人たちがいなければ、僕らだって「ヘラヘラしてちゃダメなんじゃないか」って考えるかもしれない。
ヒロト もう1回、珉亭(下北沢の中華料理屋)で皿洗いしなきゃって(笑)。
──あはは(笑)。
マーシー でも僕らが楽しくやってることをさ、応援してくれてる人がいてさ。
ヒロト 申し訳ないね(笑)。
マーシー ラッキーだなあ、っていうのはたまに思いますね。
ヒロト だから「応援してます」って言われると恐縮しちゃって「しなくていいから」って思う。「邪魔だけしないでくれよ」って。
──ただ、今マーシーさんが言った「みんながライブに来たりレコード買ったりしてくれるおかげで自由にやれる」というのの逆で、「みんなの期待が集まりすぎて身動きが取れなくなる」というケースもあると思うんです。先日NHKの番組でマーシーさんは「20代の頃、急に売れすぎておかしくなった」という話をしてましたが、そういう面倒なことも今はうまくかわしていますよね。
マーシー そうですね。それはやっぱり経験じゃないですか。
──何かコツがあったら教えてください。
マーシー コツはね、あのね、これ歳とれば誰でもそうなんですけど、頑固になるってことですよ。頑固で人の言うことなんか一切聞かないっていう人になる。自分が楽しければいい。世間の目なんか関係ねえし、人がどう言おうが関係ないんだっていうふうに、だんだんなっていくんですよ。
誰かの期待に応えるのは難しい
──クロマニヨンズは結成以来ソリッドなロックンロールを演奏し続けていますが、そこからはみ出したものはどうなってるんでしょうか? 例えばマーシーさんのソロアルバムはもう20年以上出ていません。その間、自分の中にあるパーソナルな世界を表現したいという欲求はなかったんですか?
マーシー うん……なかったかな。
──以前ソロの作品を作っていた頃はそれがあったということですか?
マーシー ……あったのかなあ。わかんないです(笑)。
──じゃあそれもなんとなく?
マーシー なんとなく。その場の思い付きみたいのでなんとなく物事が進んでいくんで、僕はあんまり何も考えてないし、楽しいからやってるっていうホントにそれだけなんですよ。
──ましまろでリリースした曲には、以前から書き溜めていたものもあるんですか?
マーシー うん。っていうか歌を作るのが好きなんで、ああいうのは日常的に書いてます。
──クロマニヨンズではやらない曲も常に作っている?
マーシー うん。
──我々がそれらの曲を聴ける機会はないんでしょうか?
マーシー ないですね。
──ヒロトさんもクロマニヨンズでやらない曲のストックはあるんですか?
ヒロト そりゃあいっぱいあるけど、そんなのはどうでもいいんですよ。マーシーの曲だって、ましまろってタイミングがあって出てきたもんだと思うし。そんだけのことなんで、誰かに期待されて、それに応えるっていうのはちょっと難しい。
──ファンとしてはすごく聴きたいですけどね。
ヒロト 聴きたい人はいるかもしれないけど、他人のことは知らない(笑)。他人のためにやるんじゃないよ。自分がやりたいからやるんだ。クロマニヨンズの4人で集まってワーッと音出してやってるのがすごく楽しいから、それだけでいいんだよ。
次のページ » 聴いてる音楽とやってる音楽はつながらなくていい
- ニューアルバム「JUNGLE 9」2015年10月21日発売 / アリオラジャパン
- 「JUNGLE 9」
- CD / 3146円 / BVCL-678 / Amazon.co.jp
- アナログ ※完全生産限定盤 / 3146円 / BVJL-16 / Amazon.co.jp
収録曲
- 生活
- やる人
- 夜行性ヒトリ
- 這う
- 生きてる人間
- エルビス(仮)
- 俺のモロニー
- オバケのブルース
- 原チャリダルマ
- ボラとロック
- 中1とか中2
- 今夜ロックンロールに殺されたい
ザ・クロマニヨンズ
1980年代からTHE BLUE HEARTSとTHE HIGH-LOWSで活動をともにしてきた甲本ヒロト(Vo)と真島昌利(G)を中心に2006年夏より始動。甲本と真島に小林勝(B)と桐田勝治(Dr)を加えた4人で、2006年9月にデビューシングル「タリホー」を発表する。その後もリリースを重ねながら年間を通してコンスタントにツアーを開催。数々の夏フェスにも出演し、ロックファンを熱狂させ続けている。2015年10月には通算9枚目となるオリジナルアルバム「JUNGLE 9」をリリース。同年11月から全70公演におよぶ47都道府県ツアーを実施する。