音楽ナタリー Power Push - ザ・クロマニヨンズ

ヒロトとマーシーが明かす“変わらないバンド”の秘訣

ザ・クロマニヨンズが通算9枚目となるオリジナルアルバム「JUNGLE 9」を明日10月21日にリリースする。先行シングル「エルビス(仮)」を含むこの作品は、クロマニヨンズらしさ全開のロックンロールアルバムだ。

アクセルを緩めることなく、最高の作品とライブを世に送り出し続けるクロマニヨンズ。なぜ彼らはデビュー以来ずっと変わらず、ロックシーンの最前線を走り続けられるのか。甲本ヒロト(Vo)と真島昌利(G)に話を聞いた。

取材・文 / 大山卓也 撮影 / 須田卓馬

なんにも考えてない

──今日は「クロマニヨンズはなぜ変わらないのか」というテーマでお話を伺えたらと思っていまして。

左から甲本ヒロト、真島昌利。

甲本ヒロト へ?(笑)

真島昌利 ふふ(笑)。

──今回の「JUNGLE 9」は9枚目のアルバムになりますが、1stアルバムから作風がほとんど変わらず、ずっと地続きな印象を受けます。どうすればこれほどブレずに同じスタンスで続けられるのか。意識していることは何かありますか?

ヒロト なんにも考えてないよ。

──そうなんですか?

ヒロト 例えば「次はこんなアルバムを作ろう」とか、そんなこと考えたこともないし、ただなんか一生懸命やってるだけで。

──特にビジョンがあるわけではない?

ヒロト 投げやりなわけじゃないんだよ。でも目指してるスタイルみたいなものは特にないから。

──じゃあ変わらないように心がけているわけでもない?

ヒロト ないですね。

マーシー うん。

ヒロト ほかのいろんなバンドと比べるとヘンだなって思うかもしれない。いろんな人がいるし、アルバム1枚ごとにスタイルを変えていくバンドもいるだろうし。でも僕らは何も考えてないだけで。

──同じスタイルで続けていて飽きたりもしないですか?

マーシー 飽きはしないですね。

──まあ飽きるっていうと言葉が悪いですけど……。

ヒロト 味を変えたくならないかってこと?

──そうです。

甲本ヒロト

ヒロト しょっぱいものが続いたから、次はちょっと甘いの食べようとか? それで言ったら、俺たちそもそも味ってものがわかってないんだよ(笑)。

──どういうことですか?

ヒロト 冷静に、今こんな味だとか、今クロマニヨンズはこういう状態で次はこういう方向でとか、そういうことを把握してないんだと思う。4人が毎日なんとなく楽しければいいんだよ。

──ある意味、迷うことなく突き進んでるわけですね。

ヒロト いやあ、そんな偉そうなことでもなくて。何か難しいことをやろうとしたり、何か目指すものがあってそれに向かっていってる人たちはきっと悩んだり迷ったりするんだろうけど、俺たちはそういうのがないから。目標もない。そうするとね、なんにも考えないでいいんですよ。

──「もっとこうなりたい」とか「変化が欲しい」みたいなことも思わない?

ヒロト ないですね。クロマニヨンズに限らず30年ぐらい一度もないです。

マーシー うん、ただ楽しいからやってるだけで。

──じゃあ反省したりすることもないですか?

ヒロト 反省しないよ(笑)。だってどうでもいいことやってるんだもん。俺たちの作品が最低だとしても誰も困らないからさ。なんの責任感もないよね。

ヘラヘラやるのがロックンロールバンド

──クロマニヨンズの“変わらなさ”を支えるものとして、例えばヒロトさんとマーシーさんの中に「クロマニヨンズかくあるべし」といった共通のイメージがあったりするんでしょうか?

マーシー 考えたこともないですね。

ヒロト どうでもいいんですよ、スタイルとかは。

真島昌利

マーシー 第三者が客観的に見れば何か感じるのかもしれないけど、僕らは自分たちではわからないし、意識したことはなくて。人間として経験とか知識を得ていく中で、心情の変化みたいなのは当然あるじゃないですか。20代と50代はそりゃあ違うし。でもそれはいわゆる表層的な部分だって気がすごくしてて、僕らがやってることはずっと同じだと思ってるんです。

ヒロト うん、変わるも変わらないもないんです。「こんな曲を作ろう」とか、もともとないんだもん。で、僕はこれは幸せなことだと思うんです。適当に口からでまかせみたいなことやりながら、ふらふらヘラヘラやるのがロックンロールバンドだと思ってずっとやってるから。ところが人の話を聞くとみんないろいろ苦労してるんだよな。

──してるでしょうね(笑)。

ヒロト こんな歌詞を書かなきゃとか、動員が増えないとか、売り上げがどうだとか。でも僕たち、そういうことで困ったことが一度もないんです。最初からホントにヘラヘラやってる。歌詞に文句つけられたことも一度もないし、文句つけるようなやつがいたらぶっ飛ばす(笑)。

──ほぼ毎年アルバムを出してツアーをやって、という活動のサイクルもずっと変わらないですよね。ツアーは小さな会場も多いし、目指せ武道館!みたいなことはもう考えてないように見えます。

ヒロト もともと考えてないからね。何かを成し遂げようとか思ったことはない。ただバンドをやって適当にヘラヘラ生きてるだけ。そこでなんか、スタイルがどうとか、変化がどうとか、そういうことはあればあるだけつまらなくなっていくんです。

──自由ですね。

ヒロト 勝手なんです。自由っていうより(笑)。

ニューアルバム「JUNGLE 9」2015年10月21日発売 / アリオラジャパン
「JUNGLE 9」
CD / 3146円 / BVCL-678 / Amazon.co.jp
アナログ ※完全生産限定盤 / 3146円 / BVJL-16 / Amazon.co.jp
収録曲
  1. 生活
  2. やる人
  3. 夜行性ヒトリ
  4. 這う
  5. 生きてる人間
  6. エルビス(仮)
  7. 俺のモロニー
  8. オバケのブルース
  9. 原チャリダルマ
  10. ボラとロック
  11. 中1とか中2
  12. 今夜ロックンロールに殺されたい
ザ・クロマニヨンズ

ザ・クロマニヨンズ1980年代からTHE BLUE HEARTSとTHE HIGH-LOWSで活動をともにしてきた甲本ヒロト(Vo)と真島昌利(G)を中心に2006年夏より始動。甲本と真島に小林勝(B)と桐田勝治(Dr)を加えた4人で、2006年9月にデビューシングル「タリホー」を発表する。その後もリリースを重ねながら年間を通してコンスタントにツアーを開催。数々の夏フェスにも出演し、ロックファンを熱狂させ続けている。2015年10月には通算9枚目となるオリジナルアルバム「JUNGLE 9」をリリース。同年11月から全70公演におよぶ47都道府県ツアーを実施する。