音楽ナタリー PowerPush - THE COLLECTORS
結成29年目の新たなる挑戦
THE COLLECTORSが21枚目のオリジナルアルバムを完成させた。山森"JEFF"正之(B)の正式加入後、初のアルバムとなる本作のタイトルは「言いたいこと 言えないこと 言いそびれたこと」。リード曲「Tシャツレボリューション」の冒頭にあるこのフレーズは、「歌詞において、新しいトライをしたかった」という加藤ひさし(Vo)のスタンスを端的に示している。
本作は、かつてコレクターズが在籍していて、約7年ぶりに復活したロックレーベル「TRIAD」からのリリース。またゲストボーカルとして野宮真貴が参加していることも話題を集めている。1960~70年代のUKロックをルーツに持つバンドサウンドもさらに深みを増し、“らしさ”と“新しさ”が共存した充実の内容に仕上がった。
音楽ナタリーでは加藤と古市コータロー(G)にインタビューを実施。結成29年目にして新たな表現にトライした本作、そして、さらに活動のスピードを上げているコレクターズの現在について聞いた。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 小坂茂雄
山森"JEFF"正之の正式加入
──まず前作「鳴り止まないラブソング」のツアーを経て、ベーシストの山森"JEFF"正之さんが正式加入しましたね。今作のレコーディングにもよい影響があったと思うのですが。
加藤ひさし(Vo) それは影響してますよ、もちろん。やればやっただけ、リズムの絡みもよくなるし。前作は山森に手伝ってもらい始めた直後のレコーディングだったから硬い部分もあったんだけど。今回は新曲を作って、みんなで合わせる段階から彼がいたからね。それは全然違いますよ。
古市コータロー(G) どっしり作れましたね。前作はちょっとアタフタしながら作業してたけど、今回は準備もしっかりできたし。
加藤 とは言っても1年に1作だからね。レコーディングのセッションを前半と後半に分けたんだけど、その間に曲を作って、ライブをやって、曲を覚えてもらって……。十分な時間はないよね。
古市 昔のレコーディングとは違うよね。
加藤 以前はレコーディング期間が必ずあって、3カ月なら3カ月、ライブをやらないでレコーディングに集中してたから。今はそんな悠長なこと言ってられないし、ライブをやりながら、空いてる時間にレコーディングするしかないんだよ。そうするとさ、どうしても考える時間がないんだよね。
──しかもリリースのペースはまったく落ちてないですよね。
加藤 むしろアップしてるね。生き急いでるから。
古市 出してないと忘れられるからさ、我々は。
加藤 そう、“出すことがプロモーション”。
古市 デビューしたときに会ったディレクターにそう言われたんです。
加藤 まあ時間がありすぎるのもよくないんだけどね。「ミディアムテンポの曲を増やしたほうがいいのかな」とかいろんな迷いも出てきちゃうし。時間がないならないで、「この曲でいこう」って決められるから、どっちがいいかはなんとも言えないよ。
──今の制作スタイルだと、おのずと“今”の感じが出ますよね。
加藤 それを出さないとね、むしろ。永遠に聴かれる曲、ずっと歌い継がれるような曲って、自分たちが決めることじゃないから。
言いたいけど言えないことはTシャツに
──だったら、そのときにやりたいことを全面に出したほうがいいと。「言いたいこと 言えないこと 言いそびれたこと」というアルバムタイトルからも、今のコレクターズの意思が伝わってきました。このフレーズは「Tシャツレボリューション」の冒頭の歌詞ですよね。
加藤 そうそう。最初はアルバムのタイトルも「Tシャツレボリューション」にしようと思ってたんだけど、コータローくんに電話で話したら「T.M.Revolutionっぽくない?」って言われて、「だよね」って。「歌い出しはこんな感じなんだけどね」って冒頭の歌詞を伝えたら、「そっちのほうが全然カッコいいよ」って。で、決定。
──確かにグッとくるフレーズですよね。
加藤 この歌のコンセプトは最初からできあがっていて。個人的に原発のデモとか安保のデモによく行くんだけど、そうするとさ、みんなプラカードを掲げたり、胸に言葉を書いてるじゃない? それはつまり「言いたいことは、これなんだ」ということでしょ。街を歩いていても、面白い言葉が書かれたTシャツを着てる人がいっぱいいるしね。コータローくんなんて、「Touch me, I’m sick」っていう外人が見たら嫌がられそうなTシャツ着てたりするし。
古市 ハワイのエレベーターで「Oh!」って言われました(笑)。
加藤 自分では恥ずかしくて言えないようなことも、いっそのことTシャツに書いてお知らせすればいいんじゃない?っていう歌ですね、これは。ロックT(シャツ)とかって、着てるだけでなんだか燃えるでしょ。Sex PistolsのTシャツなんて「世の中が気に入らない」って言いながら歩いてるようなもんだから。そんなことを気にしないで着てる人もたくさんいるし、そっちのほうが多いんだろうけど、もともとそういうアイテムでもあるからね。「俺はこういう人間だ」っていう。
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- ニューアルバム「言いたいこと 言えないこと 言いそびれたこと」2015年9月16日発売 / 日本コロムビア
- 初回限定盤[CD+DVD] 4000円 / COZP-1073~4
- 通常盤 [CD] 2800円 / COCP-39234
CD収録曲
- ガリレオ・ガリレイ
- 自分探しのうた
- Tシャツレボリューション
- 深海魚
- ガーデニング
- 家具を選ぼう!
- 永遠ロマンス
- 始まりの終わり
- 劇的妄想恋愛物語
- SONG FOR FATHER
- 自分メダル
初回限定盤付属DVD収録内容
- RECORDING DOCUMENTARY
- 「Tシャツレボリューション」MV
THE COLLECTORS(コレクターズ)
1986年に加藤ひさし(Vo)を中心に結成。1987年に「僕はコレクター」でデビューすると同時に、ブリティッシュロック、サイケデリックなどのエッセンスを取り入れたサウンドが話題を集め、日本のモッズシーンを代表するバンドとして認知される。2014年3月に小里誠(B)が脱退。同年11月にそれまでサポートベーシストを務めていた山森"JEFF"正之(B)が正式加入し、加藤、山森、古市コータロー(G)、阿部耕作(Dr)の新体制となる。2015年9月に21枚目のオリジナルアルバム「言いたいこと 言えないこと 言いそびれたこと」をリリース。ポップなメロディと洗練されたアレンジ、激しいライブパフォーマンスはモッズの枠を超えて多くのロックファンの支持を集め、結成から28年経つ今もシーンの第一線で活躍し続けている。