ナタリー PowerPush - The Cigavettes
ロックレジェンドの魅力凝縮 カラフルな2ndアルバム完成
The Cigavettesのニューアルバム「We Rolled Again」がリリースされた。1stアルバム「The Cigavettes」から1年ぶりに発表される今作は、これまで以上にポップで、なおかつロックスタンダードのフレーズを引用するなど先人たちからの強い影響を感じさせる要素がたっぷり詰まったカラフルなロックンロールアルバムに仕上がっている。
今回ナタリーでは、バンドのギタリスト兼メインソングライターの山本幹宗にインタビューを実施。アルバム制作についてはもちろんのこと、収録曲に散りばめられたエッセンスについてや、自身のライブで感じる不満などをストレートな言葉で語ってもらった。
取材・文 / 西廣智一 インタビュー撮影 / 平沼久奈
曲は作ろうと思えばいくらでも作れる
──ニューアルバム、聴きました。前作よりも楽曲の幅が広がって、1stアルバムではわからなかったバンドの本性がどんどん表れつつあるなと感じました。今回の楽曲は前作リリース以降に制作したものが中心なんですか?
1曲だけ最初のEPの曲で、それ以外は前作を出したあとに書き下ろした曲です。
──今作をこういうアルバムにしようっていうイメージは最初からありました?
いや、特にはなくて。とにかく生まれてくる曲をどんどん形にして、アルバムに入れただけ。
──なるほど。制作はいつ頃からスタートしたんですか?
去年の8月頃からデモを作り始めて、9月に2週間くらいでバッと録りました。曲自体は1カ月弱くらいでババっと書いて。曲作りだけは速いんです。
──そうなんですね。今まで曲作りで苦労したことは?
全然ないです。すぐ書けますね。
──どんどん曲があふれ出てくる感じ?
はい。作ろうと思えばいくらでも。やってみたいけどまだ試せてないこともたくさんあるんで、3枚目も早く出したいと思ってるくらいで。
長い曲が嫌いで、聴いてると途中で飽きちゃう
──実際にどうやって曲作りを進めていくんですか?
安っぽいアイデアでも、ちゃんとした曲に仕上げるのが得意なんですよ。例えばちょっとTELEVISIONっぽいリフをなんとなく弾いてるだけの曲を、ポップに聴こえるアレンジをすることでシングルのリード曲にまででっち上げたり(笑)。
──今回、特にこだわった部分ってありますか?
前作ではリフを軸に曲作りを進めたんですけど、今回はコードに気を遣っていて、きれいなコード進行にこだわりました。
──確かに、歌を盛り上げるための演出としてすごくきらびやかな部分が増えた気がしました。
前作も相当気が利いたアレンジにしたつもりなんですけど、わかりにくかったかなっていう。すごく細かいフックが、いろんなところに散りばめられてるんですけどね。ただ、今回は弦楽器とかオルガンとか使ってるから、よりわかりやすかったのかも。
──すごく徹底して作り込んでいるのに、でも聴いたときにそこを全く意識させず、自然に聴けるんです。
そうですね。意識させない……なんて言うんだろうな。「すごくうまく作れた」って自分で言うのもあれですけど、1曲1曲が短いから意識する前に終わっちゃうんじゃないですかね。僕、長い曲が嫌いなんで。
──このアルバム自体、2~3分台の曲が中心ですものね。
長い曲で好きなのも何曲かありますけど、途中で飽きちゃうから。
──それはリスナーとして? それともプレイヤーとして?
どっちもですね。たまにフュージョンみたいに延々とギターソロを弾いてる曲もいいんですけど、基本的に進んでは聴かないです。
新曲は「今まで持ってたけど着てなかった服を着た感じ」
──最初にちょっと話した楽曲の幅の広がりについてですが、今回はストレートなロックだけじゃなくて、例えばソウルミュージックの色が強かったり、フィドルを使った曲ではアイリッシュっぽい要素が感じられたり、ポップ色が強い曲でもコーラスの重ね方を工夫していたり、前作以上にカラフルになったと思うんです。
そのへんは、単純に前作のときより予算が増えて、長い時間スタジオに入ることができたのも大きいです。
──じゃあスタジオで「ちょっと試してみようか」って、思いついたことをいろいろ挑戦してみたり?
そんな感じですね。レコーディング初日にいろんな楽器をスタジオに持ってきてもらって、いろいろ試してみたんです。幸い以前よりも予算をかけることができたので。でも、新しいことに挑戦というよりは、自分たちができることの中の1つっていうか。新しい服を買ったというよりも、今まで持ってたけど着てなかった服をちょっと着てみた感じかな。20歳だったらいろいろ勉強して、「新しいことを覚えたんだ!」って言えるかもしれないけど、僕はもう27歳なんで。新たな発見とか言えないですよ。
──じゃあ、その「今まで持ってたけど着てなかった服」はまだまだたくさんあると?
はい。だから次の作品でもガンガン出したいんですけどね。
CD収録曲
- Presley Song
- We Rolled Again
- She's So Fine (She's Not Fair)
- (All I've Got To Do Is) Begging You
- I Wonder
- My Old Car
- My Girl
- Flux Fiddlers On The Roof
- Can't Find Memories
- I Wonder That You're Alone
- Sweet Memories Into Nightmare
- Maybe It Goes On
- Far Away
- Keep The Customer Satisfied
The Cigavettes(しがべっつ)
2005年4月、福岡にて山本幹宗(G, Cho / 弟)と山本政幸(Vo / 兄)の兄弟を中心に結成されたロックバンド。現在は山本兄弟のほか、小田淳之介(G, Cho)、篠崎光徳(B, Cho)、戸高亮太(Dr, Cho)の5人編成。地元を中心に活動を展開し、2008年には「CLUB SNOOZER」福岡公演にレギュラー出演し、着実に知名度を高めていく。2009年9月にはUKロックの祭典「BRITISH ANTHEMS」に出演。さらに山本幹宗はくるりの全国ツアー「くるりワンマンツアー2009 ~敦煌(ドンファン)~」にサポートギタリストとして参加し、話題を集める。2011年には上京を果たし、同年4月に1stアルバム「The Cigavettes」を発表。オリコンインディーズチャートでウィークリー5位を記録したほか、リード曲「Ready To Leave」が全国8局のFM局でパワープレイを獲得した。2012年4月、2ndアルバム「We Rolled Again」をリリース。