カツヲ(THE CHERRY COKE$)×ヤマネヒロマサ(さらば青春の光マネージャー)|結成25周年、つないだ絆から生まれた新作

THE CHERRY COKE$が10枚目のオリジナルアルバム「LOVE THY DRUNX」をリリースした。

今年結成25周年を迎え、CAFFEINE BOMB RECORDSに移籍したTHE CHERRY COKE$。ニューアルバムには先行シングルとしてリリースされた「WAYFARING MAN」「BIRING ME A BEER」のほか、交流の深い俳優やお笑い芸人、バンドマンが多数出演したミュージックビデオでも話題を呼んだ「PEACE ISLAND」、スコットランド民謡にオリジナルの歌詞を付けたカバー曲「NANCY WHISKEY」、そしてお笑いコンビ・さらば青春の光のYouTubeチャンネル「裏さらば」でもおなじみの楽曲「さらば青春の光」を、さらばの2人やマネージャーのヤマネヒロマサを招いて再レコーディングしたバージョンなど、バンドの多彩なキャリアを改めて体感できる曲が全12曲収録されている。

ヤマネはバンドマン時代にTHE CHERRY COKE$と出会い、一時期彼らのマネージャーを務めていた。その後さらば青春の光の個人事務所、ザ・森東の一員となってからもTHE CHERRY COKE$との交流は続き、数々のコラボレーションが実現している。新作のリリースを記念し、音楽ナタリーではバンドの中心人物であるカツヲ(Vo, Banjo)とヤマネにインタビュー。2人の出会いからこれまでの軌跡、お互いへのリスペクト、さらに新作の聴きどころなどについてたっぷりと語り合ってもらった。

取材・文 / 西廣智一撮影 / 塚原孝顕

ファンとしてずっと近くにいる感じ

──今回の対談はカツヲさんからヤマネさんをご指名したそうですね。

カツヲ もともとTHE CHERRY COKE$のマネージャーをやってくださっていた時期がありましたし、今回もさらば青春の光にいろいろ参加してもらったりだとか、いろんな面で協力していただいたのでお願いしました。それに、長いことTHE CHERRY COKE$を知っている人ですし、お話も面白いので。

ヤマネヒロマサ いや、冒頭でそのフリはやめて!(笑) 僕は今回、THE CHERRY COKE$が好きってことだけを伝えに来たので。音楽的なお話ができるわけではないですけど、THE CHERRY COKE$への愛だけはいくらでも言えると思います。

カツヲ 謙遜してますが、もとはゴリゴリのミュージシャンですからね。

左からカツヲ(THE CHERRY COKE$)、ヤマネヒロマサ。

左からカツヲ(THE CHERRY COKE$)、ヤマネヒロマサ。

──そもそも最初の出会いはヤマネさんが音楽をやられていた頃なんですよね?

ヤマネ そうです。僕が以前やっていたバンドの頃から仲間でした。僕はTHE CHERRY COKE$と最初に出会った日のことを、今でも鮮明に覚えています。カツヲは絶対覚えていないと思うけど。

カツヲ え、どこですか?

ヤマネ 名古屋。

カツヲ 名古屋?

ヤマネ 名古屋で、こんなに失敗するのかっていうくらいのフェスがあって。

カツヲ あはははは! 思い出した!

ヤマネ フェスブームの走りくらいの時期ですよね。

カツヲ 遊園地でやったやつですね。

ヤマネ そうそう。走りとはいえこんなに失敗するかっていうくらいの、明確に失敗したフェスがあって。その日にTHE CHERRY COKE$と、当時僕がやっていたバンドが出てたんですけど、THE CHERRY COKE$はその日東京でもライブがあったからトップバッターで出たんですよ。お客さんがまだ入場もできていないようなタイミングに「もう始めるんだ!」って感じでTHE CHERRY COKE$がライブをスタートさせて。映画の「BECK」みたいでしたね。観た瞬間に心をつかまれてしまうくらいめちゃくちゃカッコよかったんですよ。確か雨だったよね。

カツヲ そうでした。悲惨でしたね(笑)。

ヤマネ 状況は悲惨だったんですけど、ライブはしびれるほどにカッコよくて。僕、それまでTHE CHERRY COKE$ってバンドを知らなかったんですよ。で、「なんじゃこのカッコいいバンドは!」と思って、どうしても対バンしたいからこっちからオファーを送ったりして。そこから関係が始まりました。その後、僕がバンドを辞めて裏方になろうかっていうタイミングで、THE CHERRY COKE$のマネージャーをさせていただくようになって。それ自体はわりと短期間でしたけど、濃厚な時間を過ごすことができました。

カツヲ 2010年代の初めぐらいからでしたっけ。

ヤマネ そう、2012年頃から2016年ぐらいまでマネージャーをさせてもらいました。マネージャーを辞めてからもずっとチェリコを聴いて追いかけているんで、ファンとしてずっと近くにいるみたいな感じですけどね。

左からカツヲ(THE CHERRY COKE$)、ヤマネヒロマサ。

左からカツヲ(THE CHERRY COKE$)、ヤマネヒロマサ。

ヤマさんは本当に面倒見がいいし優しい

──マネージャーをする関係になるってことは、相当親密な間柄だったってことですよね。

カツヲ そうですね。でも、いろいろなバンドの中で一番仲がよかったかって言われたら、別にそういう関係のバンド同士ではなかったんですけど、ヤマさん自身は本当に面倒見がいいし優しいし、僕らは大好きだったんですね。マネージャーをしてもらっていた頃もチェリコだけを担当していたわけではなく。

ヤマネ その当時は受け持ちが多くて。でも、チェリコに割ける時間があればそのときだけは100%でやろうっていう。だからいろんなことを覚えてます。ビルの屋上で撮ったミュージックビデオとか。確か撮影が12月30日で、屋上に小さなエレベーターボックスみたいな小屋があって、そこで撮ったんだよね。

カツヲ そうでしたね。終わったあとは風邪引きましたけど(笑)。

ヤマネ でも、あれは本当に素晴らしいMVで。いまだに好きな曲だし好きな映像なので、今もよく観ます。

──今のMVの話題のように、お二人の中で特に鮮明に記憶に残っているエピソードはありますか?

カツヲ あの時期一番力を注いだのが赤坂BLITZでのツアーファイナル(2013年12月開催)。事務所の社長を筆頭に会社総出で協力してくれたんですよ。船のセットを自分たちで作って持ち込んだりもしたし、あの頃はみんなで一丸となってやってる感が強かったなあ。そのあとでメンバーが脱退したりもするんですけど。ちょうど結成15周年を迎える前でしたね。

ヤマネ あれがもう10年以上前ってことか。僕はそのメンバー脱退も一緒に乗り越えられたんじゃないかなと思っていて。メンバーが抜けたらバンド自体の勢いが落ちたと見られないように、ここは正念場やぞっていうのを全員で共有できた気がしています。

ヤマネヒロマサ

ヤマネヒロマサ

カツヲ ベースと笛が同時に抜けたので活動休止もやむを得ない状況だったのに、普通にライブのスケジュールを入れて。その一発目を渋谷CYCLONEでやったんですけど、ベースはRIZEのKenKenがサポートで弾いてくれて、笛に関してはスズちゃん(SUZUYO)がその頃から吹くようになって。その前に東京キネマ倶楽部でやった脱退ライブでは、ヤマさんが上から桜吹雪を撒いたりしてましたよね。

ヤマネ そうだったね。脱退ライブっていうのはお客さんも集まりやすいから、盛大にできちゃうんですよ。でも、再出発ライブのほうが大変だし思い出に残っています。あの日があったから今があるんだなと改めて思いますね。

こんなにしっかり大人になって

カツヲ あのときは「PEACE ISLAND」のMVにも出演してくれているみなみかわくんが物販を手伝ってくれたりもして。

ヤマネ 当時はまだ芸人として全然売れてなかったからね。あのときも友達として手伝いに来てくれて。もちろんバンドが好き、音が好きとかいろいろあるものの、やっぱり仲間という部分が一番強いんだよね。だから、僕もみなみかわも「新しいアルバム出すにあたってMVを撮りたいので、出てくれませんか?」って言われたらすぐに動くわけです。今のみなみかわは売れっ子だからなかなかスケジュールが取れないんだけど、カツヲが僕を介さずに直接連絡して、「全然いいですよ!」っていう。そういう人がチェリコの周りにはたくさんいるんです。

カツヲ それで言うと、(上地)雄輔もそうですよね。昔、ヤマさんが雄輔と一緒にラジオをやっていて、リリースタイミングで呼んでもらったことがあるんですけど、そこから今も付き合いが続いていて。彼も「PEACE ISLAND」のMVに出てくれたんですけど、それもヤマさんや雄輔が偶然一緒に飲んでいるとこに僕が顔を出して、雄輔と「MV出られる?」「いいよ」っていう会話をしたことがきっかけ。

ヤマネ 上地くんは立派な芸能事務所に所属しているから、本来はそんな口約束で仕事を決めちゃいけないんだけど、「カツヲが言ってるんだから出るよ」と事務所を説き伏せてくれたんですよ。そういう関係値の人がチェリコの周りにはたくさんいて、しかも25年も続けているからどんどん増えている。それが単純にすごいなって思いますよね。

──ただバンドや音楽をやっているだけじゃなくて、活動体やムーブメントみたいなところも含めて作っているから、そこに対して共感した仲間たちがどんどん集まってくる。その積み重ねの25年だったんですね。

カツヲ そうですね。だから実際のところ音楽は半分くらいで、あとは飲みとか人とのコミュニケーションみたいなところで動いてるような気もします。

カツヲ(THE CHERRY COKE$)

カツヲ(THE CHERRY COKE$)

ヤマネ でも、バンドの音とかノリ、雰囲気がそれをすべて表してるので。酒クズが集まってくるようなバンドかもしれないけど、俺も酒クズなんでそれでいいと思うし。さっき初めてチェリコを観たときにしびれたって話をしましたけど、今ではしっかり大人になってどんどんカッコよくなってるわけで、こんなバンドって僕は数少ないと思っているんですよ。若いときの一瞬の刹那というか、そういうカッコよさを醸し出すバンドはたくさんいますけど、歳を取っていってどんどんカッコよくなるバンドもいるじゃないですか。チェリコはまさにそれだと思っているので、ここからが一番いい時期だと思っています。

カツヲ ヤマさんがマネージャーから離れたあともいろいろ相談することがあるんですけど、自分の中でバンドを続けるうえで重要な言葉をいくつももらっているんですよね。「バンドがこの先どうなっていくのかな?」みたいな話をしたときも、今の話みたいに「お前らの音楽は歳を取れば取るほど味が出てくるんだから、いくつでバンドを辞めなきゃいけないとか決める必要ないよ」と言ってくれて。自分たちでマネジメントをやるようになって「俺、別にリーダーでもマネージャーでもないのに全部やらなきゃいけないのか」ってちょっとしんどくなったときも、「いやいや、誰が見たってお前がリーダーなんだから、お前がやるしかないよ」ってケツを蹴り上げられたし、大切なきっかけをたくさんもらえていてありがたいですね。

ヤマネ でも、カツヲが「俺が引っ張るぞ!」って覚悟を決めてからは、周りも変わったよね。今は全員でいろんなことを受け持ってやっているように見えるので、カツヲが動き出したことで相乗効果が出たんじゃないかな。