7月にミニアルバム「Standing Tall」をリリースしたばかりのシンガーソングライターTHE CHARM PARKが、早くも11月20日にアルバム「Reverse & Rebirth」をリリースした。この作品は5年前に一度発表されて入手困難となっていた同名アルバムに、新たに書き下ろした新曲や当時作ったまま世に出していなかった曲などを追加、若干のリアレンジやリミックス、リマスターを施したいわゆる“リビルド盤”。5年前に発表された「Reverse & Rebirth」は、単身日本に移住してきたCharmがそれまで活動していたバンドを解散してからたった1人で作り上げたソロ名義での最初の作品で、そこには大切なものを失いながら、それでも“夢”を持ち続けたいと願い、1人もがく当時の彼の心情が切々とつづられている。
EDMの要素や声の加工など、当時トレンドだった要素をCharm流に咀嚼しながら、まるで映画音楽のような統一感すら感じさせるサウンドは、今聴いてもまったく古さを感じさせない。むしろ現在の彼の音楽性が、1stアルバムにして確立されていることに驚かされる。「生まれ変わり」という意味を持つタイトルを掲げ、「このアルバムが最後のチャンス」という気持ちでオリジナル盤を作り上げたCharm。その大切な楽曲1つひとつをリビルドすることになった経緯と各曲に込めた思いをじっくりと語ってもらった。
取材・文 / 黒田隆憲 撮影 / 竹中圭樹(ARTIST PHOTO STUDIO)
5年前の「Reverse & Rebirth」は“最後のチャンス”だった
──今回リリースした「Reverse & Rebirth」は、5年前に発売された同名のアルバムに未発表曲を加え、若干のリアレンジやリミックス、リマスターを施した“リビルド盤”です。2019年の今、このような形でリリースしようと思ったのはなぜですか?
オリジナル音源自体が現在入手困難な状態であることが、今回リリースに至った理由の1つです。その状況を放置しているのはもったいないと思って、改めてオリジナル音源を聴いてみたところ、今の自分に聴かせたいと思う曲も多かった。そこに新曲を加えたのは、5年前の自分の感性と今の自分の感性がどのくらい変わったのか、あるいはどのくらい変わっていないのかを確認したかったからというか。新曲といっても今年に入ってから書いた曲は「Open Hearts」だけで、「Free Man」と「thirty-6」は2014年頃に書いた曲なんですけど、2曲目の「Gravity」はソロになって初めて作った曲で、THE CHARM PARK名義でのもっとも古い曲。そこにもっとも新しい「Open Hearts」を並べたら面白いんじゃないかと思って、この曲順にしました。
──このアルバムは、5年前のCharmさんが今のCharmさんに語りかけているようでもあるし、その逆のようにも感じられます。資料には「人生で一番彷徨ってた5年前に作ったアルバム」とありますが。
ご存知の方もいるかと思うのですが、僕は2010年に日本に移住して、4年くらい別のバンドで活動していたんです。そのバンドが解散してしまった2014年が人生のターニングポイントでした。それまでは与えられた仕事をこなしながら合間に自分の好きな音楽をやっていたんですが、ちょっと目標を見失ってしまって。故郷のロサンゼルスに帰るべきか、それともこのまま音楽をやり続けるべきか……だとしたらどうやって態勢を立て直すか。そういうことをずっと考えていた時期だったんです。なので、このアルバムが最後のチャンスだったというか、「これが自分でしっくりこなかったら潮時なのかも」と思いながら制作していました。自分で歌うことにも初めて挑戦しているのですが、今聴くと「なんだか若いな」と思うところも多々あります(笑)。
初めて取り入れた映画音楽の手法
──では1曲ずつお話をお聞きしていきます。冒頭曲「リバース」がとにかく美しくて、何度聴いてもこみ上げるものがあります。
ありがとうございます。この曲は、アルバムの中では後半のほうに作りました。僕は映画を観るのが大好きなのですが、映画音楽は“Motivic Development”という、1つのモチーフの形を変えてほかの曲の中に繰り返し登場させる手法がよく使われているんです。それをアルバムにも取り入れたくて。今でもときどきやっていることなのですが、実はこれが初めての試みだったわけです。「リバース」のモチーフは「Reprise (Interlude)」「Rebirth & Reverse」にも登場するのですが、それによってアルバムに統一感を持たせることができたし、とても気に入っています。
──1つのフレーズが形を変えて何度も再生されるのは、「Reverse & Rebirth」(生まれ変わり)というタイトルにも通じるものがありますよね。
確かにそうですね。バンドでの活動を終えてソロを始めた当時を思い返してみると、“ゼロに戻って再スタート”という気持ちが強かったんだと思います。人は誰しも最後は必ずゼロに戻るのですが、そんな人生の過程の中で、大切なものは形を変えながら何度も現れるということも表現したかったというか。
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5年前の自分に「心を開いて」