「THE CAMP BOOK 2022」特集|高原キャンプフェスの魅力をサイトウ“JxJx”ジュンが語る

長野県の富士見高原リゾートを舞台にした野外音楽祭「THE CAMP BOOK 2022」が、6月11日と12日の2日間にわたって開催される。

「THE CAMP BOOK」は広大な自然の中でライブとキャンプが楽しめる音楽祭。出演アーティストの音楽性は多岐にわたり、さまざまな野外フェスの中でも一線を画した音楽好きの心をくすぐるラインナップとなっている。またライブ以外のアクティビティやフードエリアも充実しており、世代を問わず幅広い楽しみ方が可能。“こころが、豊かに育つ場所。”というコンセプトを五感で体感できる。

今回の特集ではこの「THE CAMP BOOK」の魅力に迫るべく、2018年開催時に出演し、今年も出演が決定しているYOUR SONG IS GOODのサイトウ“JxJx”ジュンにインタビュー。野外フェスへの思いや「THE CAMP BOOK」にまつわる思い出を語ってもらった。なおインタビューの後半には「THE CAMP BOOK」のスタッフ陣も登場し、フェスに込めた思いを明かしている。

取材・文 / 高橋美穂

「THE CAMP BOOK」とは?

建築や内装を手がける東京都渋谷区の会社・株式会社リペアが2017年に立ち上げた野外音楽祭。“こころが、豊かに育つ場所。”をコンセプトに多彩なライブステージやアクティビティ、ワークショップを展開し、大人も子供も楽しめる空間を提供している。2019年より長野・富士見高原リゾートに会場を移したが、2020年と2021年は新型コロナウイルス感染拡大の影響により開催を中止。今年3年ぶりの開催を迎える。

場内には広大なキャンプサイトが設けられており、豊かな自然の中でキャンプとライブを堪能できる。常設テントセット付きのチケットも販売しているため、初心者でも気軽にキャンプ体験が可能だ。

THE CAMP BOOK 2022

2022年6月11日(土)

長野県 富士見高原リゾート
OPEN 9:00 / START 12:00 / END 21:00

出演者

氣志團 / RHYMESTER / ROVO / toe / GLIM SPANKY / THA BLUE HERB / BIM / 田我流 / MONO NO AWARE / TENDOUJI / TURTLE ISLAND / FNCY


2022年6月12日(日)

長野県 富士見高原リゾート
OPEN 9:00 / START 10:00 / END 16:00

出演者

Yogee New Waves / DOPING PANDA / ハンバート ハンバート / TENDRE / YOUR SONG IS GOOD / eastern youth / LEO IMAI(LEO今井 / 岡村夏彦 / シゲクニ / 白根賢一) / 民謡クルセイダーズ / OBRIGARRD / nutsman / YOUNG-G(stillichimiya)

サイトウ“JxJx”ジュン インタビュー

特別な気持ちを持って集まったカクバリズム20周年野音

──コロナ禍になってから、なかなか思うように音楽活動ができない時期が続いていたと思うのですが、だんだんガイドラインを守りながら開催されるフェスやライブが増えてきています。ジュンさんはこの現状に対して、どう思われていますか。

コロナ禍はすごく難しかった、というのが率直なところです。まだ終わっていないですし、すごく複雑で、まだ明確な答えというのは出せないんですよね。フェスやライブに対しては皆さん、それぞれの向き合い方があると思いますけど、ただ去年のすごくしんどかった頃からすると、今はちょっと希望が生まれてきているのかな。

──4月9日には日比谷野外音楽堂で「カクバリズム20周年記念SPECIAL VOL.01」が開催されましたよね(参照:カクバリズム20周年野音ライブ、思い出野郎Aチームが堂々トリ務める)。そのときの雰囲気はどう感じましたか?

ひさしぶりにみんなに会ったという感覚なんですが、人生であまり味わったことがない感覚でした。もちろん、うれしいっていうのがあるんですけど、どこか不思議ではあって。思い返すとなんだろう、「もう1回最初からやろうか、楽しみ直そうか」という感じだったのですかね。手放しでワーッと単純にはしゃぐわけではなく、ここに来れている喜びをじっくり味わっているような感じと言いますか。なんか自分でもそういう感覚があり、会場でもそういう空気があったように記憶しています。

──それは、YOUR SONG IS GOODが演奏だけをするライブではなく、オーディエンスも含めてみんなと作り上げるライブをやり続けてきたからこそ思うことではないでしょうか。

ライブ会場を散歩してみたんですね。感じ方には個人差があるとは思いますけど、皆さんが楽しそうにしている姿を目の当たりにしつつ、でもこれって前と一緒なのかなっていうと、ちょっとわからないんですよ。ただ、前向きに楽しもうっていう感覚には満ちていて。不思議ですね。僕らは演奏する側ですけど、場を作る人たち、遊びに来る人たち、みんながみんな、この2年ぐらいの特別な気持ちを持って集まってきていたのかな、と思ったりもしています。あの日の野音だけではなく、きっと各地のフェスとかに関してもそうなのかな、と。想像ですけど。

「THE CAMP BOOK 2018」出演時のYOUR SONG IS GOOD。

「THE CAMP BOOK 2018」出演時のYOUR SONG IS GOOD。

──「THE CAMP BOOK」も、ユアソンも出る予定だった2020年は中止になってしまって。それを経ての今年の開催、そしてユアソンの出演が決定したわけですが。そこに対しては、どんな思いがありますか。

まずは声をかけていただきとてもうれしかったですね。コロナ禍以降、バンドとしてもいろいろあったんですよね。メンバー(シライシコウジ)が体調を崩してバンドを離脱したり、今もドラムのタナカ(“ZEERAY”レイジ)さんが参加できない、といった状況なんですけど、バンド的にはそろそろ、どうにか一歩を踏み出したい、と考えていたところでした。2020年は本当に残念でしたけど、あそこから2年を経てこのタイミングでまた声をかけてもらえて、バンド的に再び一歩を踏み出せる状況を作ってもらえた、ということはとてもありがたいです。

──この2年で、ユアソンとしても岐路に立ったところはありましたもんね。

そうですね。バンドの体制もそうでしたし、僕らはコロナ以前のライブのスタイル、盛り上がり方のまんまだと……とにかくコロナ禍における世の中の状況ととても相性が悪いというか(苦笑)。だからすごく難しかったんですよね。

コロナ禍を経て取り戻したピュアさ

──今回「THE CAMP BOOK」でやるライブが、バンドとして新しい表現や方法や、何かをつかむきっかけになるかもしれないですよね。

そうですね。これからの僕らの活動に対してきっと何らかの影響はあると思ってます。だからこそ、いいライブをしたいですね。

──具体的に、どんなふうにスタイルを変えたとかはありますか? 例えば以前のようなコール&レスポンスは厳しいじゃないですか。

そうですよね。まだライブ活動を再開して1回しかできていないので具体的な話は難しいですが。状況は常に変わるという認識のうえで、現時点では以前のようなライブをそのままやれるイメージはあまり考えていなくて。まずは演奏をしっかりやってメンバー間で楽しむ、それを皆さんとじっくり共有できたらいいなっていうシンプルな考えに至っていますね。とにかく、できることをやるしかないのかな、と。人前で演奏をやれているだけでありがたい、といったところなので。ただ、ライブ活動を再び始めてみて思ったのは、ステージにおける全部を忘れてしまったというか……なんと20何年もやってきたのに(笑)。ステージの感覚が本当にゼロに戻っちゃったんですよね。足元のペダルの位置とか途中で全然違う感じになっちゃったりしてむちゃくちゃ焦る!みたいな。でも、その代わりに失っていたピュアさは取り戻したかもしれない(笑)。やっぱり20年以上やっていると、小慣れちゃっているところも多々あったんですけど、友達と一緒に演奏するのって楽しい!みたいに思えた。僕の場合は友達イコール、バンドのメンバーですけど。それは悪いことではないなと思いました。

──私はユアソンのライブにピュアさをずっと感じていましたよ。だからこそ、常に幸福感があって、いろいろなフェスにも求められ続けているんだと思います。

あ、じゃあ、自分たちだけが忘れていたのかもしれない(笑)。改めて、そこに気付けたのかもしれないですね。

──ご自身としては、なぜたくさんのフェスやイベントに呼ばれていたんだと思いますか?

ええ!? なんだろう……僕らはただただ演奏していて楽しかったんですが、そこを一緒に楽しめる感じがよかったのかな? バンド的にはここ数年、特にコロナ直前までは、楽曲の構造的にダンスミュージックをかなり意識していたので、バンド演奏で楽しんでもらうことに対してより機能的なアプローチになっていたんですが、そこがまったくやれなかったここ2年のコロナ禍を経て、個人的にはその部分をどう捉えていくか、今見つめ直しているところではあります。

「THE CAMP BOOK 2019」の様子。

「THE CAMP BOOK 2019」の様子。

「THE CAMP BOOK 2019」の様子。

「THE CAMP BOOK 2019」の様子。

──「THE CAMP BOOK」のブッキングを担当された梅田さんは、ユアソンを招いた理由として資料の中で「野外特有のワクワク感の中、浮き足立ったみんなの前に現れるユアソン」に魅力を感じているとおっしゃっていて。確かにユアソンを聴いていると、いい意味で浮き足立てるというか、悩み渦巻く日常から何センチか足を浮かせることができるんですよね。

さっきの機能的という意味では、とにかくみんなの楽しさになれたら、とはとても思っていました。

(「THE CAMP BOOK」ブッキング担当・梅田穏氏) ユアソンさんの場合は、自分がライブハウスに行き始めた頃のワクワク感が、メンバーがステージに現れた瞬間によみがえるというか。アンダーグラウンドから築き上げてきたものもあると思うんですけど、とにかく人を楽しませるっていう姿勢を感じるんですよね。

ワクワク感という意味では、今ピュアさは取り戻しているんで、そこを前面に押し出していければ、というかきっと勝手に出てしまうんでしょうね(笑)。でも、改めてステージのことを考えると、とにかく今は皆さん特別な感情を抱いていると思うんです。コロナを乗り越えようとしている状況の中、場をともに体験する、ということに対して。なので、バンド演奏としては、とにかくポジティブないい場にしたいなと思っています。そこを目指したいです。