音楽ナタリー PowerPush - the brilliant green
4年ぶり再始動、もう一度歌った川瀬智子の胸中
the brilliant greenが4年ぶりに活動を再開した。待望のリリース第1弾となる「THE SWINGIN' SIXTIES」は、過去の名曲をアレンジしたセルフカバー集。デビューシングル「Bye Bye Mr.Mug」や大ヒット曲「There will be love there~愛のある場所~」はもちろん、全曲がボーカルを新録した60's風ナンバーとして生まれ変わり、新曲「A Little World」も収録されている。デビューから16年が経った今、音楽への取り組みや姿勢はどう変わってきたのか、その本音を川瀬智子に聞いた。また、デビューから休むことなく常に制作を続けて来た川瀬の歩みを、本人のコメントと活動年表で振り返る。
取材・文 / 田島太陽
曲の鮮度が保たれていた
──過去の曲をもう一度歌い直してみるのはどんな感覚なんですか?
デビュー曲は16年前ですからね。年月が経ちすぎているから、最初はめちゃくちゃ抵抗があったんですよ。選曲してる頃はほんっとに嫌で、どうにかやめられないかって説得の電話を何回もしました。
──そうなんですか(笑)。ちなみに去年、ヘブンリーでのアルバムではすごいスランプだったというお話をされていて(参照:Tommy heavenly6「TOMMY ICE CREAM HEAVEN FOREVER」インタビュー)。
そうですね……結局、今回もでしたね。リリースをやめる理由ばかりずっと考えてたんですけど、でも選曲して歌ってみると何も違和感がなかったんです。気恥ずかしさもないし、むしろ新鮮だった。私はライブもあまりやらないから、歌いすぎて飽きたってことがなかったんですよね。一番ヒットした 「There will be love there~愛のある場所~」でも、たぶん30回ぐらいとか?
──そんなに少ないんですか?
テレビで10回くらいと、ライブツアーでもたぶん20~30回くらいしか歌ってないんですよ。だからこの曲を歌うことに飽きてしまってるということもなく鮮度が保たれていたし、懐かしさも感じないんです。自然な感じ。
──昔の作品を今見ると、青くさくて恥ずかしいって思うこともあるじゃないですか。
それもないんですよね、自分でも不思議なくらい。歌詞もメロディも全然大丈夫。でも「Stand by me」という曲は作った当時から、後半に「Stand by me」って歌詞が多すぎるなとは思ってたんですよ。それはずっと気になってて、今回ひさしぶりに歌ってみたら「やっぱり多いよ!」って思いました。
──当時と同じ感じ方なんですね。
うわーって思い出しちゃった(笑)。あと今回はオリジナルよりもアンプラグドなイメージで作ろうって決めていたので、音がすごくシンプルなんですよね。だから曲の雰囲気や世界観に頼れなくて、歌がごまかせなかったことは戸惑いましたね。もっと音足そうよ!みたいな。でもそういうコンセプトにしちゃったから、歌の強弱や起伏、表情はオリジナルよりもかなり意識した部分です。比べてもらうとかなりはっきりわかるんじゃないかなと思います。
過去の曲にはもう触りたくなかった
──セルフカバーにした経緯は?
しばらく動いてなかったブリグリで、いきなりオリジナルアルバムを出すのは微妙かなと思ったんですよね。去年からのスランプでリリースも予定より遅れていて、流れもおかしくなってるのに、このタイミングでいいのかな?って。だから一度仕切り直す意味も込めて、セルフカバーをやってからオリジナルアルバムを作ろうとスタッフさんに提案していただいたんです。でも、個人的にはセルフカバーって一番やりたくなかった。
──どうしてですか?
時代も音楽業界もガラッと変わったじゃないですか。ブリグリは一番リッチでゴージャスな時代をギリギリ経験できていて、アーティストのこだわりが許される、実現できる時代だったんですよ。それはすごくいい思い出だし、プロモーションも一生懸命やって、がんばって売ってきた曲なんですよね。それを今リメイクするってどうなの?って。
──そのままにしておきたかった?
そうですね。リリース当時に時間もお金もかけて、完璧に作ったと思ってるんですよ。だから過去の曲にはもう触りたくなかった。でもスタッフに、「フェブラリーとヘブンリーしか聴いていない人たちに対しても、改めてブリグリという存在を紹介してからオリジナルを作るほうが自然じゃない?」と言われて、その流れにはすごく納得できたんですよね。10年以上前の曲を今さら聴く機会ってあまりないから、そのきっかけになる作品になればいいのかなって。
──でも作り始めたら……。
また鬱っぽくなっちゃった(笑)。なので、新曲「A Little World」のミュージックビデオのストーリーは、スランプから抜け出たくて気分転換にロンドンで創作活動をしようとするんですけど、引きこもり癖があるから結局ホテルから一歩も出てないっていうストーリー。なんなんでしょうね、もう最近ずっとこうだから、何がスランプかもわからない。
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- セルフカバーベストアルバム「THE SWINGIN' SIXTIES」 / 2014年7月23日発売 / 3240円 / Warner Music Japan / WPCL-11718
- セルフカバーベストアルバム「THE SWINGIN' SIXTIES」
収録曲
- There will be love there~愛のある場所~
- 冷たい花
- You & I
- Rock'n Roll
- Hello Another Way-それぞれの場所-
- Stand by me
- Bye Bye Mr.Mug
- そのスピードで
- Blue Daisy
- 長いため息のように
- A Little World
the brilliant green(ザブリリアントグリーン)
奥田俊作、川瀬智子によるロックバンド。作曲・アレンジ・ベースを奥田、作詞・ボーカルを川瀬が担当。1997年にシングル「Bye Bye Mr.Mug」でデビューし、その独自の世界観と完成度の高いサウンドが注目を集める。1998年にリリースしたシングル「There will be love there~愛のある場所~」は大ヒットを記録。その後the brilliant greenのほかに、川瀬はソロプロジェクト「Tommy february6」「Tommy heavenly6」でも活動。the brilliant greenとしては、2010年1月にワーナーミュージック・ジャパンへ移籍し、同年内にシングル3枚とオリジナルアルバム「BLACKOUT」を発表。2014年2月に約3年半ぶりの活動再開を発表し、同年7月、セルフカバーベストアルバム「THE SWINGIN' SIXTIES」をリリースした。