ナタリー PowerPush - the brilliant green
5thアルバム「BLACKOUT」 川瀬智子インタビュー
今年2月の「LIKE YESTERDAY」を皮切りに、6月に「Blue Daisy」、8月に「I Just Can't Breathe...」とコンスタントにシングルをリリースしてきたthe brilliant green。その流れのまま、約8年ぶりとなるニューアルバム「BLACKOUT」が到着した。
"the brilliant greenらしさ"をコンセプトに掲げて制作されたという本作には、デビュー以来一貫してサウンドの根幹としてきた90年代UKロックのフレイバーが心地良く全編に鳴り響いている。それは、急速な時代の流れに抵抗するかのように、変わらないことにこだわった彼らなりの美学であり、確固たる自信の表れでもあるのだろう。
果たして、久々となるアルバム制作の裏にはどんな思いがあったのか。川瀬智子に話を訊いた。
取材・文/もりひでゆき
自分たちのスタンダード=90年代UKロックを表現
──久しぶりのアルバムが完成した今のお気持ちはいかがですか?
時間的な部分とか、もっとこういう曲も入れたかったとか、そういう感じがあったりもするので、ほんとは(制作期間が)あと2カ月あったら良かったなって思ってますけどね(笑)。なので、次にthe brilliant greenとしてやりたいことがもう出てきてる感じなんですよ。その気持ちを次につなげてがんばりたいなって。
──8年ぶりということについてはどう感じます?
ベストアルバムを2年前に出して、そのときにシングルも作ったし、今回もシングルの作業が3曲あったりしたので、8年っていうのはちょっと意外な感じもしますね。
──その間、動いていなかったわけではないですもんね。
ただ、アルバムとしてまとめるのは確かに8年ぶりなので、今の自分たちが考える“the brilliant green”っていうものはちゃんと出したいなっていう気持ちはありました。あとは、過去最高にタイトなスケジュールだったんですけど、ストック曲をまとめた寄せ集めのアルバムには絶対にしたくなかったんです。それだったらもうやめたほうがましだっていうくらいの気持ちで。だから短期間だったけど、集中して楽曲の制作期間をとって、新しい収録曲はすべて最近作りました。
──コンセプトが“the brilliant green”であるというのは、具体的には?
the brilliant greenのスタンダードなところをしっかり出すということですね。時代背景によって新しいことをやったりっていうのは当然あるんですけど、基本的には90年代のUKロックがルーツで、そこを重視したいっていう。
──the brilliant greenがデビューした当時は、まさにUKロックブームの真っ最中だったわけですが、それを2010年に改めて意識したということでしょうか?
当時はリアルタイムだったので、その時点ではルーツっていう感覚はなかったんです。でも今はそこが自分たちのルーツだっていうことを認識できてるんですよね。ただ、そこで過去に戻るっていう感覚はないんです。過去のものをもう一度焼き直そうとすると無理があるし、自分たちとしても面白くないですし。言葉にするのが難しいんですけど。
──でも本作を聴かせていただくと、その感覚は良くわかるような気がします。UKロックを下敷きにしたthe brilliant greenの王道とも言えるサウンドが詰まっていますもんね。
やっぱり自分がリアルタイムで経験して、ずっと憧れてきた世界観だから表現しやすいんですよね。時間がどれだけ経っても。
the brilliant greenの歌詞は“等身大”
──歌詞に関しても、the brilliant greenらしさは強く意識されたんですか?
「the brilliant greenっぽい歌詞を書こう」っていう感覚はあんまりないんですよね。the brilliant greenは等身大っていう感じで。サウンド的にも、普段の自分のテンションに一番フィットするから、すごく書きやすいし。
──等身大で書いたものが結果的として“らしさ”になっているということなのかもしれないですね。それぞれの歌詞で描かれている世界観は、まさにthe brilliant greenだなあと思いました。さまざまな内容がありますけど、どこかに闇が潜んでいるというか。
自身の闇から抜け出したいっていう理想はあるけど、実際には簡単ではないから、もうここにいる、この中でがんばるっていうことですよね。1曲書き終える頃に、ちゃんと闇から抜け出せればいいなと思うんですけど現実はそうじゃないから、解決しないまま曲が終わったりする。それでも生きていく、それが現実。って曲が続いていく。そういうイメージを描きたかったんですよね。
──そういう部分に人間が生きることのリアリティを感じたりもしますし。
あくまで自分のことですけど、私の場合はもし光のもとに行ったとしても、たぶん戻って来たくなると思うんですよ、暗い世界に。実際、音楽的にもパッと明るいだけの感じってそんなに好きじゃないんで。たぶん性に合わないんだなっていう。(Tommy)february6はいちばんポップだけど、実際はメロも切ない系だし。意外とテンションも低めなんです。(Tommy)heavenly6の暗さは悪魔的で、ちょっと西海岸の雰囲気のような弾け感も入ってきたりするんですけど、the brilliant greenにはそういう感じないですし。
CD収録曲
- BLACKOUT
- BLACK DARK NIGHT
- I'm sick of this place
- Talk to me
- Blue Daisy
- Break Free
- Going Underground
- WHIRLWIND
- Spring Gate
- Song 2
- I Just Can't Breathe...
- LIKE YESTERDAY
- BLUE SUNRISE
初回盤DVD収録内容
- LIKE YESTERDAY MUSIC VIDEO
- Blue Daisy MUSIC VIDEO
- I Just Can't Breathe... MUSIC VIDEO
- LIKE YESTERDAY MAKING MOVIE
- Blue Daisy MAKING MOVIE
- I Just Can't Breathe... MAKING MOVIE
the brilliant green(ぶりりあんとぐりーん)
奥田俊作、川瀬智子によるロックバンド。作曲・アレンジ・ベースを奥田、作詞・ボーカルを川瀬が担当。1997年にシングル「Bye Bye Mr.Mug」でデビューし、その独自の世界観と完成度の高いサウンドが注目を集める。1998年にリリースしたシングル「There will be love there~愛のある場所~」はメガヒットを記録。その後the brilliant greenの他に、川瀬のソロプロジェクト「Tommy february6」「Tommy heavenly6」でも活動。the brilliant greenとしては、2010年2月に「LIKE YESTERDAY」、6月に「Blue Daisy」、8月に「I Just Can't Breathe...」のシングル3枚をリリースし、2010年9月に約8年ぶりとなるオリジナル5thアルバム「BLACKOUT」を発表。