THE BOYS&GIRLS|ボイガル渾身の2曲に“とーやま校長”が迫る、札幌出身ラジオDJが初対談

あなたにとっての「東京」を思ってほしい

遠山 ボイガルの曲って、売れるとか売れないとかっていうのよりも聴いてくれてる人がちゃんといるし、そいつに届けたい一心で歌っているっていうのがひしひしと伝わってきて。そういうところがめちゃくちゃ好きです。もちろん商業的な音楽を作るプロフェッショナルもいますけれど、こういう“思いだけでできた曲”は、ストーリーも含めてもっとみんなに知ってほしいですね。もう1曲の「東京」についても話を聞きたいんですけど、ボイガルは「札幌」って曲あるじゃないですか。「東京」ってタイトルの曲はたくさんあるけど、「札幌」って初めて見てびっくりしたんですよ。「ついに札幌の歌を生んでくれる人が現れた!」っていううれしさがめちゃめちゃあった。で、このタイミングで「東京」という歌ができたわけですけど、この曲はどういう経緯でできたんですか?

ワタナベシンゴ(THE BOYS&GIRLS / Vo, G)

ワタナベ これもいろんな思いがあるんですけど、以前僕らはビクターからメジャーデビューを経験していて。そのときのディレクターのボスがいたからできた曲で、ボスは東京にいるし僕らは札幌に住んでいて、直接会って話せない日々が続いて「あんたはいっつも東京にいるよな」「僕は札幌にいるから全然会えねえや。話せないや」みたいな気持ちが発端で。

遠山 へー!

ワタナベ 「東京にいた」って言う歌詞があるんですけど、そこに「(僕は)」「(君は)」を付けなかったのは、聴いた人に「これは誰が東京にいたんだろう?」って思ってもらいたいからなんです。自分なのか、自分の好きな人なのかっていうふうに思ってもらいたいなっていうのがあって、ここはあえて誰目線かわかんないようにして。なんか僕にとって東京って、苦しいことのほうが多いって言うか……単純に人が多くて疲れるし、いつもいつもハッピーな思い出ばかりが増えていくわけではない場所なんですよね。「東京」は終わる最後まで「結局僕はなんも変われないし、なんも進んでないんじゃないだろうか」っていう、救いようがない歌なんですけど、ずっと札幌にいたらできなかった歌だなと思います。「ホントはあんたと直接会って話したいのにな、僕は」っていう。

遠山 僕はもう19年か20年ぐらい暮らしてるんですよ。こっちで。札幌で過ごしてた時間よりもこっちのほうが長くなってしまった。札幌に帰るのは年1回ぐらいで、東京にいるのがもう普通になってしまったんですよね。でも漠然とですけど、死ぬときは札幌で死にたいなって思ってて。60歳や70歳になったら北海道で週2、3回ぐらいラジオやらせてもらって「何言ってるかわからない」「さっきもしゃべったことまたしゃべってますよ」ってハガキがいっぱいくるようになって引退みたいな。

ワタナベ あはは(笑)。

遠山 で、そのときもしかしたらまだほかのメンバー2人が東京に残ってるかもしれないじゃん。そしたら「あいつどうしてんのかな」とかってたぶん思うでしょうし、東京にこれだけいたら知り合いが増えたから、そのみんなが今何を思ってるんだろうとか、考えると思うんです。でね、この曲で歌っているような会いたい人がちゃんといたらいいなって。「会って話をしたい」って思う人が。

ワタナベ そうですよね。確かに。

遠山 だからこの曲を聴いて、今のうちにそういう人を作っていきたいなって思いました。これから東京に出てくる人もそういう思いをするんじゃないかな。

ワタナベ なんかうれしいです。そういうふうに思ってもらえて。この曲は今いる大事な誰かのことを思ったりとか、まだ今はわかんない誰かのことを思ったりとか、聴いた人に考えてもらいたいなと思って作ったので。この曲を聴いて「東京」っていう街を思うんじゃなくて「シンゴさんがここで歌ってる東京、私にとってはどこだろう」とか「私にとっては誰だろう」とかって思ってほしい。

憧れの峯田和伸とのエピソード

遠山 僕の感想はシンゴくんからするとしてやったりだ。でも「東京」って名曲が多いからプレッシャーもあったんじゃない?

ワタナベ 僕、姉ちゃんから音楽をいっぱい教わったんですけど、その姉ちゃんに「『東京』っていう曲を作ったんだよね」って送ったら「お前は『東京』を歌うにはまだ早い」みたいなこと言われたんです(笑)。

遠山 「東京」に手出したなみたいな(笑)。

ワタナベ 「めちゃくちゃハードル上がってるよ。私、今までいろんな音楽をアンタに教えてきたけど、アンタはわかってるじゃん? 私が教えてきたアーティストみんな『東京』歌ってるじゃん」「もちろんわかってるよ。銀杏BOYZもくるりもサニーデイ・サービスも。でも僕は『東京』を作ったんだよ」「じゃあ聴くわ」みたいなやりとりがあって。

遠山 それでお姉ちゃんからの返答は?

ワタナベ よかったって。「普通にグッときた」って返事が来ました(笑)。

遠山 安心だ(笑)。お姉さんはライブには来るの?

ワタナベ 下北沢でワンマンやった日に来てくれたんですよ。こっそり後ろで見てるって言ってたのに結局2列目ぐらいにいました。

遠山 いい姉ちゃんだな。ちなみにどのへんをかなりお姉ちゃんから影響受けてるとかって聞いていい?

ワタナベ 中学校の入学式の1週間前に聴いたGOING STEADYが始まりでした。

遠山大輔(グランジ)

遠山 そこからロックの道がガンっと開けてしまったと。

ワタナベ そうですね。それ以降も姉ちゃんがいろんなアーティストを教えてくれました。田舎だったのでCD屋もライブハウスもなかったんですけど、なぜか姉ちゃんはいろんなCDを持ってたんすよ。

遠山 中標津でしょ? けっこう田舎だよね。姉ちゃんはなんでCD持ってたの?

ワタナベ 通販で買っていたみたいです。で、それを僕に聴かせるという。本当ゴイステを聴き始めてから今まで峯田(和伸)さんに影響を受けまくってますね。

遠山 対バンしたことはあるんですか?

ワタナベ あります。2016年にCLUB CITTA'でやった「SET YOU FREE」っていうイベントで。でもその前に北海道で会ってるんですよ。峯田さんが「ボーイズ・オン・ザ・ラン」っていう映画の試写会の舞台挨拶で札幌に来ていて、僕はどうしてもそれに行けなかったんで、入り待ちしてたんです。タワレコの袋にそのときにやっていたバンドのCDを入れたウォークマンと住所とか全部書いた手紙を入れて会場の近くで待っていて。「あんたがいたから僕は今音楽やってるんだ」って伝えたかったのに、峯田さん全然来なくて、2、3時間待ったんですよ。もう全然来なくてめっちゃムカついて。で、家と別方向のコンビニ行ったんですよなぜか。「峯田あいつマジなんなの?」とか思いながら(笑)。そのコンビニで立ち読みしてたら隣に人が来て振り返ったら峯田さんで。もう僕はムカついてるからその瞬間は「あ、峯田だ!」しか思わなかったんですけど、しばらく経って「あれ、渡したいものあるじゃん!」って気付いて、「すみません、峯田さんですよね?」って声をかけました。峯田さんに「バレた?」って言われて、なんかもうぐちゃぐちゃな気持ちで「CDウォークマンも入ってるんですぐ聴いてください」ってタワレコの袋を渡しました。そのあと何年後かに競演してそのときのことを話したら「そんな奴がいたのは覚えてる」って言ってもらいました。

遠山 すごい行動力と運(笑)。峯田さんは去年も武道館でライブをやって、まだまだ第一線でやってくださってるのはうれしい限りでしょ?

ワタナベ もう辞めればいいのにって思いますよ、逆に。もういいよ休みなよって(笑)。

遠山 それはなんで?

ワタナベ 僕もバンドをやるようになって「峯田がいなければな」ってたまに思うんです。峯田チルドレンなので、「師匠いいですよ、僕が行きますよ」ぐらいの気持ちで僕も行かないとカッコよくなれないと思うので。だから本心ではないんですけど。

遠山 なるほどね。お笑いなんてビートたけしさん、さんまさん、タモリさんのビッグ3がいまだに健在で、さらにダウンタウンさん、とんねるずさん、ウンナンさん、ナイナイさん、ロンブーさんもいるんですよ。そう考えると峯田さんもまだまだ退くこともないだろうし大変な世界ですよね、ロックもお笑いも。

ワタナベ そうですね。それがカッコいいんですよ。辞めないだろうなと思うし、もちろん辞めないでくれとも思うんですけど。

THE BOYS&GIRLS「卒業証書」
2018年2月2日配信
THE BOYS&GIRLS「卒業証書」
THE BOYS&GIRLS「東京」
2018年3月3日配信
THE BOYS&GIRLS「東京」
THE BOYS&GIRLSワンマンツアー
「少年少女の春の先」
  • 2018年5月5日(土・祝)北海道 帯広Rest
  • 2018年5月6日(日)北海道 cube garden
  • 2018年5月12日(土)愛知県 CLUB ROCK'N'ROLL
  • 2018年5月13日(日)大阪府 LIVE HOUSE OSAKA BRONZE
  • 2018年5月19日(土)東京都 新代田FEVER
  • 2018年5月20日(日)東京都 新代田FEVER
THE BOYS&GIRLS(ボーイズアンドガールズ)
THE BOYS&GIRL
2011年3月結成。北海道出身・札幌在住のワタナベシンゴ(Vo)、ケントボーイズ(G)、ソトムラカイト(B)、カネコトモヤ(Dr)からなる4人組ロックバンド。2014年8月に北海道限定シングル「すべてはここから」を、11月にシングル「歩く日々ソング」を北海道および全国のタワーレコード限定でリリースした。2015年4月に「バックグラウンドミュージック」でSPEEDSTAR RECORDSからメジャーデビュー。札幌を中心に精力的にライブ活動を行い、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」や「JOIN ALIVE」など、野外フェスにも出場を果たした。2017年5月に東京、大阪、北海道を回るワンマンツアー「少年少女のケモノ道」を開催。8月には、2ndアルバム「拝啓、エンドレス様」をBONSAI RECORDSの第1弾作品として発表した。2018年2月に「卒業証書」、3月に「東京」と2カ月連続で楽曲を配信リリース。5月にはワンマンツアー「少年少女の春の先」で北海道、愛知、大阪、東京を回る。
遠山大輔(トオヤマダイスケ)
1979年5月10日、北海道札幌市出身。お笑いトリオ・グランジのボケ担当。TOKYO FM「SCHOOL OF LOCK!」の“とーやま校長”としても音楽ファンになじみ深い。両親の影響で小さな頃から音楽に触れて育ち、現在も国内外問わずロックを中心にさまざまなジャンルの音楽に精通している。3月10日に東京・ヨシモト∞ホールで「グランジが60分新ネタやるぞ!ゲストなし!」を開催する。
グランジが60分新ネタやるぞ!ゲストなし!
日時:2018年3月10日(土)東京都 ヨシモト∞ホール