THE BOYS&GIRLS|ボイガル渾身の2曲に“とーやま校長”が迫る、札幌出身ラジオDJが初対談

THE BOYS&GIRLSが2月2日に「卒業証書」、3月3日に「東京」と2カ月連続で配信シングルをリリースした。

この季節にぴったりな「卒業証書」は大阪の音楽専門学校ESPエンタテインメント大阪が企画するサーキットイベント「DIPLOMA CIRCUIT」への出演をきっかけに完成した楽曲。ワタナベシンゴ(Vo, G)が生徒たちへの思いを込めたナンバーは、全国の中学や高校の校内放送で解禁されたあと、TOKYO FM「SCHOOL OF LOCK!」でプレイされてさらに多くの音楽ファンへと届くこととなった。もう一方の「東京」は東京にいる大切な人と会って話ができない、もどかしい気持ちを歌った1曲。この2曲ができたことでワタナベは「自分に自信が持てた」と言う。

それぞれの楽曲をより多くのリスナーへ届けるべく、音楽ナタリーでは北海道札幌を拠点に活動するTHE BOYS&GIRLSからワタナベ、そして「SOL!」のパーソナリティである、とーやま校長ことグランジの遠山大輔との対談を企画。札幌出身の遠山は同郷のワタナベが作る音楽に興味津々の様子で、「卒業証書」「東京」の話はもちろん、ワタナベの音楽との出会いまで根掘り葉掘り聞いてくれた。

取材・文 / 清本千尋 撮影 / マスダレンゾ

届くまでにものすごい手間と時間がかかってる

──北海道出身、そしてラジオDJを務めているという共通点から今日はこの組み合わせでの対談を企画しました。お二人が顔を合わせるのは今日が初めてなんですよね?

遠山大輔(グランジ) そうなんですよ。でもTHE BOYS&GIRLSは北海道のバンドっていうだけですごくシンパシーを感じていました。

──そんな縁もある中、THE BOYS&GIRLSが2月に配信した「卒業証書」を先日「SCHOOL OF LOCK!」でラジオ解禁したんですよね。

ワタナベシンゴ(THE BOYS&GIRLS / Vo, G) はい。僕らの曲を流していただいてありがとうございました。

遠山 こちらこそ! 「SOL!」は主に十代に向けて放送しているから、今中学3年生、高校3年生のリスナーも多くて。学校を卒業して仲間と離れることを寂しく感じているやつもいれば、学校行きたくなくて早く卒業したいやつもいる。そんなみんなに向けての僕らが何かを言うよりもたくさんの気持ちが込められてる曲を流して、リスナーのみんなと一緒に聴くことができてホントによかったなって思っていて。この曲についてシンゴくんが書いたブログも、この前読ませてもらいました(参照:ワタナベシンゴブログ「愛葉集」青葉雨と風薫る)。

左からワタナベシンゴ(THE BOYS&GIRLS / Vo, G)、遠山大輔(グランジ)。

ワタナベ ありがとうございます!

遠山 そうしたら「この歌は、この音源は、ラジオじゃなくてYouTubeじゃなくてまずは学生に、学校中に流してほしいです」って言ってて「あ、そっか。ラジオはダメか……」って。

ワタナベ いやいや、それはめちゃくちゃ勘違いされてます。ラジオでかけたくないわけじゃないですよ(笑)。

遠山 え、そうなの?……ごめんね。でもちゃんとブログ読みましたよ(笑)。校内放送で、学校のスピーカーから生徒たちの耳に届けたいっていうことですよね。

──「SOL!」で流す前に、「卒業証書」を校内放送で流してくれる学校を全国から募集したんですよね。

ワタナベ はい。

遠山 実際どれくらい応募が来たの?

ワタナベ 15校くらい。その中から実際どれくらいの学校で本当に流れたかはわからないんですけど、ライブに遊びに来てくれた子から「流しました」って言われることもありました。あと事務所にアルバムみたいなものが突然届いたんですよ。校内放送で「卒業証書」をかけてくれた長崎の子が送ってきてくれたもので、その子が学校のみんなに「卒業写真」の歌詞をコピーして渡して、聴いてくれた子たちが好きな歌詞に印を付けて、感想を書いたものがいっぱい入ってて。

遠山 えー! すごい!

ワタナベ で、その聴いてくれた子の説明も横に書き添えてあるんです。「◯◯くんは普段はEXILEとかが好きでロックを聴かない。ちょっととげとげしいことを言っていますけど、それも彼のいいところです」とか。その子は「盛り上がりにイマイチ欠けてた」って感想でした(笑)。でもその子もちゃんと歌詞に蛍光マーカーで印を付けてくれていて。そういうのがたくさんあって、なんかもう言葉にできなかったです。

遠山 今なんてもう配信ですぐに新曲が聴けちゃうじゃないですか。そんな中で、今回の校内放送で解禁っていうのはリスナーに届けるまでものすごい手間と時間がかかってますよね。送ったものがちゃんと届いてることをわざわざ送り返して来てくれるなんてグッと来ちゃうな……。

ワタナベ そうですね。僕らからは「流した様子をSNSとかで教えてほしい」って言っただけなんです。だからホントにびっくりしました。

「卒業証書」の誕生秘話

──校内放送での楽曲解禁もそうですけど、ネットプリントでジャケットを配信して、それをプリントアウトしてSNSでファンに広めてもらうという解禁方法も今までにないアイデアで面白いなと思いました。

ワタナベ なんかふとそんな解禁方法もアリかなと思ったんですよね。思い付いたら最後、やるしかないなって……。

──先ほど遠山さんが読んだと言っていたブログに「『卒業証書』と『東京』はCDという『モノ』としてではなくて『コト』として届けたい」と書かれていました。なぜこう思ったんでしょうか?

ワタナベ この2曲にはとにかく自信があったんですよ。だからみんなに協力してもらって、今までと違う方法で届けることができたらいいなって。校内放送のアイデアもネットプリントのアイデアもずっと温めてきたわけじゃなくて、なんかパッと思い付いたんです。はっきりした理由はないけど、とにかく直接届けたかった。この直接届けたいという思いは、カッコつけて言うと、「この2曲がそうさせてくれた」みたいなところがあって。もともと僕は自分に自信がないほうなんですが、この2曲ができて「あれ? なんか自信がある」と思えたんですよ。

左からワタナベシンゴ(THE BOYS&GIRLS / Vo, G)、遠山大輔(グランジ)。

遠山 へえ。「卒業証書」はどういうところからできていった曲なんですか?

ワタナベ 毎年2月にESPエンタテインメント大阪の卒業制作イベントがあって。2013年に始まって、その初年度に出させてもらってから毎年呼んでもらっているんです。「DIPLOMA CIRCUIT」っていうサーキットイベント。最初は「イベント名が覚えにくいな」と思っていたくらいだったんですけど、いつもライブに来てくれている子からの誘いだったので引き受けて出たら、それがめちゃくちゃいいイベントだったんです。PAも照明もブッキングも運営も全部学生がやっていて。1年目に出てる僕らを観た子たちが「去年THE BOYS&GIRLSを観て、私たちも一緒にやりたいと思ったので出てほしい」って、それがずっと続いていて。

遠山 2013年から?

ワタナベ そうです。去年は僕が弾き語りで出たんですけど、出る直前に新しい歌を歌いたいなと思って書いた曲が「卒業証書」。「DIPLOMA」って「卒業証書」って意味があるんです。

遠山 へー! そうなんだ!

ワタナベ 最初に出たときに「どういう意味?」って生徒たちに聞いたら「卒業証書って意味です」って教えてくれて。2年生にとって「DIPLOMA CIRCUIT」は最後の登校日で、あとは卒業式で最後に集まって終わりっていう。卒業前、最後にみんなで集まって先生たちに怒られながらも1つのサーキットイベントを作る。そんな彼らにとって大事なイベントに出させてもらってきたから、「僕からあの子らに何を渡せるんだろう」って毎年考えていたんです。それで去年出たときに「何も渡せるわけないけど、やるしかないな」っていうところにたどり着いて、この曲を本番の1時間前に喫茶店で書きました。

遠山 え! 1時間前に!?

ワタナベ 「さっきようやくできたから」って譜面台立てて、できたての歌詞を見ながら歌ったんです。「卒業証書」は「DIPLOMA CIRCUIT」がなければできなかった曲ですね。

遠山 ちなみに、この話ってどこかでしてるんですか?

ワタナベ いや、ほとんどしてないです。

遠山 これ聞いたの遠山だっていうのちゃんと書いておいてくださいね!(笑) 本番1時間前に作った曲をお客さんに向けて歌うってめちゃめちゃ緊張したんじゃないですか?

ワタナベ クッソ緊張しましたね。そのときと今とで歌詞はちょっと違うんですけど。僕は彼ら彼女たちの学生生活を知らないけれど、僕も音楽の専門学校に通っていたから、その当時の思いも少し重ねました。みんなが生き生きとイベントの制作をやっている姿を見て「かっけえな」と思ったんですよ。だから今歌を歌う者としては、せめてこのイベントに対してちゃんと歌を届けたくて書いたんです。そのときはその一瞬のために作ったんですけど、歌って人前で歌った瞬間からその場にいた人だけのものじゃなくなると思うんです。だから「DIPLOMA CIRCUIT」を知らない人にも届いたらいいなと思っています。というか、バックボーンを知らなくてもちゃんと届かないと意味がないし、「この曲を届けたい」、「これは届くんじゃねんか」と思ったんですよね。そこにいなかったやつにもちゃんと届けるべきだって。

遠山 この話を聞いてまた改めて歌詞を見ながら聴くとグッと来るね。その場にいたみんなにとってこんなにうれしいことはないでしょうね。

左からワタナベシンゴ(THE BOYS&GIRLS / Vo, G)、遠山大輔(グランジ)。

ワタナベ なんか卒業って、いろんなものからの卒業があると思うんです。そのときはESPの子らのことしか考えていなかったですけど、例えば結婚するのも独身からの卒業かもしれないし、仕事を辞めるのも職場からの卒業、酒飲むのをやめるのも酒から卒業。いろんな形の卒業があるのかもしれないって。だからこそ、そこにいなかった人たちにもちゃんと届けなきゃいけないと思ったんです。

遠山 酒からは卒業するつもりは?

ワタナベ したいなとは思ってますけど……。

遠山 留年ってことですか?

ワタナベ まあそうですね。もう5、6年留年してます(笑)。

遠山 5、6年かー。もうたぶんそれ卒業するのあきらめたほうがいいレベルですね(笑)。

THE BOYS&GIRLS「卒業証書」
2018年2月2日配信
THE BOYS&GIRLS「卒業証書」
THE BOYS&GIRLS「東京」
2018年3月3日配信
THE BOYS&GIRLS「東京」
THE BOYS&GIRLSワンマンツアー
「少年少女の春の先」
  • 2018年5月5日(土・祝)北海道 帯広Rest
  • 2018年5月6日(日)北海道 cube garden
  • 2018年5月12日(土)愛知県 CLUB ROCK'N'ROLL
  • 2018年5月13日(日)大阪府 LIVE HOUSE OSAKA BRONZE
  • 2018年5月19日(土)東京都 新代田FEVER
  • 2018年5月20日(日)東京都 新代田FEVER
THE BOYS&GIRLS(ボーイズアンドガールズ)
THE BOYS&GIRL
2011年3月結成。北海道出身・札幌在住のワタナベシンゴ(Vo)、ケントボーイズ(G)、ソトムラカイト(B)、カネコトモヤ(Dr)からなる4人組ロックバンド。2014年8月に北海道限定シングル「すべてはここから」を、11月にシングル「歩く日々ソング」を北海道および全国のタワーレコード限定でリリースした。2015年4月に「バックグラウンドミュージック」でSPEEDSTAR RECORDSからメジャーデビュー。札幌を中心に精力的にライブ活動を行い、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」や「JOIN ALIVE」など、野外フェスにも出場を果たした。2017年5月に東京、大阪、北海道を回るワンマンツアー「少年少女のケモノ道」を開催。8月には、2ndアルバム「拝啓、エンドレス様」をBONSAI RECORDSの第1弾作品として発表した。2018年2月に「卒業証書」、3月に「東京」と2カ月連続で楽曲を配信リリース。5月にはワンマンツアー「少年少女の春の先」で北海道、愛知、大阪、東京を回る。
遠山大輔(トオヤマダイスケ)
1979年5月10日、北海道札幌市出身。お笑いトリオ・グランジのボケ担当。TOKYO FM「SCHOOL OF LOCK!」の“とーやま校長”としても音楽ファンになじみ深い。両親の影響で小さな頃から音楽に触れて育ち、現在も国内外問わずロックを中心にさまざまなジャンルの音楽に精通している。3月10日に東京・ヨシモト∞ホールで「グランジが60分新ネタやるぞ!ゲストなし!」を開催する。
グランジが60分新ネタやるぞ!ゲストなし!
日時:2018年3月10日(土)東京都 ヨシモト∞ホール