The BONEZ特集|“今が最高”を更新し続ける4人の気骨、誰ひとりとして置いていかないライブを貫く理由 (2/3)

BONERの中に嫌なヤツはいない

──既存のファンと新しいファンの間に漂うギスギスした雰囲気に関しては今、多くのバンドが頭を抱えているんじゃないかと思っていたんですけど、The BONEZはその問題に真摯に向き合っているんですね。

JESSE もちろん、さっき話したみたいな、人の上に立っちゃったり、人の顔を蹴っちゃったりする子はいるけど、俺らが1つ言ってることがあって。顔を蹴っちゃったときに誰のことを蹴ったか気付かないときってあるじゃん?

──そうですね。

JESSE でも、そういうときは相手が誰かはわからなくてもそっちのほうに向かって「ごめん!」って手を合わせる。それはケンカを防ぐ1つの技だと思う。「ごめん!」「ああ、いいよ」ってね。俺が「それができるならいいよ」と言ってるから、うちのライブではサーファーはみんなそうしてるもん。なんならセキュリティに対してもやってるファンもいるからね。1カ所に向かって大勢でサーフしすぎちゃったときに、手をちょっと上げて「ありがとうございます……!」って。あれはセキュリティとしても悪い気はしないと思う。

左からJESSE(Vo, G)、ZAX(Dr)。

左からJESSE(Vo, G)、ZAX(Dr)。

──素晴らしいですね。でも、なかなか真似できないことだと思います。それを成立させるにはThe BONEZが持っているような人間力とお客さんとの信頼関係が必須だと思うから。

JESSE うちらがラッキーなんですかね。The BONEZのライブを観たいと思ってくれる人たちの中にそういうことを理解してくれている子たちが多い。The BONEZファンのことをうちらはBONERって呼んでるんですけど、英語で“勃起”って意味なんですよ。そいつらにとっては勃起するぐらいうちらのライブが生きる糧なんですよね。BONERの中に嫌なヤツはいないし……でも、たまーにいるけどね(笑)。

──それはどんなお客さんですか?

JESSE 酒を飲みすぎた状態で観に来たヤツがいて、滅多に客にキレないイッシー(T$UYO$HI)がそいつに対して本番前からイラついてたんですよ。俺はそいつの顔を見てないからわからなかったんだけど、ライブが始まった瞬間に客席見てわかったの、「こいつだ!」って。それぐらい1人だけ浮いてて、酔っ払ってるもんだから、1曲目からふらついててライブに集中できてないのね。しかも、頭に巻いてたバンダナを振り回して、それが前にいるお客さんにずっと当たってて、その子も超嫌がってるから「1回落ち着こう」って言ってるのに「ウワァァァッ!」ってずっと興奮してる。それで俺もムカついてきて、スタッフにフロアの外に連れ出してもらって、ライブ中にもかかわらずそのスタッフがずっとそいつと一緒にいてくれたんだよ。

ZAX 「大丈夫か!? 中に戻れるのか!?」「戻りたい!」「まだダメだ! 落ち着け!」ってやってたらしくて(笑)。

JESSE でも、俺らはそういうヤツのことも置いていかない。その日のMCでも言ったけど、「あいつをここで追い出したら、戻ってこれるところがなくなるじゃん」って。「怒ってる人もいるかもしれないけど、あいつが大丈夫だったら入れてもいい?」と聞いたら、みんな「ワー!」ってなったから、その判断をスタッフに任せたんだよね。結局、最後のほうにちょっとだけ入ってきて、またフロアの外に戻されてたけど。そうやって誰1人として置いていかないスタイルは今回のツアーで得たものかな。

左からT$UYO$HI(B)、KOKI(G)。

左からT$UYO$HI(B)、KOKI(G)。

なぜ、今ホールなのか

──そういったライブハウスツアーがある中で、8月からは初の東名阪ホールツアー「LIVE TONIGHT」が開催されます。これは小さいキッズや家族連れも存分に楽しめるライブを見せたいという意図があるんでしょうか。

JESSE うん、そうっすね。The BONEZがホールという場所でできるバンドなのかどうか、ホールでやるにはバンドの形態を変えないといけないのか。それすらまだわからないけど、今は声を出したり叫ぶこともできるし、そんなに難しく考えなくてもいいのかな。キッズ用にファミリーボックスもあるし、ファミリーボックスを選ばずに最前で観たいっていう子供がいるならそれも俺は超楽しみ。そういったことも含めて全部が楽しみですね。この機会を逃す手はないんじゃないかな。

──各公演に対バンアーティストがいますが、なぜワンマンではないんでしょう?

T$UYO$HI 今やってるライブハウスツアーは半分くらいワンマンで、もちろんそれも楽しいんだけど、やっぱり対バンがあることによって俺らが受ける刺激はすごくデカい。今のThe BONEZを各地のファンに見せたいという気持ちと同じぐらい、仲間である対バンのヤツらに見せたいっていう気持ちもある。それに対バンのヤツらが今、どういうライブをやってるかというのも知りたいから、そういう意味でもツーマンライブは刺激があってすごく楽しいんですよね。あと、ホールツアーを始めるきっかけがあるんですけど、実はコロナ禍になって最初にライブをやるときに一番躊躇してたのはJESSEで。

──それは意外ですね。

T$UYO$HI 「もしかしたら俺、もうライブやりたくないって思っちゃうかもしれない」と。ファンからのリアクションがなくてつまらないと思うのが怖いって。だけど、実際にやってみたら「これはこれで全然アリだ」って俺ら4人とも思えたんです。最初は、モッシュやダイブが起きない環境ではThe BONEZのライブは成立しないのかという問いかけが自分たちに対してあったんだけど、もちろんそれがあるに越したことはないけど、ライブをやってみたらなくても俺らの音楽は成立することがわかって。そういう経験を経たからこそ、椅子がある場所でもライブできるじゃんって思えたんですよね。だから今回はちょっと違ったThe BONEZを見てもらえるかな。

The BONEZ

The BONEZ

「今が最高」をずっと更新しちゃってる

──The BONEZは今年結成10周年を迎えました。10年活動を続けてきたことに対してどんな思いがありますか?

JESSE こないだ携帯の写真フォルダを開いたときに、間違えて携帯の一番上の部分をタップしたら一番古い写真が出てきたんですけど、見たら2009年ぐらいのThe BONEZを始めたときの写真だったんですよ。それを見ながら、「ああ、こういうのあったな、こういうこともあったな……うわ、ZAX、今より細長いな」みたいな(笑)。

ZAX 髪、めっちゃ短かったよな。

JESSE そうやって写真を見ながら「懐かしい」と思ったんだけど、全部鮮明に覚えてて。「こんなことあったっけ?」っていう写真も、「こうして振り返ると長かったな」という感覚も一切なかったんですよね。もう、ここまで一瞬。コロナがなかったら実質7年目のバンドだけど、それでもコロナの間に3本もツアーして、今回で4本目のツアーをしてるからね。これが俺らの残してきたリアルな結果だと思うし、ここで得たものがホールツアーにも生きるかもしれない。

JESSE(Vo, G)

JESSE(Vo, G)

ZAX(Dr)

ZAX(Dr)

──ああ、そうですね。

JESSE コロナ禍のライブで、ライブハウスにパイプ椅子が置かれててお客さんは声を出しちゃいけなくて、できるのは拍手だけっていうのはえぐかった。えぐかったけど、俺はそのとき逮捕されたあとだったから、人がいる前でライブができるってだけで十分だったんですよね。「なんで声出せないんだよ」なんて思わなかった。そういうことを踏まえてもこの10年はまだ山の途中、4合目とか5合目。

T$UYO$HI 確かに、長いっていう感じは全然しない。全部が“今”の積み重ねだし、最近の記憶が一番濃いと思う。「あー、昔はもっとよかったよなあ」という感覚にこの10年間なったことがない。

JESSE 間違いない。

T$UYO$HI もちろん、過去にいいライブがあったという事実として残ってるんだけど、今のほうが充実してる。フレッシュで新しいこともできてるし昔に負けてないと思うから、ちょっとずつ色が濃くなってきてる10年だと思います。

JESSE そんな恋愛をしたいですね!

一同 あははははは!

ZAX 俺らは4人で(恋愛を)してるからね!

KOKI そうっすね! そういうことですね!

──ZAXさんはどうですか、この10年を振り返ってみて。

ZAX 親父から言われた言葉に「辞めるのもセンス、やるのもセンス」っていう名言があって俺の座右の銘になってるんですけど、今のツアーを半分終えて感じたのは、俺はもらう側から与える側に変化してきている。そういうこともあって、「音楽っていいな」「バンドっていいな」という気持ちをこれまで以上に噛み締めてますね。

KOKI(G)

KOKI(G)

T$UYO$HI(B)

T$UYO$HI(B)

──KOKIさんは、2022年に正式加入する前に見ていたThe BONEZと、加入以降のThe BONEZの間にどういう変化を感じていますか?

KOKI 基本的な印象は同じっすよ。さっきも言った通り、今の状態が楽しいんですよね。メンバーみんな仲いいし、オフの日でも一緒にメシに行ったり、ライブ観に行ったりするし。外から見たイメージとまったく変わりはないですし、今ではメンバー個人個人のことがもっと好きになってます。もちろん、内側に入らないと見えない部分、例えば最初に話したZAXくんのハイスタのこととか、「あー、裏でこんなにやってんだな」とか。同じようなことはJESSEくんからもT$UYO$HIくんからも感じるから、見習うべきところがいっぱいあります。

JESSE (唐突に)絶好調!

──以前、別の取材で話を聞いたときも「絶絶絶絶絶絶好調!」って言ってましたよ(笑)。

JESSE じゃあ、今はその倍!(笑) さっきイッシーが言ってたこととつながるよね。「今が最高」をずっと更新しちゃってる。