ナタリー PowerPush - The Beatmoss
ILMARI&KOSENが語る“新人バンド”今日までの歩み
それぞれにとってこのバンドが新鮮
──The Beatmossはメンバー4人の音楽的嗜好がバラバラだそうですね。ILMARIさんはRIP SLYMEやTERIYAKI BOYZの活動で知られるとおりのラップのスキルがあって、KOSENさんはオルタナティブロック、YASさんはラウドやメタル、SOHNOSUKEさんはquasimodeメンバーとしてのジャズの素養に加え学生時代はヒップホップに親しんでいると。こうも好きな音楽の方向が散らばっていると、ひとつのバンドとしてのサウンドに落とし込むのに難儀しませんか?
ILMARI だから今年の春夏くらいの時点では、The Beatmossの音楽がどういうものかっていうのを自分たちでも手探りで作ってたんですよね。普通のバンドだったら、インディーズで活動したり、3年くらいかけてなんとなく「俺たちこういう感じかな」ってつかんでいきますけど、俺たちはそれを短いスパンでやるために、みんなで意見交換をしたんですよ。「俺はこういうのをこのバンドでやったらいいんじゃないかなと思う」とか、それぞれの趣味とか、制作途中で結構話し合いました。
KOSEN みんな好きなジャンルは違っても音楽好きというのは共通してるから、「ヒップホップの良いところ取り入れたいよね」とか「YASのヘビーなところも混ぜたいよね」というふうに自然となって、ケンカすることはなかったですね。
ILMARI 俺もリップっていう母体があっての活動だから、あんまり肩肘張ってはやってないですね。それより自分が今までやってなかったことをやって楽しみたいっていう気持ちのほうがでかい。
──4人がものすごく一致団結してるわけじゃない、元々のカラーを持ったまま混ざり合ってるところが面白いですね。ライブを拝見しても、良い意味でそれぞれタイプが違うなと思いました。
ILMARI 確かにそうかも。違う畑から来てるっていうのがパフォーマンスに出てますね。俺も知り合いのライターに言われましたもん、「お前はやっぱ横ノリなんだよな。ロックは縦だからさ」って。それ聞いて「縦なんだ……」と思って。
──ということは、1人ひとりこのバンドに新鮮さを感じてるんですかね。
KOSEN すごい感じてますよ。逆に俺は縦はちょっとダサいと思ってたんですよ。「もうロックで縦とかちょっと気合入れすぎじゃね? むしろリップみたいに横に動けるのイケてるじゃん」って思ってたんですけど、イルさんがそこで「縦なんだ」って思ってるあたりが面白いですよね(笑)。
ILMARI 今泉くんも、ジャズドラマーだから最初の頃は1つひとつの叩き方がやんわりしてた。彼にとっても新しい挑戦だったと思いますよ。
KOSEN 筋肉付いたって言ってましたから。それぞれ全てが新鮮なんだと思います。
「Vol.1」と「Vol.2」
──では今度リリースされる第2弾作品「The Beatmoss Vol.2」について。「Vol.1」との関連性を含め、どんな作品になりましたか?
ILMARI どっちも最初に作ったデモの中から厳選した7曲なんですけど、一番の違いはサウンドですかね。「1」は真っ当なバンドサウンドで、「2」はKOSENくんのソロがあったり、吉田仁(SALON MUSIC)さんにリメイクを頼んだり、4つ打ちが入ったりして、こっちのほうがちょっとポップですね。だからジャケも「1」は普段着で路地裏で撮ってちょっとバンドっぽい雰囲気、「2」はちゃんと正装して食事してる。
──The Beatmossの2つの側面を打ち出したんですね。
ILMARI 実はそれが2枚に分けた理由だったんで。最初から全部曲はあったけど、自分たちも手探りで作ったからどれが“The Beatmoss”なのかわかんないんですよ。だから1枚目は自分たちの芯の部分というかロックバンドなんだってところを前に出して、そのほかの曲たちにあるポップな部分とかキャッチーな部分は2枚目にしようっていう。両方の要素が俺たちにあるから。
KOSEN 2枚組みたいな感じですかね。言うならば、本当に初期の頃4人でスタジオで鳴らしてた段階のものが「Vol.1」で、「The Beatmossでこういうことができそうだよね」って話し合いながらやってみたのが「Vol.2」っていうか。
──歌詞は前作同様、ILMARIさんとKOSENさんの共作なんですね。
ILMARI はい。KOSENくんが全部作った「So Fish」以外はそうですね。基本はメロに仮歌詞が乗っていて、それを元にテーマを詰めていったり、言葉替えをしていったりっていう感じです。彼の家のすぐ近くのロイヤルホストに集合して、そこで書いてます。
──なんかバンドっぽいですねえ。
KOSEN 深夜のファミレスで(笑)。
──今回「1」と「2」の歌詞を読んでみて、「1」は「朝日昇る」「夜が明け」「太陽」といった朝を表す言葉が目立っていて、逆に「2」は夜の表現が多いなと思いました。
KOSEN ああ……そうなのかなあ。
──そんなに意図したものではない?
KOSEN 「1」の夜明けっていうテーマはちょっとあったかもしれないです。まず単純に夜明けまで曲作ってたっていうこともありますし、僕にとってThe Beatmossは今までの自分の音楽も生活も全て変えてくれる存在だと思ってて、だから新しい日が始まるっていう意味で。「2」の夜の感じも、夜って1日の終わりだけど言い換えれば次の日が来るサインでもありますよね。だから「1」と「2」通して“新しい何かが来る”みたいな気持ちは強かったかな。
ILMARI KOSENくんのそういうエネルギーというかピュアなものって、捉え方によってはキャッチーで、ポップで、若い感じがするんですよね。俺は俺でそういうのっていいな、素敵じゃんって思って。だからRIP SLYMEのILMARIとしては表現しないことでも、このバンドにおいては直接的なメッセージも発してもいいんじゃないかなと。
──直接的なメッセージというと具体的にはどんなことですか?
ILMARI リップでは「愛してる」って絶対表現しないことなんですよ。実際愛してても「愛してる」とは言わないし、ずっと斜めからのアプローチでやってきたので、こうやって新しい人と作ってて、ストレートな表現が新鮮で。正直最初は自分にないものだから抵抗感があって、「1」はKOSENくんが書いてきたのを「これは若いよ」って言って削ったり変えたりしたんですけど、あとから聴いて「そのままで良かったな」って思うところもあって。2人で作ってるメッセージだから、彼の表現があって全然いいなと思って「2」は割と「ここ変えてもいいかな」と思ってもそのまま残しました。
- 2ndミニアルバム「The Beatmoss Vol.2」 / 2013/01/23発売 / 2100円 unBORDE WPCL-11287
- 2ndミニアルバム「The Beatmoss Vol.2」
収録曲
- Freedom(twilight)
- Break Down
- SUPERSTAR
- フリースロー
- So Fish
- Great Journey
- Freedom(at Dawn)
- 1stミニアルバム「The Beatmoss Vol.1」 / 2012/11/21発売 / 2100円 unBORDE WPCL-11238
- 1stミニアルバム「The Beatmoss Vol.1」
収録曲
- All around the world
- Yellow Sun
- Flippin'Out
- Laughter
- Summer
- Stranger
- Flow
ライブ情報
The Beatmoss Flippin'Out TOUR
- 2013年2月6日(水)
大阪府 梅田Shangri-La - 2013年2月7日(木)
愛知県 名古屋ell.FITS ALL - 2013年2月13日(水)
東京都 新宿LOFT
The Beatmoss(ざ・びーともす)
ILMARI(Vo / RIP SLYME、TERIYAKI BOYZ)、KOSEN(G)、YAS(B)、SOHNOSUKE(Dr / quasimode)による4人組バンド。2011年夏にILMARIとKOSENが出会い、意気投合して楽曲制作を開始。同年末にライブを見据えてYAS、SOHNOSUKEが加入する。その後都内を中心にライブを重ね、2012年11月にミニアルバム「The Beatmoss Vol.1」でCDデビューを果たす。続いて2013年1月に2作目のミニアルバム「The Beatmoss Vol.2」をリリース。それぞれヒップホップ、ロック、ジャズシーンで培った持ち味をミックスしながらオリジナリティあふれるサウンドと世界観を表現している。