今の音楽は「誰がやっているか」が大事
──トリビュート盤の収録曲はそれぞれの個性、センス、音楽性が滲み出た楽曲ばかりですね。
荒井 そこにグッとくるんですよね。テナーと同じように、LOW IQ 01の「beautiful vanity」も、市川(昌之)さんのオリジナル曲みたいだったし、坂本真綾さんの「明日を知らない」もすごくよくて。「明日を知らない」って曲は僕らも忘れてたくらいの曲ですから(笑)。ライブでもおそらくやらない曲だろうし、「むしろこの曲は差し上げます」という感じです。
──メンバーの皆さんにとっても、the band apartの楽曲を再発見するきっかけになった?
荒井 トリビュートのよさというのは、自分たちの曲のことよりも、それぞれのミュージシャンが持っているものだったり、底力みたいなものが感じられることだと思うんです。だいぶ前から音楽って「出尽くした」みたいに言われることがありますけど、今の音楽は「誰がやっているか」が大事になっている気がするんですよね。演者、コンポーザーとしてはもちろん「何をやるか」を考え続けてますけど、それよりも「誰がやるか」も考えなきゃいけないなって。トリビュートにはそれがわかりやすく出ていると思うんです。今回の「Can't remember」がまさにそうですけど、ほかのバンドの曲をやることで、ストレイテナーというバンドがさらによくわかるっていう。
──昨年10月にはストレイテナーのトリビュートアルバム「PAUSE~STRAIGHTENER Tribute Album~」がリリースされましたが、ホリエさんはトリビュートという作品をどう捉えていますか?
ホリエ やっぱり「それぞれのバンドの曲にしてくれている」というのが感無量でした。選曲にもちゃんと意味があるんですよ。それぞれのバンドと出会うきっかけになっていたり、初めて会ったときに褒めてくれた曲だったり。お互いのリスペクトが今も続いていることを感じられた作品でした。
──ちょっと話は逸れてしまうんですけど、荒井さんとホリエさんにはmajikoさんに楽曲提供をしているという共通点もありますよね。
荒井 majikoさんとの付き合いは僕よりホリエくんのほうが長いよね。彼女の1stアルバム「Magic」のプロデューサーもやってましたし。
ホリエ 荒井くんの提供曲「きっと忘れない」の歌録りに立ち会わせてもらったとき、曲の構成にドキッとしたんですよ。2番のサビ前に間奏が入るんですけど、自分の中にはその発想がそれまでなくて。その構成、すぐにストレイテナーの曲に取り入れましたから(笑)。
荒井 そうだったんだ(笑)。majikoさんに曲を書かせてもらったのも、いい経験になりました。歌がすごくよくて、こちらのイメージを超えるんですよね。
ホリエ 自分たちがやりたいことを叶えてくれるシンガーですね。彼女は。
21年目に向けて
──the band apartは今年の春、ファンのリクエストをもとにしたツアーを行いましたよね。
荒井 はい。結果的には定番の曲とレアな曲が混ざって、いいバランスでやれました。
ホリエ リクエストライブは、僕らも5年前にやったことがあるんだけど(2013年2月17日に東京・日本武道館で開催された「21st CENTURY ROCK BAND」)、ファンも天邪鬼というか、「この機会じゃないと2度とやらないかもしれない」みたいな曲もけっこう入っていて。
荒井 俺らもそんな感じだったよ。「この曲はちょっと……」みたいな曲が危ない領域まで上がってきたり(笑)。演奏するのが嫌なわけじゃなくて、覚えてないってところが大きいんだけどね。
──運営面での影響のため延期が発表されてしまいましたが、the band apartの20周年を記念したイベント「AG FES」も開催される予定です。どういうイベントになりそうですか?
荒井 僕らがこういう大きなことをした経験がないのもあり、延期になってしまいましてすごく申し訳ないんですが、僕らっていい意味でも悪い意味でも「バンドにとってひと区切り」みたいな感覚があまりないんですよね。テナーもいろいろやってるけど、伏間の時期ってどう感じてる?
ホリエ たぶん同じような感覚だと思います。20年目も21年目も同じスピードで時間は流れていくわけだし。ただ新しい作品を作って、前回を上回るようなライブをやって……ということを繰り返していると「いったい、僕らは何をやってるんだろう?」と思うときもあるんですよね。だから節目の時期にお祝い的な活動をするのもいいなって、最近は思ってます。
荒井 「20周年、ありがとう」って言えるのは今しかないし、ご褒美イヤーだからね(笑)。今年の経験を次の活動に活かせると思うし、21年目に向けていいイベントになるよう取り組んでいきます。
※特集公開時、一部内容に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。
- V.A.「tribute to the band apart」
- 2018年9月19日発売 / ポニーキャニオン
-
[CD]
3240円 / PCCA-04705
- 収録曲
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- fool proof / cinema staff
- Snowscape / KEYTALK
- higher / FRONTIER BACKYARD
- beautiful vanity / LOW IQ 01
- Can't remember / ストレイテナー
- I love you Wasted Junks & Greens / ゲスの極み乙女。
- Moonlight Stepper / ASPARAGUS
- 明日を知らない / 坂本真綾
- 泳ぐ針 / tricot
- ピルグリム / 八十八ヶ所巡礼
- 禁断の宮殿 / 吉田一郎不可触世界
- 月と暁 / HUSKING BEE
- the band apart「20 years」
- 2018年9月19日発売 / asian gothic label
-
[CD2枚組]
3240円 / ASG-042
- 収録曲
-
DISC 1
- Eric.W
- Fool Proof
- Snowscape
- higher
- real man's back
- SOMETIMES
- KATANA
- I love you Wasted Junks & Greens
- Malibu
- photograph
- Taipei
DISC 2
- 茶番
- Flower Tone
- ノード
- 夜の向こうへ
- 笑うDJ
- ピルグリム
- 禁断の宮殿
- ZION TOWN
- Castaway
- 38月62日
- 君が大人になっても
- the band apart(バンドアパート)
- 1998年に荒井岳史(Vo, G)、川崎亘一(G)、木暮栄一(Dr)の3人で結成。原昌和(B)の加入を機にソウルやボサノヴァなどの洗練されたコード感を交えたロックサウンドへ変化を遂げ、2001年10月のデビューEP「FOOL PROOF」が好セールスを記録した。2003年に自主レーベル「asian gothic」を設立。翌2004年に移籍第1弾シングル「RECOGINIZE ep」をリリースし、以降もコンスタントに作品を発表。ほかに類を見ない独自性の高いサウンドは、多くのバンドに大きな影響を与えている。2016年10月にアコースティック編成の“the band apart (naked)”名義でアルバム「1」を発売し、2017年2月には同名義でシングル「Paper Planes e.p.」をリリース。7月には「謎のオープンワールド」から約2年半ぶりとなるフルアルバム「Memories to Go」を発売した。2018年9月にはバンド結成20周年を記念し、トリビュートアルバム「tribute to the band apart」とベストアルバム「20 years」を同時リリースする。
- ストレイテナー
- 1998年にホリエアツシ(Vo, G, Piano)とナカヤマシンペイ(Dr)の2人で結成。2003年のメジャーデビューのタイミングで日向秀和(B)が加入。さらに2008年には元ART-SCHOOLの大山純(G)が加わり、4人編成に。2009年2月には4人編成となってから初めてのフルアルバム「Nexus」を発表し、同年5月にアルバムを携えてのツアーファイナルとして初の日本武道館公演を開催した。ホリエはソロプロジェクト・entとして、日向はNothing's Carved In Stone、EOR、killing Boyのバンドメンバーとしても活動するなど、各メンバーがさまざまなバンドやプロジェクトで活躍している。2016年5月にアルバム「COLD DISC」を発表。同年6月より計26カ所の会場を回る全国ツアー「Step Into My World TOUR」を開催し、ツアーのライブ映像を収めたライブBlu-ray / DVDを2017年3月にリリースした。バンド結成20周年のアニバーサリーイヤーとなる2018年には4月にニューシングル「The Future Is Now / タイムリープ」を、5月にニューアルバム「Future Soundtrack」を発表した。同年10月には、ファン投票によって選ばれた楽曲などが収録されるベストアルバム「BEST of U -side DAY-」「BEST of U -side NIGHT-」を同時リリースする。
2018年9月19日更新