2018年に結成20周年を迎えるTHE BACK HORNが、節目を前にキャリア2枚目のベストアルバム「BEST THE BACK HORN II」を発表した。結成以来一度も活動を休止することなく第一線を走り続けている彼ら。ベスト盤のリリースを記念して、これまで発表されたアルバムを軸に話を聞いた。
取材・文 / 小野島大 撮影 / 上山陽介
- THE BACK HORN「BEST THE BACK HORN II」
- 2017年10月18日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
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TYPE-A [CD2枚組+DVD]
4860円 / VIZL-1237 -
TYPE-B [CD2枚組]
3456円 / VICL-64842~3
- DISC 1(CD)
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- 覚醒
- 戦う君よ
- 閉ざされた世界
- 世界中に花束を
- シリウス
- シンフォニア
- バトルイマ
- シンメトリー
- コワレモノ
- ビリーバーズ
- 悪人
- その先へ
- 魂のアリバイ
- With You
- あなたが待ってる
- 孤独を繋いで
- グローリア
- DISC 2(CD)
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- ひょうひょうと
- 声
- コバルトブルー
- 赤眼の路上
- 扉
- 枝
- 晩秋
- ジョーカー
- 罠
- 冬のミルク<New Recording>
- 美しい名前
- 何処へ行く
- 上海狂騒曲
- 刃
- 泣いている人<New Recording>
- 無限の荒野<New Recording>
- DISC 3(TYPE-A DVD)
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- 戦う君よ
- 閉ざされた世界
- シリウス
- 世界中に花束を<New Recording>
- シンフォニア
- バトルイマ
- シンメトリー
- コワレモノ
- ビリーバーズ
- 悪人
- その先へ
- With You
- あなたが待ってる
- 孤独を繋いで
- 泣いている人<New Recording>
<Extra Video>
- 戦う君よ(葛藤編)
- 戦う君よ(狂乱編)
- 戦う君よ(妄執編)
- 戦う君よ(鬱屈編)
- シンフォニア(1cut ver.)
曲を作りたくなくなることは1度もなかった
──来年で結成20年ですが、長いブランクもなくコンスタントに作品を作り続けているのはすごいことだと思います。
菅波栄純(G) 曲を作りたくなくなることは1度もなかったですね、この20年間。
──リリースがあるからとか、そういう理由だけではなく?
菅波 リリースに追われるだけだったら、どっかで止まってたと思うんです。曲を作りたいという欲があるからやってこれたと思うし。レコーディング前だからとかそうでないとか、そういうことに関わらず曲を作ってきたと思いますね。
──曲はどういうきっかけでできることが多いんですか?
菅波 時期によりますけど、「自分がこういう曲聴きたいな」ってときもあるし、「この曲を4人でライブでやったら面白そうだな」っていうイメージを最初に思い付くときもある。それで形にしたくなってギターを持って……みたいな。
──20年間、ほぼ同じメンバーでやってきて、2001年からはレコード会社もマネージメントも変わらない。同じ環境でずっとやってきたわけですが、その中で行き詰まったり迷ったりということはありませんでしたか?
菅波 メジャーデビューして1、2枚目の頃が一番煮詰まってたと言えば煮詰まってた気がしますね。曲ができなくて苦戦してた記憶があります。インディーズ時代から作っていた曲を全部出し尽くしてしまい、メジャー1stアルバム「人間プログラム」はイチから作る形だったから。光舟の前のベーシストもメジャーデビュー直前で脱退したりして。そこで立ち止まるという選択肢はなかったけど、次の自分たちが何を表現したらいいのか見つけるまで時間がかかりました。
岡峰光舟(B) 2枚目のアルバム(2002年リリースの「心臓オーケストラ」)を出すときに初めて曲作りの合宿をしたんですけど、そのときが一番大変でした。「人間プログラム」を出したあと、特にマツ(松田)が「前と同じことは全部排したい」って言い出して。リズムパターンにしてもそうだし、曲調にしても「1stアルバムにあるようなあれっぽい曲みたいに思われるのもイヤだから、2ndアルバムは全部新しい感じでいきたい」ってことになって、その“新しい感じ”を探すのにすごく時間がかかった。
菅波 それはホント、そうでしたね。
松田晋二(Dr) THE BACK HORNがインディーズからメジャーへと活動の場を広げていく過程で、「人間プログラム」はある程度リスナーに受け入れられたという手応えがあったからこそ、そこに甘んじちゃいけないという気持ちがすごくあって。かと言って次は何をやるべきかっていう明確な何かがあったわけでもなく、「とにかく探そう」みたいな。「人間プログラム」を出して1年……1年もなかったな。今思えば、その期間内で探すのは無理があった気がしますね。
苦難した「心臓オーケストラ」の制作
──でもそこで無理をしたからこそ、あとにつながったというのもありますか?
松田 そうそう。もちろん選択肢として「人間プログラム」でつかんだものをさらにビルドアップさせて次の作品に向かおう、というやり方もあったと思うんです。だけどその道を選ばず、力を振り絞って「心臓オーケストラ」というアルバムを生み出したからこそ、3rdアルバムの「イキルサイノウ」(2003年リリース)が作れた。結果論ではあるけど、あの段階で「心臓オーケストラ」を作れてよかったと思う。無理をする必要はなかったかもしれないけど、それをやってたら相当早めに打ち球はなくなってたと思うな。
菅波 うんうん。
松田 その分、「心臓オーケストラ」の曲作りは大変でしたけど。
岡峰 大変だったな……。俺、バンドの状況を知らなくて、THE BACK HORNってこういうバンドなんだって思った(笑)。
──一番大変な時期に加入したわけですね。
岡峰 はい。しんどいなあと思いました。人里離れた山の中に置き去りにされて。マネージャーが俺らを置いて東京に帰っちゃって、俺らだけ残されて(笑)。
松田 俺、大変すぎて将司が鼻血出してたのを覚えてる。客観的に自分たちの音楽を探ろうとか、時間の使い方とかよくわかってなかったから。ただがむしゃらに探し続けて曲を作って……というやり方だったからハマっちゃったんですね。
──でも、その時期に今に至るTHE BACK HORNの基礎が作られた?
松田 僕はそう思ってます。
菅波 ああ、一理あるね。けっこう曲の幅が広いもんね、「心臓オーケストラ」は。
松田 広いけど、どの曲にも“THE BACK HORN印”が押せてる。それが「イキルサイノウ」で結実して、THE BACK HORNの存在感を世の中に提示できたと思います。セールス的にも。
──バンドとして1つの転機だった?
菅波 そうですね。
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叫ばないアルバムを作りたい。ちゃんと歌いたい
- THE BACK HORN(バックホーン)
- 1998年に結成された4人組バンド。2001年にメジャー1stシングル「サニー」をリリース。国内外でライブを精力的に行い、日本以外でも10数カ国で作品を発表している。またオリジナリティあふれる楽曲の世界観が評価され、映画「アカルイミライ」の主題歌「未来」をはじめ、映画「CASSHERN」の挿入歌「レクイエム」、MBS・TBS 系「機動戦士ガンダム 00」の主題歌「罠」、映画「劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-」の主題歌「閉ざされた世界」を手がけるなど映像作品とのコラボレーションも多数展開している。2014年には熊切和嘉監督とタッグを組み制作した映画「光の音色 -THE BACK HORN Film-」が公開された。2017年2月にかねてより親交のあった宇多田ヒカルとの共同プロデュース曲「あなたが待ってる」をシングルとしてリリース。10月に2枚目のベスト盤となる「BEST THE BACK HORN II」を発表した。