ナタリー PowerPush - THE BACK HORN
“今”を刻み続けた15年の軌跡
THE BACK HORN結成15周年。常にストレート一本勝負にこだわり、100メートルをいかに速く駆け抜けるかに命を賭けてきたような4人の15年の歴史と現在を余さず見せるアイテムが2タイトル同時にリリースされる。
今回発表されるのは、シングルのカップリング曲を中心にした2枚組34曲収録のB面集「B-SIDE THE BACK HORN」と、新曲「バトルイマ」「雨に打たれて風に吹かれて」に加え、インディーズ時代のアルバム「何処へ行く」を再現したプレミアムライブを収録したDVDを同梱した15000枚限定シングルの2種。
シングルのカップリングといっても、お遊びや手抜きは一切ない。「B-SIDE THE BACK HORN」はオリジナルアルバム同様に濃密で熱いTHE BACK HORNの世界がとことん堪能できる。そして「バトルイマ」では“今”に生を燃焼し尽くす彼らの哲学が凝縮されている。どちらも絶対聴き逃せない作品だ。
取材・文 / 小野島大 インタビュー撮影 / 福本和洋
今思えば同じ匂いがした
──結成15周年おめでとうございます。
菅波栄純(G) ありがとうございます……15年前って……19歳?
山田将司(Vo) 18、19だね。
菅波 (15年も)続くとは思って……。
山田 ないでしょ!(笑)
菅波 ないよなあ……。
──最初にバンドを組んだとき、将来こうなりたいとか、こういうバンドにしようといった構想はあったんですか。
菅波 なかったですね。最初は手探りでとにかく曲を作って、その過程で何か見つかるだろうと思ってやってましたね。「歌が導くだろう」って歌詞が初期の曲(「空、星、海の夜」)に出てきますけど、ほんとそういう気分でやってたところがあって。メンバーが集まったのも、お互い完全に打ち解けてから結成したわけじゃなかったから。とりあえずバンドを始めてから考えようと。趣味嗜好もけっこうバラバラなんだってあとからわかったし。
──菅波さん、山田さん、松田さん(と、岡峰の前任ベーシスト)が同じ学校だったんですよね。
菅波 バンドを東京でやりたくて音楽の専門学校入って、2人に声をかけたんです。
──なぜこの2人だったんです?
菅波 それ、聞かれるたびに言うことが違ってたりするんだけど(笑)。
松田晋二(Dr) わははは!(笑)
菅波 同じ匂いがしたっていう。
松田 今思えば、ってことでしょ。
菅波 そう。将司とか、昔から飛び抜けて雰囲気があって。浮かれてる感じもなかったし、本気で音楽をやりにきたっていうのが(専門学校の)生徒の中でも一番出てたから。なんかこう、「和気あいあいとやる気はねえからな」ってぐらいの雰囲気がビンビンに出てた。マツも逆の意味の雰囲気があって……。
松田 チャラチャラしてた?(笑)
菅波 そう。こんなにチャラチャラしてる人がいるんだってぐらいチャラチャラしてた(笑)。
──「社交的」ってことね(笑)。
菅波 真っ白いシャツでガングロで金髪で、スティック2本入ったクリアケースを持って。セッションしてみたら、こんなドラムを叩くやつがいるんだって。はみ出し者って感じですごい目立ってたから。
「冬のミルク」だけはビジョンがあった
──最初にスタジオ入ったときのことは覚えてます?
菅波 最初……(思い出し笑いをしながら)。
山田 カバーをやろうってことで譜面を渡したんだけど、誰もコピーしてこなくて。全員自分のやりたいように演奏するだけで、見事にバラバラでしたね(笑)。
──なんの曲だったんですか?
山田 ブランキー(・ジェット・シティ)の「ガソリンの揺れかた」って曲で。
菅波 そこで正直に言えばよかったんだね、(譜面を)読めないって。
山田 ウン(笑)。
──こりゃダメだってなりませんでした?
松田 すぐやめようと思ってましたよ(笑)。
菅波 普通はそうだよね。
山田 俺は地元でも別のバンドやってたからね。
菅波 学校へは武者修行的に来てたの?
山田 歌を学ぼうと思ってたから。そうしたら入学の次の日に栄純にさらわれたという(笑)。
松田 とにかく最初のセッションは最悪だったけど、1曲だけ持ってきた「冬のミルク」って曲をやって流れが変わった。
山田 マツが「これ、本当におめえが作ったのか?」って(笑)。
菅波 でも疑ったってことは(曲に)食い付いてきたってことだから。前向きに捉えて。
──なんで疑ったの?
松田 いやなんか、胡散臭く思えたというか(笑)。まあオレもそう思われてたんだろうけど(笑)。メンバー集めたわりに、どこに自信があるのか……。
菅波 なんにもない(笑)。
──ハッタリなんじゃないかと。
山田 そうそうそうそう。
松田 どうする気なんだろうと思って。だから、こうして集めたんなら、コピーとか俺らもう十分にやってきてたし、オリジナルをやりたいから、なんか曲を作ってきてよって言って。そうしたら栄純が「冬のミルク」を持ってきた(インディーズアルバム「何処へ行く」に収録。ベスト盤「BEST THE BACK HORN」に新録で再収録)。それが、それまで思ってた菅波栄純像からは出てこない歌詞であり、曲だったんで、ほんとにこいつが作ったのか?と(笑)。
──なるほど(笑)。
松田 でも一方で「こいつはすごいやつかもしれん」と思い始めて。
菅波 「冬のミルク」以降にいろんなタイプの曲を作ったんですけど、「冬のミルク」だけは「こういう曲を作ろう」という明確なビジョンがあったのかもしれないです。将司の歌とか人間性とか全然わからないけど、最初に思った、こいつ雰囲気あるなって、なんか心に持ってそうだなって。そういうキャラクターを妄想して、こいつが歌うならこの曲だって作ったのが「冬のミルク」だった。
- 15000枚生産限定シングル「バトルイマ」2013年9月18日発売 / [CD+DVD] 1500円 / SPEEDSTAR RECORDS / VIZL-578
- 15000枚生産限定シングル「バトルイマ」
CD収録曲
- バトルイマ
- 雨に打たれて風に吹かれて
DVD収録内容
- ピンクソーダ
- カラス
- 冬のミルク
- 魚雷
- 雨乞い
- 怪しき雲ゆき
- 晩秋
- 何処へ行く
- カップリングベスト「B-SIDE THE BACK HORN」 [CD2枚組] 2013年9月18日発売 / 3000円 / SPEEDSTAR RECORDS / VICL-64064~5
- カップリングベスト「B-SIDE THE BACK HORN」
DISC 1
- 異国の空(New Recording)
- サイレン
- ガーデン
- 青空
- 楽園
- 思春歌
- 針の雨
- 白い日記帳
- カラビンカ
- 夜空
- フラッシュバック
- ハッピーエンドに憧れて
- 番茶に梅干し
- 天国への翼
<Bonus Track>
- ザクロ(New Recording)
- 桜雪(New Recording)
- 何もない世界
DISC 2
- カウントダウン
- 果てしない物語
- イカロスの空
- 共鳴
- 真冬の光
- 水芭蕉
- 赤い靴
- 神の悪戯
- パラノイア
- 栄華なる幻想
- 真夜中のライオン
- 警鐘
- 一つの光
- クリオネ
- 舞い上がれ(Band Version)
<Bonus Track>
- 砂の旅人
- コオロギのバイオリン
THE BACK HORN(ばっくほーん)
1998年結成された4人組バンド。2001年にシングル「サニー」をメジャーリリース。国内外でライブを精力的に行い、日本以外でも10数カ国で作品を発表している。また黒沢清監督の映画「アカルイミライ」の主題歌「未来」をはじめ、紀里谷和明監督の映画「CASSHERN」の挿入歌「レクイエム」、MBS・TBS 系「機動戦士ガンダム 00」の主題歌「罠」、映画「劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-」の主題歌「閉ざされた世界」を手がけるなど、オリジナリティあふれる楽曲の世界観が評価され、映像作品やクリエーターとのコラボレーションも多数。2012年3月に20枚目となるシングル「シリウス」を、同年6月に9作目のオリジナルアルバム「リヴスコール」を発表。9月より2度目の日本武道館単独公演を含む全国ツアー「THE BACK HORN『KYO-MEIツアー』~リヴスコール~」を開催し、成功を収める。2013年9月にB面集「B-SIDE THE BACK HORN」およびシングル「バトルイマ」を発表。
2013年9月24日更新