ナタリー PowerPush - THE BACK HORN
震災を経て生まれた新バンドアンセム
言葉の意味よりも物語を伝えたい
──震災を経て自分たちが何気なく歌ってた曲が、違うニュアンスになったとか、歌えなくなったとか、逆にこれがやりたくなったというのはありますか?
松田 震災直後のライブの前にいろいろ話し合ったよね。
山田 そうだね。いつも以上に言葉を選んで、この曲はどうなんだ、これは歌えないかもとか話し合って。
松田 そのときはイベントだったんで、数ある曲の中から厳選するんですよ。だから今将司がこれ歌ったら響くと思うってのを優先したり。削っていくというより、数ある中から俺らが歌うべき曲を探していくみたいな。そのときは、言葉の意味合いよりも、曲を最後まで聴いてどう思うかってことを重視してましたね。
──今まで気付かなかったことに気付いたり?
山田 そうですね。音楽は元々自分のために始めたけど、誰かにいいと思われたくてやってるところもあって。誰かに褒められたことがうれしくて歌い始めたっていうのがあるから、求められたことに応えたいって気持ちもあるし。一節を切り取ると不謹慎に聴こえる歌詞もあるかもしれないけど、ライブが終わったときにどう感じるか。俺らが自由にやることで生まれる力がリスナーに届くことを信じてるから、それがわかってからあまり気にしてないですね。
聴いてくれる人を強く意識した
──カップリングの1曲目「ひとつの光」は山田さんが作詞していますが、この曲はどういう気持ちで?
山田 周りに誰かがいてくれること、命があることが希望っていう思いで書きましたね。
──これはいつ頃作られた曲ですか?
山田 曲は去年の夏前とか。歌詞は年末かな。真っ直ぐな気持ちをぶつける曲にしたいなって思ったから、それが伝わるようにすごく言葉を選びました。今までの曲も真っ直ぐな気持ちで作ってはいたけど、今回は聴いてくれる人をより強く意識したかもしれない。
──ライブをやっててお客さんとつながっている実感っていうのはあるわけですよね。それはいつでも得られるもの?
山田 いつでもじゃないですね。つながってるっていうのは後付けかもしれない。ライブ中はお互いぶつけ合ってる気持ちだから。「今つながってるな」って考えるより、「お腹をいっぱいにしてあげたい」って気持ちが強い。そうやって自分の居場所を作ってきたから。
自然と人を応援する曲がそろった
──カップリングの2曲目「クリオネ」は前からある曲なんですか?
菅波 これは一昨年から去年にかけて作った曲ですね。ツアーではやってました。すごく俺らと親しくしてくれてる映像クリエイターの箭内(道彦)さんに「CMの曲書いてくれよ」って言われて。それが「ちふれ」っていうブランドの化粧水のCMで、すごい爽やかな内容でした。
山田 化粧水とか、普段縁のないバンドだろうからってオファーがきてね(笑)。
──もう1曲のカップリング「舞い上がれ」はリメイクですね。
菅波 元々はラジオの企画で作った曲でなんです。
山田 2006年の大晦日の番組に出るときだったかな。
菅波 受験生を応援するような番組だったよね。そのときに作って、普段のライブではやってなかったんだけど、昨年末の「マニアックヘブン」でやろうって話になって。元は弾き語りだったんだけど、バンドバージョンでやってみたら光舟が「このバージョンいいな」って言って。「マニアックヘブン」のDVDを作ったときに、「舞い上がれ」のバンドバージョンも録りたいって話になって、今回のシングルに入れようかと。
──「舞い上がれ」もそうですけど、今回のシングルはいろんな人を応援する曲ばかりですね。それは意図したことなんですか?
菅波 意図はしてなかったですね。「シリウス」を早くリリースしたいっていう気持ちはあったけど、それ以外は話の流れでこういう構成になって。結果的にメッセージ性の高い、より人に伝わる作品になった。ちょうど人を応援したくなるモードだったのかな。「舞い上がれ」を録って出したいって気持ちになったのも、そういうモードだったからかも。
──岡峰さんが「舞い上がれ」のバンドバージョンをいいと思った理由は?
岡峰 DVDを作るときに客観的に聴いて、バンドバージョンが思ってる以上にお客さんに伝わってるようにみえたし、俺らにしてみれば音源にもしてないから新鮮に響いて。今回のシングルにもアクセントがつけられそうだなって。時期的にも春のシングルにぴったりだし。
THE BACK HORN(ばっくほーん)
1998年に結成されたロックバンド。山田将司(Vo)、菅波栄純(G)、岡峰光舟(B)、松田晋二(Dr)の4人から成る。1999年夏には音源リリース前にもかかわらず「FUJI ROCK FESTIVAL '99」に初出演。同年9月に初のミニアルバム「何処へ行く」を発表する。強烈なライブパフォーマンスに加え、ハードなロックサウンドに文学的な日本語詩を乗せた音楽性で高い評価を獲得する。2001年にシングル「サニー」でメジャー移籍。以降コンスタントなリリースおよびライブ活動を展開している。また映画「CASSHERN」の挿入曲「レクイエム」提供をはじめ、映画とのコラボレーションも積極的に行い、映画関係者からも高い支持を受けている。