ナタリー PowerPush - THEATRE BROOK

やめんかったらロックスター! 佐藤タイジが使命感を語る

ついに到着したTHEATRE BROOKの5年ぶりの新作「intention」。これは、この名うてのメンバー揃いのバンドがそのスケール感を思いっきり解き放ったアルバムである。いきなりアグレッシブな「お尻をひっぱたけ!」に始まり、ギターインストあり、爆音ロックあり、ソウルフルなうねりあり。そしてそこで佐藤タイジのパーソナルな世界が大きな渦を描いている──という、まさに彼らしか表現できない世界が形成されているのだ。かくして本作を語る佐藤タイジ(Vo,G)の口調もまた、例によって豪快そのものなのであった。

取材・文/青木優

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自分よりも大きな意志に持ってかれてるなって

──これはものすごくグルーヴィでセクシーだし、熱いロック感とともに包容力やデカさが感じられるアルバムですね。

おおー、ありがとうございます! それはがんばった甲斐が(笑)。

──で、ご本人はどんなものを目指して作られたのかをまず訊きたいんですが。

そうやね……これ、期せずしてなんやけど、同時発売で本が出るんすよ。「やめんかったらロックスター」という僕の著作なんですけど、その本の執筆とアルバムの制作って、ほぼ同じように進行していて。で、最初はそんなつもりはなかったんだけど、その2つの作品がリンクしてるんですよね。歌詞の内容とかも。本のほうは、要はここまでのバンド人生みたいなもので、その中で感謝すべき人のこととかを書いていると、やっぱりアルバムの歌詞に出てくるんですよね。だから本のほうもアルバムのほうも、ここまでの人生の中の大事なことを作品にできたような気がしてるんです。それは最初はあまり考えてなかったんですけど、ただ、アルバムのタイトルを「intention」(=「意図」「意向」)ってしてますけど……自分がこうしようと思うことよりも、もっと大きい意志、意図に持ってかれてるなってのはあります。そのことはなんとなく、漠然と感じてるんですよね。

──なるほど。確かにタイジさんの個人性が強く感じられる作品で、たとえば「夢とトラウマ」の歌詞の内容などは、前回のインタビューのときにたっぷり語ってもらってるんですよ。

ああ、そうかそうか(笑)。ちょうどそれを書いてるときだったのかもしんないですね。

──でもこのタイトル……夢はともかく、トラウマ、ですか?

いや、多分これは俺の中にトラウマとしてあることなんですけど……トラウマってとてもネガティブなイメージがあると思うんですけど、ポジティブなトラウマもあると思うんですよ。例えばちっちゃいときのいろんな出来事がトラウマとして残っていたとして、それがネガティブなのかポジティブなのかって、そのときの自分次第なところはあるわけで。ひどいトラウマを持ってる方もいるし、俺もこの母親に言われた「(世界はあなたの)思い通りなのよ」っていう話のおかげで……。もちろん自分でロックスターだって言ってるけども、そんな楽しいことばっかりじゃないわけですよ? というか、もう、しんどいっすよ!

──そ、そうですか?

いや、思い通り、なのだが……決して万事順調なわけじゃないですよ。でも、どの人生もそうでしょ? 悪いことばっかりじゃないけど、いいことばっかりじゃないぞ! と。そういうニュアンスがちょっと入ってるんですよね(笑)。

──つまり「思い通りになる」と言われたことで、「じゃあどういうふうに生きていくべきなのか?」と発想するようになったということですか。

ということですね。それは大変なんすよ!(笑) 抱え込んじゃってるところがあるんですよね。

ニューアルバム「intention」 / 2010年6月9日発売 / Epic Records

  • 初回限定盤 [CD+DVD] / 3780円(税込) / ESCL-3450~1 / Amazon.co.jpへ
  • 通常盤 [CD] / 3059円(税込) / ESCL-3452 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. お尻をひっぱたけ!
  2. SNAKE BOOTS
  3. 明日のかけら
  4. イカロスの大地
  5. 裏切りの夕焼け -Album Ver.-
  6. 恋人よ
  7. '74年の日曜日
  8. 大気圏突破
  9. 未来を今
  10. 旅人と踊り子
  11. 夢とトラウマ
  12. 理想のオレ
初回盤DVD収録内容
  1. ツァラトゥストラはかく語りき
  2. SNAKE BOOTS
  3. ぜんまいのきしむ音
  4. 聖なる巨人
  5. まばたき
THEATRE BROOK(しあたーぶるっく)

佐藤タイジ(Vo,G)を中心に、1986年に結成されたファンクロックバンド。インディーズでの活動を経て、1995年6月にミニアルバム「CALM DOWN」でメジャーデビュー。ファンクやヒップホップ、ロックといったありとあらゆるブラックミュージックの要素を取り入れたサウンドが、好評を博す。1997年にはクリストファー・ドイルの映画「タイフーンシェルター」のサウンドトラックを担当。その後も精力的な活動を展開するが、2007年12月のライブツアーをもって2年間ライブ活動を休止。2009年末に満を持して活動を再開し、2010年2月ニューシングル「裏切りの夕焼け」をリリース。現在のメンバーは佐藤タイジ(Vo,G)、中條卓(B)、エマーソン北村(Key)、沼澤尚(Dr)。