「Forward」1位は「やっちまったな」
──昨冬に「The VOCALOID Collection」というイベントが初めて開催されました。Rさんはこの「ボカコレ」の開催期間に新曲を複数投稿して話題になりましたね。
R 「ボカコレ」の開催時期を狙っていたわけではなくて、リリース時期がかぶっていた曲が偶然2つあったのと、ニコニコ動画に投稿していなかった曲がずっとあって、せっかくならこのタイミングに投稿するか、みたいな感じで投稿させていただいたので全部で3曲になったんです。実を言うと自分が投稿するまで「ボカコレ」がどんなイベントなのかちゃんと把握できていなくて(笑)。「Forward」を上げたタイミングくらいで、「ボカコレ」で入賞するといろんな特典があることを知ったんです。そんなつもりじゃなかったのに、「R Sound Design、かなり狙ってきたな」と言われないかなと、ちょっと心配になっちゃいました。
──結果としてRさんの「Forward」は「ボカコレTOP30ランキング」で1位を獲得してしまったので……。
R そうですね。非常に光栄なことながら「やっちまったな」ともちょっと思いました(笑)。もちろんうれしかったので、応援していただいた皆さんには本当に感謝しています。
一二三 去年の「ボカコレ」には僕も参加したかったんですが、スケジュール的に合わなくて作品を発表することができなかったんですよね。参加はできなかったけど、こういうイベントを開催していただけることは本当に素晴らしいことだなと思っています。新人のボカロPって、とにかく自分のことを発見してもらうこと、知ってもらうのがすごく難しくて。「ボカコレ」には「ルーキーランキング」のようなカテゴリも用意されていて、自分が新人の頃にこういったベントがあったらメチャクチャうれしいだろうなと思って、うらやましくなりました。
R 新人ボカロPだけじゃなくて、「これから新しくボカロPになりたい」という人たちも「ボカコレ」を楽しんでいたのが印象的でした。ユーザーもクリエイターも、これからクリエイターになる人たちもみんなが集まって盛り上がってる感じ、お祭りっぽくてすごくいいんですよね。
──ボカロ曲のステムデータが公開されていることにも驚きました。これからボカロPを志す人はもちろん、いろんなボカロPが有名な曲のデータをダウンロードして、その手の内を知ることができる機会は、これまであまりなかったと思いますし。
R すごいですよね。僕も驚きました。
一二三 即ダウンロードしてしっかり保存しています(笑)。誰もが知ってるような名曲のデータが見れる機会なんてなかなかありませんから。
“調声”が一番楽しい
──ボーカリストやアーティストへの楽曲提供の仕事が増えている中で、お二人はボカロの投稿も継続的に行っています。お二人がボカロでの曲作りに惹かれている理由はなんですか?
一二三 僕、曲作りの中で“調声”と呼ばれる作業が一番楽しいと感じていて。
R へえ。そうなんだ。
一二三 ボカロの歌声や声質を選んで作り込んで、メロディに合わせて組み立てていく。プラモデルを作るような感覚でボカロの声をエディットするのが楽しいんですよ。そこにいろんなこだわりを詰め込むことができるのがボカロならではの醍醐味だと思うので。ボーカリストの方に歌ってもらうのもすごくやりがいがあるけど、ボカロでの曲作りは辞めないだろうな。
R 僕は理由が2つあって、1つはボカロの声のほうがフラットに曲を作れるということ。ボーカリストさんからの楽曲依頼があると、その声とか歌い方に合わせて楽曲を考えるんです。普段はこういう曲を歌っていて、こういう声質で、こういう癖がある方だから、こういう曲にしよう、みたいな。もちろんそれはそれでいいことなんですけど、どうしてもボーカリストの方に引っ張られてしまって、自分で作りたいものに寄せられなくなってしまうこともあって。それがボカロの場合は基本的にはフラットに歌ってくれるソフトなので、自分にボカロを合わせることができる。ボカロを使うからR Sound Designとして作りたい曲が作れている感覚がありますね。もう1つは二次創作がしやすいことです。テレビで流れている曲を聴いて歌ったり、バンドだったら好きなバンドのコピーをするのってすごく自然なことだと思うんですが、それを個人の方が作品として発表したり、披露したりするのって権利上の問題があってすごく難しいんですよ。でもボカロの文化ではクリエイターがオフボーカルの音源を公開するなど、皆さんが二次創作を作りやすいような土壌が作られている。聴くだけじゃなくて主体的に僕の音楽を楽しんでもらおうと思ったら、ボカロで曲を発表するのが一番かなと思っています。
一二三 僕もRさんと同じで“歌ってみた”も“踊ってみた”も大歓迎ですね。例えば自分の曲を歌ってもらって、その方が高評価を集めていたとしたら、自分以外のアーティストに対していい影響を与えられてる実感が湧くんですよ。さらにそのときの実感が新しい創作意欲を掻き立てることもあって。すごくいい関係性が築けていると思います。
R 聴いて楽しんでいただくのはもちろん、気に入っていただいて歌ってもらって楽しんでもらうというのはクリエイター冥利に尽きますよね。
好きな女性のタイプは?
──対談の最後に、この機会だからお互いに聞いてみたいことはありますか?
一二三 けっこう飲みに行ったりしていろいろ話しているんですけど、これまで聞けてなかったことが1つあります。もしかしたらRさんの素の部分を聞くことになっちゃうので、セルフブランディング的にNGかもしれないんですが……。
R なんでしょうか?
一二三 好きな女性のタイプはどんな方ですか? ちょっと聞いてみたくて。
R いいですね(笑)。好きな女性のタイプか……。具体的に言うと、背が高くて色白な女性ですね。それに加えて、創作活動を温かく見守ってくれる人かなあ。仕事で忙しくても笑顔で微笑みながら眺めてくれるような方がいいですね。
一二三 めちゃめちゃ共感できます。
R 一二三さんの好きな女性のタイプは?
一二三 質問しておきながらあまり考えてなかったんですが、Rさんが今話した「創作を温かく見守ってくれる人」というのは大事ですね。あと僕がインドア派なので、女性もインドア派のほうがいいのかな。一緒にゲームとかして遊べる子がいいな。
R ガチな話に(笑)。今までの話と一転しましたね。
──好きな女性のタイプがご自身の音楽性と結び付いている感覚はありますか?
R 僕はあまりないかもしれないですね。僕の場合、自分のことや自分の実体験を曲に書かないようにしているんです。自分のことは恥ずかしくて書けないタイプなので(笑)。
一二三 僕はRさんと逆かもしれない。自分の体験談や、触れてきたものを曲にしっかり投影させるタイプなので。でも好きな女性のタイプが曲に出てくる、みたいなことはあまりないかもしれないな。
──それぞれの解釈によるかもしれませんが、Rさんがお話した「背が高くて色白な女性」というキーワードはRさんの発表する曲の雰囲気や空気感に合うような気がします。
R 言われてみると確かにそうですね。実体験は書いてないけど、そういう女性像は曲の中に投影されているのかもしれないです。
一二三 意外と深い話になりましたね(笑)。
R 飲みの席でも話してなかったことが話せて面白かったです。また今度ごはんでも行きましょう。