ボーカロイドにまつわるさまざまな企画が繰り広げられるイベント「The VOCALOID Collection ~2020 Winter~」が、12月11日から13日にかけて開催される。
「The VOCALOID Collection」の開催を記念して、音楽ナタリーではイベントに賛同するクリエイターにスポットを当てた特集を複数回にわたって展開している。第2弾ではイベント参加クリエイターへのアンケートを実施。各クリエイターそれぞれの思い入れの強い3曲を、理由と共に挙げてもらった。
煮ル果実
代表曲「紗痲」など
じん(自然の敵P)「カゲロウデイズ」
自分がボーカロイドに熱中するきっかけになった曲です。自身の原点だと思っています。
バルーン「シャルル」
いつかこの曲のように広くいろんな方に愛される作品が作りたいなと思っています。憧れと目標の曲です。
煮ル果実「トラフィック・ジャム」
自分の曲の中でも特に気に入っています。是非とも御賞味下さい。
buzzG
代表曲「しわ」など
buzzG「Fairytale,」
手前味噌になりますが、私自身の楽曲です。
2012年5月21日に金環日食と呼ばれる非常に珍しい日食が世界各地にて観測されました。太陽と月と地球が一直線上に並んだときに月と太陽が重なり、太陽がリング状に光を放つことを金環日食と呼ぶそうです。
「Fairytale,」は再会を果たす2人を金環日食における月と太陽に例えて書きました。離れ離れになっても、いつか生まれ変わって、或いは星になって、数百年後、数千年後だとしても金環日食のように再会を果たそう、という約束の歌です。そんな荒唐無稽で御伽話のような約束もきっと、人が生きていく理由の1つになるのだと思います。
永遠の約束であってほしいという思いを込めて、タイトルはピリオド(終わり)ではなく、カンマ(続き)で締めています。
ぬー(古川本舗)「月光食堂」
思い入れのある大好きな曲です。
古川本舗さんはとても美しい曲を書かれる方で、ボーカロイド文化で出会って影響を受けた方の1人でもあります。「月光食堂」の歌詞は、豊かな表現と文学性を帯びていて、思わず口に出して読んでしまいたくなるような、そしてメロディと織り重なってなぜか涙があふれてくるような楽曲です。
ryuryu「Juvenile」
ryuryuさんの作られる楽曲はとても好きで選曲に迷ったのですが、大好きな楽曲の1つである「Juvenile」を。どこまでも透明感のあるサウンドに美しいメロディ、そして愛しくもどこか儚い歌詞に引き込まれました。大人になったら目に見えなくなってしまう妖精のような、そんな歌だなと思いました。
八王子P
代表曲「気まぐれメルシィ」など
Giga「劣等上等」
とにかくカッコいい。つい前のめりになってしまうこのグルーヴィーなサウンドはたまらないです。
ギガちゃんは僕の数少ないプライベートでもお酒を飲んだりする仲なのですが、会っても音楽の話はまったくしないので、たぶんこの先もしないと思います。
baker「celluloid」
bakerさんはボーカロイドを始める前から知っていたので、ボカロを始めたときは驚きましたし、イベントなどで共演できたときはすごくうれしかったことを覚えています。
僕の将来の相談とかも聞いてくださって、bakerさんがいなかったら今の僕はいないかもしれません。
emon(Tes.)「ラッキー☆オーブ」
今回セレクトした曲の中だと一番新しい曲がこの曲です。
僕の中でemonさんのベストソングは「Heart Beats」だったのですが、「ラッキー☆オーブ」はそれを超える曲になりました。
「MIKU EXPO」のテーマソングなのですが、ライブの盛り上がりが目に浮かぶ本当に大好きな曲です。
はるまきごはん
代表曲「メルティランドナイトメア」など
Eight「とても素敵な六月でした」
当時全然ギターが思うように弾けなかったし、引き出しも今より少なくて、ギターってマジでなんなんだって思ってたけど、この曲のイントロに心を打たれて、コピーして、ずっと弾いていたら、ギターってもしかしてこういう使い方ができるのかっていうのに気付いてうれしかった。この曲を始めとするこの頃のボカロの曲たちが、今の自分のギターを構築している気がする。今もRECの前とかに、無意識にイントロを弾いたりする。
ナユタン星人「ロケットサイダー」
ナユタン星人という謎のボカロPが現れたらしいという噂が広まって、みるみるうちにその名が知れ渡っていったときのことが鮮明に思い出せる曲。1作目の「アンドロメダアンドロメダ」とは違い、ロキノン系邦ロックを彷彿とさせるような曲調だったので、友達のボカロPと、ナユタン星人もロキノン好きなんだ、という話をしたことがある。
n-buna「無人駅」
2015年の夏にリリースされた「花と水飴、最終電車」に収録されている楽曲。この曲単体も大好きですが、このアルバムを通して大好き。昔夏休みはorに毎年ばあちゃんちに行っていて、その田んぼとかあぜ道みたいな夏の情景が閉じ込められている。アルバム曲で特に好きなのは「もうじき夏が終わるから」「着火、カウントダウン」「夜祭前に」。
OSTER project
代表曲「恋スルVOC@LOID」など
とかげ「スリースターズ」
とかげさんの楽曲の好きなポイントを語り始めるとキリがないのですが、その中でも大きな魅力のひとつがキャッチーなポップスの中にブルージーなフレーズを効果的に織り込むことだと思っています。
この曲はその濃度がめちゃくちゃすごい…。
特にイントロアウトロのピアノのバッキングがめちゃくちゃ気持ちいいところを絶妙に攻めていて、世界にこういう曲が増えたら私が笑顔になるので増えてほしいです。間奏のフュージョンを感じさせるギターソロも、オルガンもホーンもベースも全ての楽器の絡み方に一切の無駄がなく、息つく暇もなく襲いかかってくるのが気持ちよすぎる…上手すぎる、曲を作るのが上手い人の曲は上手い…。
けーえぬP「夏が終わる」
フランス映画を思わせるようなノスタルジックなイントロから一転して始まるアップテンポな楽曲なのですが、これは分断された展開ではなくこのイントロのニュアンスが後半の間奏から大サビの流れにしっかりと活きてくるのがけーえぬさんの手腕ですね…。
本当にちゃんと考えられている、素晴らしい…。
Aメロがメジャーなのに徐々に切なさが立ち込めてゆき、サビでマイナーになるのもめちゃくちゃグッときていいですね…そしてなんと言っても繊細で技巧的かつオシャレなコードワーク! さらに流れるような転調、そして意表を突く突然の変拍子、とにかく上手い、この曲は上手いのだ、曲を作るのが上手い人の曲は上手い…。
Mitchie M「ニュース39」
Mitchieさんといえばやはりミクさんの調整のすごさのイメージがあると思うのですが、私はオケ作りのこだわりのすごさもやべぇものがあると常々思っていて、この楽曲も4度積みのアルペジオのフレーズとか、随所に入るシンセのシーケンスとか、ニュース"らしさ"を音でこれでもかというほど再現している器用さに驚愕しました。
らしさを詰め込みつつも音作りはえげつないくらいカッコいいし、全体としてポップでキャッチーなアイドルソングとしてしっかりと成立させているのが本当に上手い、上手すぎる…曲を作るのが上手い人の曲は上手い…。
なぜかこの曲のサビの進行でいつも涙が出そうになります。