The 4th Ryu☆×kors k|ライバルであり親友、2人の20年が形に

5000曲すべてをリミックスしたい

──アルバムのDISC 2はボーカル曲を集めた1枚になっています。2人のキャリアを語る上で欠かせないボーカリストたちの曲が集められていますね。

左からRyu☆、kors k。

Ryu☆ ボーカル1人につき1曲を基準に選んでいます。中でも印象に残っているのは「THE SHINING POLARIS」かな。

kors k 以前に僕が「THE SHINING POLARIS」をリミックスしたことがあって。今回はThe 4thとして改めてリミックスしています。

Ryu☆ kors kのリミックスが、UK基調のすごくいい出来だったんだよね。それを今回さらに今風にしていて。今クラブでかけてもちゃんとフィットする曲になっています。

kors k よりトランシーな感じになったよね。

Ryu☆ この曲も「5th style」の曲なんですよ。過去の名曲にスポットが当たらないのはもったいないので、これを機に原曲にも触れてほしいですね。

kors k 本音を言えば、「beatmania」に収録されてきた5000曲くらい、全部リミックスしたいんですよ。

──全部ですか。

kors k なんの制約もなく、時間も無限にあるなら全部やりたいですね。ただ現実的にはこういうアルバムに入れることしかできないので、厳選してお届けするしかなくて。

Ryu☆ kors kがお気に入りのボーカル曲はどれ?

kors k どれも思い入れがあるけど、やっぱり「凛として咲く花の如く」かな。この曲のボーカルだけを聴いたとき、姫神っぽいなと思って。

Ryu☆ ああ、確かに! 当時流行ってた「イマージュ」(2000年にリリースされたコンピレーションCD)みたいな?

kors k そうそう。「イマージュ」に入っていた曲とか、喜多郎の「シルクロードのテーマ」とか、当時流行ったイージーリスニングのイメージ。今でいうチルステップの要素を持った曲だと思ったから、フューチャーベースとかけ合わせてみたくて。試しにやってみたらすごく合ったんだよね。

Ryu☆ うん。相性バッチリだった。

kors k 「凛として咲く花の如く」は原曲の耳コピから入ったんですけど、バンドサウンドというのもあって、全部をコピるのが大変で。だから歌に集中して音を追っていったら、厳冬で暮らす民族のイメージがふくらんできたんですよね。アイヌや北欧のケルト系の民族のイメージ。そこにダンスミュージックをかけ合わせてみました。

Ryu☆ ゲーム好きの中にはケルト音楽を好む人が多いんですよね。ちょっと物悲しいサウンドにフューチャーベースを合わせるエモさは発明だと思いました。さすがkors k。

kors k でもこのアイデアの源流には、猫叉Masterさんの「サヨナラ・ヘヴン」のリミックスでRyu☆さんがフューチャーベースを入れていたところにあるんですよ。それを聴いて「なるほど」と思ったのが、今回に生きているので。

Ryu☆ そうなんだ。「サヨナラ・ヘヴン」のフューチャーベースはね、「Electric Daisy Carnival」に一緒に行ったときに聴いたマーティン・ギャリックスの「In The Name Of Love」を参考にしているんですよ。確かその日ラストの曲が「In The Name Of Love」で、花火がバンバン打ち上げられている景色が音と一緒に記憶に残っていて。そのときのエモい気持ちを表現したくて「サヨナラ・ヘヴン」のリミックスをしていたから。

kors k そうだったんだ。

Ryu☆ 今回のアルバムには入っていないけど「サヨナラ・ヘヴン」はお気に入りの曲だから、DJやるときは100%かけてるね(笑)。すごく盛り上がる曲だから。

kors k じゃあその流れで「凛として咲く花の如く」も……。

Ryu☆ もちろんかけるでしょ!

左からRyu☆、kors k。

──いろんなところから影響されて曲を作り、それがまたほかのコンポーザーに影響を与えているんですね。

Ryu☆ 本当に面白いと思います。音ゲーの曲を書くときって、大喜利感があるんですよ。

kors k わかる。

Ryu☆ やっぱり発明しないとバズらないんですよね。ただ発明といっても、0から何か新しいものを作るんじゃなくて、すでにあるもののかけ合わせで新しいものが生まれるんです。「こうきたか!」みたいな気付きはみんなの記憶に残りやすいので、何が新しいか常に探しながら曲を作っていますね。

違うタイプだからこそ面白い

──お二人はこれまでさまざまなコンポーザーとコラボしてきたと思いますが、The 4thならではの要素はどういうところにあると感じていますか?

kors k Ryu☆さんはリスナーに対するケアといいますか、ユーザーを喜ばせるギミックをたくさん盛り込む傾向にあるんですよね。僕はどちらかと言うと自分のエゴを押し付けることが多いので、Ryu☆さんとのコラボだとその2つの要素がいいバランスで保てるような気もしています。

Ryu☆ 自分がそうなれたのは、1回怒られたことがあるからかもしれないな。

kors k え、どうして?

Ryu☆ 曲の作り方じゃなくてライブのやり方なんだけど、昔の自分はDJで曲を流すとき、フィルターをかけまくって、エフェクトもガンガンかけるタイプだったの。でもある日、先輩に「お前は気持ちいいかもしれないけど、お客さんは曲をちゃんと聴きに来てるんだからやりすぎるな」と怒られて。

kors k なるほどね。

Ryu☆ おっしゃる通りで。ちゃんとユーザーに向いてプレイしなきゃいけないなと思ったし、曲作りにおいてもその精神を忘れないようにしてる。

左からRyu☆、kors k。

kors k やっぱり曲から伝わってくるものがあるんですよね。昔Ryu☆さんが「おじいちゃんおばあちゃんが聴いても一発で覚えてダンスできるくらいのキャッチーさを目指す」と言っていて、僕にはないものを持ってるなと思ったんです。僕は難解なものの中にカタルシスを演出するのが好きなタイプなので(笑)。

Ryu☆ 何を人生の喜びにしているかという観点の違いなので、僕は僕で正解だし、kors kはkors kで正解なんだよね。ただそのアプローチが違うところが面白いし、違うからこそコラボをしたときに面白い。

kors k 2人の違う要素を混ぜ合わせていくのがThe 4thでのコラボの醍醐味ですね。予定調和じゃない化学反応が必ず起こるので、いつも楽しみにしています。

弾は全弾装填済み

──お二人はコンポーザーとしての活動だけではなく、DJとしてステージに立つアーティストでもありますが、昨今の情勢でなかなかライブが開催されない状態が続いています。現状を2人はどう考えていますか?

kors k とにかく早くライブがやりたい気持ちでいっぱいですね。20周年というのは僕らにとってすごく大きいもので、ライブができなくなってしまったのはすごくショックだし、年始に考えていたいろんな構想が流れちゃったのも残念で。僕らは打ち込み系のクリエイターであると同時にDJでもあるので、やっぱりライブをして生のリアクションを返してもらうことに喜びを感じるんです。

Ryu☆ 配信ライブを何度かさせていただいたんですが、配信だとDJのやりがいみたいなところがけっこう難しくて……。

kors k わかる。なんか家で練習してる感覚に近いよね。

Ryu☆ 「ASOBINOTES ONLINE FES」というイベントでDJをやったんですけど、新木場STUDIO COASTのプールでお客さんが誰もいない中DJをしたのがすごく寂しくて……。でも配信を観てくれている方はたくさんいるから、気分は上げないといけないんですよ。無人のプールを前に自分を奮い立たせてDJをしてました。

kors k 生のライブとの違いはどうしても痛感してしまうと思う。

Ryu☆ 体感する前は「オンラインでもけっこういけるんじゃないか」と思っていたんですよ。でも実際にやってみると、イベントやお祭りというのはリアルでみんなが集まってワイワイすることに意味があるんだなということに改めて気付かされて。自分はEDPというレーベルを主宰している身でもあるので、どういうライブなら今実現できるか模索中です。

kors k ライブのために弾は全弾装填済みなんですよ。あとはライブが開かれるのを待つだけ。早くみんなに会いたいですね。

左からRyu☆、kors k。