ナタリー PowerPush - テスラは泣かない。

“マグマロックバンド”の爆発力

テスラは泣かない。がメジャー1stアルバム「TESLA doesn’t know how to cry.」をリリースした。今作はミト(クラムボン)全面プロデュースのもと制作され、インディーズ時代に発表された5曲の新録バージョンと、メジャーデビューシングル「Lie to myself」を含む新曲5曲の全10曲が収められた意欲作だ。

今回ナタリーではフロントマンである村上学(Vo, G)にインタビューを実施。バンドの経歴、新作の制作エピソードや、これから始まるツアーに対する意気込みなどを語ってもらった。

取材・文 / 田中和宏 撮影 / 小原啓樹

ピアノを取り入れたきっかけは映画音楽

──ナタリー初登場ということで、バンド結成の経緯からお伺いできますか。

2008年に大学の同じサークルで吉牟田直和(B)と僕を中心に結成しました。メンバーチェンジを経て實吉祐一(Dr)と飯野桃子(Piano, Cho)が加わって、今の4人になって事務所が決まってからはおかげさまでトントンときてますね。

──結成当初からピアノがいたんですね。

村上学(Vo, G)

吉牟田とバンド組もうってなったのが、ピアノのよさに気付いた時期とほぼ同時だったんです。それだったらバンドにピアノも入れたいなというところから始まって、どうやったらピアノがロックサウンドの中で生きて、エモーショナルな感じになるのかっていうのを研究しながら徐々に今のテスラの形になりました。

──ピアノのよさに気付いたきっかけはなんだったんですか?

以前から映画音楽に興味を持ってまして……青山真治監督の「エリ・エリ・レマ・サバクタニ」とか、岩井俊二監督の「リリィ・シュシュのすべて」とか。そういった映画の音楽を聴いていくうちにピアノってすごい楽器だなと感じて、そのときからピアノを取り入れた音楽をやりたいなって思うようになりました。

──そういった映画音楽がテスラのルーツにあるんですか?

いや、でも僕は音楽を始めたきっかけがBLANKEY JET CITYだし、吉牟田はクラブミュージックから入って、飯野はクラムボン、實吉はX JAPANが好き。そんな4人のいろんなルーツが融合してテスラは泣かない。の曲ができてるので、映画音楽にしろ、ほかのバンドの曲にしろ「こういうのをやりたい」っていうお手本から曲を作ったことはないですね。

NUMBER GIRL解散の日

──これまでほとんどの活動を鹿児島でなさってたんですよね。

そうですね、出ても九州。初めて東京に来たのは2011年で、「COUNTDOWN JAPAN」の出場権を賭けたオーディション「RO69JACK 11/12」のライブに出たときですね。

──それまでローカルでずっと活動してたわけですけど、そのオーディションで入賞して初めて九州以外でライブをやったと。

吉牟田直和(B)

もともと入賞したいって意図はなくて、僕らの曲がいろんな人に届けばいいなぐらいの気持ちで応募したんです。でも入賞したことがきっかけで、ひとつの自信を持つことができました。今まで学生しながら鹿児島で自分たちの世界にずっと閉じこもってやってたことは間違ってはいなかったんだなって。

──それはつまり?

「自分たちが楽しければいいや」っていう内向的な音楽を作っていたんですけど、それがちゃんと人にも届くことがわかりました。

──昨年11月のワンマンでメジャーデビューを発表したとき(参照:テスラは泣かない。がEMIから来春メジャーデビュー決定)、NUMBER GIRLについて話す場面がありましたね。

実は「EMIからメジャーデビューどう?」って事務所の人から電話があったとき、「あ、NUMBER GIRLだ」って思った。EMIの印象がよかったのは、おそらくNUMBER GIRLがいたから(笑)。博多から日本全土に影響を与えるバンドが生まれたので、同じ九州の鹿児島から生まれる可能性だってあるなって。偶然NUMBER GIRLが解散した日にあたる11月30日にライブがあったので、ちょっと変な運命を感じてしまって、そのことも言いたいなって(笑)。

ミト(クラムボン)プロデュースで新たな発見

──メジャー1stアルバム「TESLA doesn’t know how to cry.」はどんな仕上がりになりましたか。

今作にはメジャーデビューが決まる前からあった5曲の新録と、それ以降に作った5曲の合計10曲が入ってます。今できること、そしてこれからの僕たちがこういうこともしていくんだぞっていう意志を含んだアルバムになってます。バンドの英語表記をタイトルにしたのは、メジャー1作目からして自分たちの代表作になるんじゃないかという自信があったからです。

──2009年に発表した自主制作の1stミニアルバムもセルフタイトルでしたね。

また歴史を1から始めるっていう意味でもう一度振り返って付けてもいいんじゃないかと思って改めて付けました。

──今回はミトさん(クラムボン)による全面プロデュースになってますが、ミトさんとは前作「Anderson」(2013年9月発売のミニアルバム)のリード曲「アンダーソン」で初めて一緒にやったんですよね。

村上学(Vo, G)

はい。最初は第三者から意見されることに、臆病になってた部分もあったんですけど、今まで自分たちだけだったら知ることもなかったような新しい引き出しが見つかるんだったら意見を聞きたいなと思って。クラムボンってピアノもあるし、ミトさんのステージングにロックスピリッツを感じていたので、こちらからプロデュースをお願いして、引き受けていただきました。

──ミトさんはバンドにどんな引き出しを与えてくれましたか。

ミトさんは“歌詞感”を非常に大切にしてくれる方です。歌詞感っていうのは曲の命みたいなもので、曲に歌詞を付けたときに命が宿る感覚のことです。細かいギミックを教えてもらいつつ、やっぱりすごいなと思いました。

──ギミックって?

「my world is not yours」は昔作った曲で、その当時僕はけっこうギリギリのキーで歌ってたんです。最近はもう少し高い声も出るようになって余裕の感じで歌ってたから、曲に疾走感が出なかった。そこでミトさんに「ちょっと無理な声も出しながら歌ってみようか」って言われてキーを上げたら、歌詞にも出てくる「my world is not yours」っていう言葉にすごい説得力が生まれたんですよね。アレンジでキーを上げるなんて発想がなかったので、衝撃を受けました。

──ミトさんは鹿児島まで行ったんですよね。

僕らが以前から使ってる鹿児島のスタジオに来てくれました。昼間はこうしよう、ああしようっていろいろスタジオで作業して、夜は街に出てお酒を飲むっていうのを3日くらい続けて、すごい楽しかったですね(笑)。

──今作はアナログテープでレコーディングしたそうですが。

これはミトさんからのアイデアですね。鹿児島で僕らの制作風景とか音を出してる様子を見て、4人から出る音に“ライブ感”を1つの解釈として見出してくれました。ライブ感、つまり生々しさをパッケージングするにはどうすればいいかってなったときに出てきたアイデアが、アナログテープやグランドピアノを使うってことだったんです、もちろん全曲一発録りで。デジタルで録った音も聴いたんですけど、アナログのほうが音が太くて、4人の出す音がちゃんとバランスよく聞こえたので感動しました。

メジャー1stアルバム「TESLA doesn't know how to cry.」 / 2014年6月25日発売 / Virgin Records
初回限定盤 [CD+DVD] 3780円 / TYCT-69018
初回限定盤 [CD+DVD] 3780円 / TYCT-69018
通常盤 [CD] 2980円 / TYCT-60036
CD収録曲
  1. Cry Cry Cry
  2. Lie to myself
  3. my world is not yours
  4. fuga
  5. めんどくせえ
  6. Arc
  7. cold girl lost fiction
  8. パルモア
  9. シャドウ
  10. Someday
初回限定盤DVD収録内容

TOUR 2013 Anderson -the first cry@鹿児島・CAPARVO HALL(2013/11/30)

  1. fuga
  2. イムソン
  3. my world is not yours
  4. アンダーソン
  5. cold girl lost fiction
  6. Arc
  7. Shake your hands saying good bye.
テスラは泣かない。「『TESLA doesn't know how to cry.』release tour」
  • 2014年7月10日(木)愛知県 池下CLUB UPSET
    <出演者>テスラは泣かない。 / The Flickers / Hello Sleepwalkers
  • 2014年7月11日(金)大阪府 LIVE HOUSE Pangea
    <出演者>テスラは泣かない。 / The Flickers / Hello Sleepwalkers
  • 2014年7月18日(金)東京都 WWW
    <出演者>テスラは泣かない。(※ワンマンライブ)
テスラは泣かない。「tour 2014 "Tell me how to CRY."」
  • 2014年9月9日(火)新潟県 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
    <出演者>テスラは泣かない。 / ドラマチックアラスカ / Suck a Stew Dry
  • 2014年9月20日(土)宮城県 PARK SQUARE
    <出演者>テスラは泣かない。 / and more
  • 2014年9月22日(月)北海道 COLONY
    <出演者>テスラは泣かない。 / and more
  • 2014年9月27日(土)広島県 CAVE-BE
    <出演者>テスラは泣かない。 / ドラマチックアラスカ / 四星球
  • 2014年10月13日(月・祝)福岡県 Queblick
    <出演者>テスラは泣かない。 / and more
  • 2014年10月14日(火)岡山県 CRAZYMAMA 2nd Room
    <出演者>テスラは泣かない。 / and more
  • 2014年11月1日(土)鹿児島県 CAPARVO HALL
    <出演者>テスラは泣かない。(※ワンマンライブ)
テスラは泣かない。(テスラハナカナイ)

2008年5月に村上学(G, Vo)、吉牟田直和(B)を中心に結成。鹿児島を拠点に活動を続け、2010年4月に實吉祐一(Dr)、2011年10月に飯野桃子(Piano, Cho)が加入し、現在の編成に。同年11月にオーディション「RO69JACK 11/12」で入賞。ギターロックサウンドをベースに、エモーショナルなピアノリフと女性コーラスが加わったエモーショナルな楽曲群と、叫びにも似た歌声や激しいライブパフォーマンスで着実に知名度を上げていく。2013年9月に1stミニアルバム「Anderson」を発表し、11月には初の全国ツアーを開催。このツアーの最終公演で、EMI Recordsよりメジャーデビューすることを発表した。翌2014年2月に東京で初の自主企画を行い、4月にはメジャーデビューシングル「Lie to myself」をリリース。同月に鹿児島・SR HALLで行ったレコ発ライブは満員御礼となった。6月にメジャー1st アルバム「TESLA doesn’t know how to cry.」を発表。