寺島拓篤|ウルトラマンタイガへの熱い思いみなぎる、魂の一作

寺島拓篤の大切な軸

──寺島さんがシンガーとしてデビューしてから今年で丸7年。作詞や歌に関して、ご自身なりの形が見えてきた実感はありますか?

作詞については、ここにきてようやく見えてきた気がしますね。作詞家さんのメソッドではない、声優の僕が書くからこそ生まれる個性が最近はなんとなく形になってきたかなって。具体的に言うと、タイアップする作品に寄り添いつつも、裏テーマのように第2の柱を歌詞の中に作って世界観をより広げること。そういう手法を続けてきたことで、言葉選びの幅も広がってきたし、韻を踏むこともより自然にできるようになってきたと思うんです。だから昔の曲を今振り返ると、むちゃくちゃな書き方してるなと感じたりもする(笑)。それは今の自分とは違う描き方をしてるからというだけの話で、もちろん当時の歌詞にはそのよさがあるとは思うんですけどね。

──タイアップではない曲に関してはどうなんですか?

実はそこも一緒なんですよ。自分の中で好きな漫画やアニメの作品をテーマにして書くことが多かったりするので、常にタイアップ曲を勝手に書いている感覚なんです。自分の好きなものをテーマとして選んでいるからバリエーションは豊富ではあるけど、言ってしまえば二次創作をしているような。皆さんに聴いていただくものとして、クオリティを高めるために全力を尽くすのはもちろんですけど、創作の出発地点としてはそんな感覚なんです。

寺島拓篤

──ありのままの自分を歌詞として表現しようとは思わないですか?

シンガーソングライターのように、自分の思いを伝えたいとはあまり思わないんですよね。ライブでファンのみんなと共有した楽しさを歌詞にしたりとか、そういうことはありますけど、基本的には「僕のありのままを歌詞にしても、そこに価値なんてあるかね?」と思っちゃうタイプなので(笑)。きっとそこも声優という自分にとっての大きな軸が影響しているんだと思うんですよね。声優としての僕が常に大事にしているのは、その作品であり、演じるキャラクターなんですよ。で、その思いは音楽を作るうえでもそれほど変わらないという。だから、僕は常にどこかで歌っている寺島拓篤を演じている、作詞をしている寺島拓篤を演じている部分があるんだと思います。

──7年続けてきてもなお音楽家としての“我”が出てこないのはなぜなんでしょうね。

いつもどこか遠慮がちという性格ゆえ、なんでしょうね(笑)。それを悪い意味として受け取られないようにしようとは思っていますけどね。先輩の鈴村健一さんが「人生、捉え方次第」とおっしゃっていて。僕はその言葉がすごく好きなんですよ。一見マイナスに見えることも、捉え方によってはプラスにもなる。あまり自分を前面に出さない僕の生き方も、それはそれなんだと捉えられたらいいなって。

──うん、寺島さんにとっては、そこがアーティストとしての強い個性になっているところはあると思います。声優としての感性を大事にして、フィクションに徹する表現こそが大きな魅力だなと。

そうだったらいいですね。もちろん、シンガーとしての自分を求めていただけていることに対しての喜びは常に感じてもいますしね。間違いなく僕が生きる糧の1つにはなっていますから。

がんばりすぎないこと

──歌うことに関してはどんな思いで向き合っていますか?

やっぱり上手になりたいという気持ちは、活動を続けるごとに強くなってきてますよね。これまでは声優としての表現を大事にしようと思ってずっとやってきましたけど、そりゃテクニック的にもうまいほうがいいよなと思うようになって。いろんな人の歌を聴いて、「ああ、この人の歌い方って素敵だな」と感じたら、レコーディングでそれを意識して歌ってみることはありますよ。

──どんな歌に惹かれることが多いですか?

寺島拓篤

憧れるのは聴かせる系の歌なんですよ。例えば宮野真守くんの歌声とか。そのすごさが最近特にわかってきたから憧れちゃいますね。あと逆にバッキバキに張りがあって、ハイキーまでカッコよく出せる……邦楽で言うと[ALEXANDROS]みたいな声もいいなと思います。声に関しては生まれ持った声帯の作りとか身体的な部分も影響してくるので、できないものはしょうがないと思うようにはしてるんです。ただ、自分がいいなと思う歌声に関しては、それを自分なりに咀嚼して、できる限り寺島拓篤としての表現に落とし込めるように研究していますね。

──では、歌に関しての今の課題は?

がんばりすぎないこと。僕、絶対がんばっちゃうんですよ。

──「Buddy, steady, go!」もかなり力が込められています。

そうそう(笑)。歌に対して、まだどこか構えているところがあるんでしょうね。それこそ宮野くんなんて、楽屋にいても急に歌い出したりしますから。それくらい常に音楽が彼のそばにあるってことなんだと思う。僕はカラオケなんかも好きじゃないし、そういった生き方をしてこなかったので、どうしてもがんばらなきゃいけない気がするというか。もっと力を抜いて当たり前のように歌えれば、きっと声の出し方も変わるだろうなとは思うんですけど、実際マイクの前に立つと難しいですね。ライブは楽しみながら歌うことができますけど、レコーディングはいまだに苦手(笑)。歌に関しては、ありのままで向き合えるようになるのが今の課題です。

──リラックスして、ありのままに歌えている寺島拓篤を演じてみたらどうですかね?

おー! すごい二重構造ですね(笑)。でもそれがきっかけで、ナチュラルに歌えるようになるかもしれないですもんね。今度、試してみようかな。

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3分の青春パンク曲