ナタリー PowerPush - the telephones
「We Love Telephones!!!」全曲解説
the telephonesがニューアルバム「We Love Telephones!!!」をリリースした。コンセプトの異なる2枚のミニアルバム「A.B.C.D.e.p.」「Oh My Telephones!!! e.p.」を経て制作された本作には、快進撃を続ける彼らの現在の勢いがパッケージされている。
今回ナタリーではアルバムを完成させた彼ら4人に全曲解説インタビューを実施。各楽曲に込めた思いやアルバム制作秘話を語ってもらった。
取材・文/大山卓也 撮影/中西求
攻めの姿勢で作った勝負作
──ニューアルバム「We Love Telephones!!!」素晴らしいですね。名実ともにthe telephonesの代表作と呼べる作品だと思います。
石毛輝(Vo, G, Syn) はい、いいアルバムができたと思ってます。
──かなりバラエティに富んだ内容ですよね。
石毛 原点回帰的な雰囲気もありつつ、インディーズの頃とは違って、成長した上で初期衝動をうまく混ぜられたっていうか。このアルバムのおかげで、今なぜ自分たちがthe telephonesをやっているのかを考え直すことができましたね。
──1stフルアルバム「DANCE FLOOR MONSTERS」はストレートなロックアルバムでしたけど、今回はそれとはまた違う感じで。
石毛 あれは当時のバンドの勢いをそのままぶつけた作品でしたからね。今回は俺らにとっての勝負作だと思ったんで、守りに入って前と同じようなものを作るんじゃなくてとにかく攻めていこうと。守りに入って消えるより、攻めまくって負けたほうが気持ちいいですからね。
──負けてもらっても困るんですけど(笑)。ではここからはアルバム収録曲について、1曲ずつお話を聞かせてください。
I Hate DISCOOOOOOO!!!
──1曲目の「I Hate DISCOOOOOOO!!!」には正直意表をつかれました。かなりヘビーな曲ですよね。
石毛 「A.B.C.D.e.p.」「Oh My Telephones!!! e.p.」の後のアルバムだから、同じような路線だろうって思ってる人たちを驚かせたかったんですよね。なめんなよって感じで(笑)。この曲のコンセプトは、テンポが速くてパンチがあってメタルっぽいもの。ミニアルバムとは真逆の雰囲気の曲を1曲目にすることで、聴いた人が「やられた!」って思ってくれたらいいなって。
──狙いどおりになってると思います。
石毛 いわゆる激しい曲が好きな人には、前の2枚のミニアルバムはちょっと物足りなかったんじゃないかと思うんですよ。そういうお客さんの期待に応えて作った曲がこれです(笑)。BPMは196あるんですけど、でも8ビートだからそんなに速くは聴こえないと思います。
SAITAMA DANCE MIRROR BALLERS!!!
──続く2曲目も意外な展開で。the telephonesのダークサイドというか。
石毛 そうかもしれないですね。
──オープニングの2曲はナカコーさんのプロデュースですけど、ひさびさの共同作業はどうでした?
石毛 俺らがiLLのコラボアルバムに参加したりして、ちょいちょい会ってはいたので、全然ひさしぶりって感じはなかったですね。プライベートでも飲みに行ったりとかしてるんで。
──the telephonesとナカコーさんの共通点ってどこなんでしょうか?
石毛 年代的に近いし、音楽的なキャパが広いから、僕らがやりたいって言ったことをすぐに理解してくれて話が早いし。今回は前作に比べてナカコーさんと僕らの距離が縮まった分、作業がスムーズになったしより濃くなりましたね。
──ところでタイトルの「SAITAMA」っていうのは?
石毛 埼玉愛です(笑)。毎回ライブで「埼玉の北浦和から来ました」って言ってるし、「俺たち浮っついてないぞ」っていうところを見せようかなと。イギリスにはマンチェスターがあって、アメリカにはブルックリンがあるように、日本には北浦和がある。俺は北浦和は日本のマンチェスターだと思ってるんです(笑)。
──自分たちのサウンドに埼玉的な部分を感じたりします?
石毛 んー、東京への反抗心っていうか、やっぱり泥臭いところはあるんじゃないすかね。曲も、東京生まれのミュージシャンが作る曲に比べて、いなたいと思うし。プロデュースをしてくれたナカコーさんも青森出身だし、いい感じの泥臭さが出てると思う。
2010
──3曲目でやっとファンが盛り上がりそうなポップな曲が登場します。この曲は「にせんじゅう」って読むんですか?
石毛 「トゥエンティ・テン」と読むことになる、でしょうね(笑)。これは本当は1stアルバムに入れて、メジャー一発目のタイミングで「we are new generation!」って言いたかったんですけど、遠藤さん(事務所社長)に「まだ早いんじゃないか」って言われて(笑)。2010年に満を持して登場みたいな。
──歌詞にある「we are new generation!」の「we」は誰を指してるんですか?
石毛 僕らはもちろん、リスナーも含めての「we」ですね。僕らだけが「new generation」なんじゃなくて、お客さんもそうなんだよと。リスナーにも「新しいシーンが来た!」っていう感覚を持ってほしいんですよ。
──the telephonesは自分たちだけが前に行ければいいっていうんじゃなく、同じ世代のバンドやファンと一緒にシーンを作っていこうっていう意識が強いですよね。その思いがこの曲によく出ている気がします。
石毛 そうですね。ここんとこ周りのバンドもすごくいい作品を出して、いいシーンを作ってて。The Brixton Academyが去年出したアルバム「Vivid」も良かったし、QUATTROの「Where is the coconut?...Ha?」も、The Mirrazの新しいアルバムもすごく良かった。だから、この「we are new generation!」っていうフレーズは満を持して俺らが言うべきだと思って。音楽の歴史上、ひとつのバンドだけでシーンができたっていうのは見たことない。周りと一緒に作っていかなきゃと常々思ってるし。で、こんな恥ずかしい歌詞が書けるのは俺しかいないってことで作りました(笑)。
──同世代のバンドとはプライベートでの交流もあるんですか?
石毛 ありますよ。でも馴れ合っているわけではなくていいライバルというか。作品について手厳しい意見を言われることもあったりするし。お互い全部を肯定するわけではないから、その分張り合いがありますね。
CD収録曲
the telephones(てれふぉんず)
2005年に埼玉県浦和にて結成されたロックバンド。メンバーは石毛輝(Vo, G, Syn)、岡本伸明(Syn, Cho)、長島涼平(B, Cho)、松本誠治(Dr)の4人。ポストパンク/ニューウェイブにも通じるダンスロックサウンドで各地のフェスを席巻しつつ、インディーズでの音源リリースを経て、2009年にはEMIミュージック・ジャパンと契約。同年7月にメジャー移籍第1弾となるアルバム「DANCE FLOOR MONSTERS」をリリース。年末の「COUNTDOWN JAPAN 09/10」では、GALAXY STAGEのカウントダウンを担当した。2010年春にはコンセプトの異なるミニアルバム2枚を連続リリースし、8月にはフルアルバム「We Love Telephones!!!」を発表。ハイテンションなライブパフォーマンスに定評がある。