ナタリー PowerPush - _ _ _ _*

気鋭バンド×スタッフが語る バンドとライブハウスの関係

Part 2:佐藤学(四谷OUTBREAKブッキングマネージャー) インタビュー

オープン2カ月で「あっ、潰れるな。無理だな」

──四谷OUTBREAKがオープンして、丸6年経ちましたね。

はい。でも僕、オープンして2カ月で「あっ、潰れるな。無理だな」と思いましたからね。

──えっ、2カ月で?

インタビュー風景

そう。四谷OUTBREAKのオープン時点で、照明やPAは元々ライブハウスでやってた人間だったんですけど、ブッキングや制作にライブハウスで働いた経験がある奴が1人もいなかったんです。ただライブが好きで、自分たちでイベントを企画したことがあるくらいの奴ばかりで、僕もその中の1人でした。最初の1カ月はオープニングパーティみたいな感じでお客さんが来てくれるんですけど、2カ月目以降からお客も出演バンドも全然いなくて(笑)。1カ月のうち半分ぐらいしか営業できなかったんじゃないかな。実は僕、最初の1年半ぐらいは店に住んでましたからね。当時、住む場所がなかったのもあるんですけど(笑)、「ライブハウスで暮らさないと、こりゃ無理だ」と。

──どうしてそう思ったんですか?

まず、四谷OUTBREAKにいつ行っても誰かしら人がいたら面白いなと思って(笑)。深夜2時、3時にライブの打ち上げが終わったバンドが飲みに来たりするわけですよ。で、一緒に飲んで、朝になったらみんな帰って、僕はそのまま寝て、起きるとまた別のバンドが来てるみたいな(笑)。そういう生活を1年半ぐらい続けてたら、いろんなバンドがうちに集まるようになったんですね。

──「四谷OUTBREAKに行けば誰かしら集まってるぞ」と。

新宿からもそう遠くないですし。まあ今思えば完全に効率悪いんですけどね(笑)。

「なんでもあり」を勝手に「四谷らしい」カラーに

──四谷ってあまりライブハウスの街というイメージはないですよね。

そうですね。ライブハウスといえばFOURVALLEYぐらいで、ロック不毛の地でしたから。バリバリのオフィス街ですからね。遊ぶところはないし、夜は早いし、土日は人がいないし。

──確かに。

ライブハウスを営業するには条件が最悪で。しかも、うちがオープンしてから1~2年でFOURVALLEYがなくなっちゃうし(笑)。でも四谷で良かったなと思うこともあって。例えば、吉祥寺や高円寺辺りにいそうな危ない人がいない。それと、ちょっとホストっぽい男が女の子をキャーキャー言わすみたいな、そういうバンドがいないっていうのも、僕にとっては気持ちが楽だった。これが渋谷とか高円寺とか下北沢とかだったら、すぐ辞めてたと思いますよ。

──なるほど。

下北沢だったらギターロック、高円寺だったらパンクみたいなカラーってありますよね。四谷OUTBREAKも始めた頃はある程度ライブハウスの色を決めたほうがいいのかなって考えたことがあったけど、一極集中にしたら店が潰れるなと思って逆になんでもやろうと。その「なんでもあり」な部分を勝手に「四谷らしい」カラーにしてしまおうと決めたんです。それからは、すごくやりやすかったですね。

ライブハウス=「バンド活動における基地」

──ちなみに四谷OUTBREAKの最大キャパシティってどれくらいですか?

最大で230人です。

──ここ1年くらいの集客は、平均してどれくらいですか?

もう、キッツイですよ。多いときで100人を超えたりするんですけど、日によっては平日1桁とかありますからね。5バンド出演のイベントを2カ月前にブッキングしても、各バンドがお客を1人ずつしか呼べないなんてこともある。ちょっと前にライブハウスのノルマ制についてTwitter上で議論が盛り上がってトークイベントもやったんですけど、僕はライブハウスにノルマは必要だと思ってます。ノルマを払いたくないバンドはノルマのないライブハウスを選べばいいし、ノルマを払わずにライブがやれる方法もある。自分でノルマのあるライブハウスを選んでおいてノルマ云々を言うのはおかしいんじゃないかって思うんです。

──ちゃんと選択肢はあるんだと。

そうです。で、OUTBREAKでは、ちょっと有名なバンドとかノルマが取れないバンドにはギャラを出さない代わりに動員に応じてチャージバックを払ってるんですけど、そういうバンドほど動員が1桁。そのくせ自分たち主導のイベントやワンマンではガッツリお客が入ってるんです。要するに、プロモーションと割り切ってほかのイベントライブに出るけど、ちゃんと告知しないという。そのバンドに発生しなかったノルマの分って、その日出演する若手バンドがノルマを払ってたりするわけですよ。そういう構図を見ると、なんかモヤモヤした気持ちになりますね。

──そういうこともあるんですね……。

まあバンドによってですけど。結局そのノルマを払い続けてがんばってるバンドマンに対して、ちゃんとフォローしてるライブハウスって少ないと思うんです。ライブをやっておしまい。僕はそういうのが嫌で、ライブハウスが単にライブをやる場所じゃなくて、バンド活動における基地になったらいいなと思ってるんです。

バンドがライブハウスをあまり信用してない

──基地ですか。具体的にはどういったことでしょう?

例えばチラシ制作に困ったら、ライブハウスのスタッフが「じゃあ俺、空いた時間でちょっとやったろか」って。アー写を撮るときに「じゃあうちの店を使いなよ。カメラマンは俺の知り合いで」とか、デモを録りたいときに「お前の予算だったらあのスタジオがいい。コストかけられないんだったら俺が録ったろか」とか、そういう意味ですべてのバンド活動の拠点にするべきだと思うんですよね。

──協力は惜しまないと。

はい。でも残念なのが、そういうことを相談してくれるバンドがあまりいないんですよ。今の子は人を頼るのがへたというか、がっつかない。ライブの感想も求められないし、リハで思ったような音が出せなくてもエンジニアに訊いたりしない。もっとがっつり来れば、こっちもがっつり返すのにな。だから結局こっちから行くわけですけど、そこまでやると労力がハンパないんです。

──なるほど。

あとは……これはライブハウスも悪いんですけど、バンドがライブハウスをあまり信用してないんですよね。例えば、バンドが結成した当初からうちの企画ライブに出演してもらってると、1年経つとバンド同士の横のつながりがある程度できてくるんです。そうすると、自分たちのイベントや友達バンドのイベントには出てライブハウスの企画ライブに出てくれなくなる。ある程度集客の見込みがあるライブにばかり出るようになるんです。それは決して悪いことじゃないけど、それだけじゃダメだと思うんですよ。よその店は知らないですけど、ライブハウスの企画ライブっていろんな収穫があると思うんですよね。だけどみんな、早々に諦めちゃう。それは冷え切った企画ライブを作ってるライブハウスが悪いんですけど、僕らはもっとバンドに信用されたいって思ってます。そういう冷え切ったブッキングを続けていたら、この先ライブハウスはどんどん潰れていくと思いますよ。

限定シングル「お宅の娘さん、僕がいただきます」 / 2011年7月27日発売 / 525円(税込) / OUTBREAK RECORDS / HOR-1043

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CD収録曲
  1. お宅の娘さん、僕がいただきます
  2. おでかけ

ニューアルバム「Over Under Sky to Hell'en」 / 2011年10月5日発売 / 1575円(税込)/ OUTBREAK RECORDS / HOR-1046

  • ニューアルバム「Over Under Sky to Hell'en」
CD収録曲
  1. ゾンビパレード
  2. 解放区
  3. オメガ・カマキライザー
  4. リタリン
  5. お宅の娘さん、僕がいただきます
  6. _ _ _ _*のテーマ
  7. Spiritual Number
_ _ _ _*(テイヘン)&四谷OUTBREAK共催イベント
  • 2011年8月21日(日)
    東京都 四谷OUTBREAK
_ _ _ _*(テイヘン)レコ発ライブ
  • 2011年10月1日(土)
    東京都 四谷OUTBREAK
_ _ _ _*(テイヘン)ライブスケジュール
  • 2011年8月20日(土)
    栃木県 足利SOUTH BBC
  • 2011年8月24日(水)
    東京都 新宿WILD SIDE TOKYO
  • 2011年8月25日(木)
    東京都 新宿LUSH
  • 2011年8月28日(日)
    群馬県 桐生VAROCK
  • 2011年9月10日(土)
    大阪府 天王寺FIRE LOOP
_ _ _ _*(テイヘン)

candy(Vo)、ちんぱん(Dr)、マー君(B)、ジンプル(G)からなるロックバンド。2004年に前身バンドが結成され、都内を中心にライブ活動を行う。2006年にバンド名を現在の「_ _ _ _*」に改名。これを機に活動を活発化させ、CDや映像作品を自主制作にて発表する。candyが生み出す歌詞世界とボーカル、一筋縄ではいかないアグレッシブなサウンドが魅力。2011年から現体制となり、同年7月に初の全国流通シングル「お宅の娘さん、僕がいただきます」を500枚限定でリリースする。