ナタリー PowerPush - _ _ _ _*
気鋭バンド×スタッフが語る バンドとライブハウスの関係
都内を中心に活動を展開する男女4人組バンド、_ _ _ _*(テイヘン)。そのユニークなバンド名と唯一無二のアバンギャルドなサウンドで、耳の早いロックファンを中心に知名度を高めている。そんな彼らがこのたび、初の全国流通音源となるシングル「お宅の娘さん、僕がいただきます」をリリースした。
今回ナタリーではバンドメンバーのcandy(Vo)とちんぱん(Dr)にインタビューを実施。バンドの成り立ちからシングルについて、さらには現在のライブハウスシーンについてまで、幅広い話題について訊いた。
さらに、彼らがバンド活動を本格化させた頃から出演し続けているライブハウス、四谷OUTBREAKの佐藤学ブッキングマネージャーにもインタビューを敢行。自社レーベル「OUTBREAK RECORDS」から_ _ _ _*が作品をリリースすることについてや、現在のライブハウスが抱える問題点などをたっぷり語ってもらった。
取材・文/西廣智一
Part 1:_ _ _ _*(テイヘン) インタビュー
最初のライブハウスで「何かおかしいぞ?」
──まず、このバンドを始めたきっかけを教えてください。
ちんぱん(Dr) 最初は、僕とcandyが、2004年頃から今と別のバンドを一緒にやっていたんです。で、僕のバイト先にジンプル(G)がいて、聞いたら音響の専門学校を出てるっていうし、少し話してみたらギターも持ってるっていうんで、「じゃあちょっとスタジオに来たら?」って言ったのがきっかけですね。
candy(Vo) ジンプルは私たちが練習してるのをスタジオに観に来てたんですけど、「俺もやりたーい」って言い出して。冗談で「いいよ、次スタジオに入るときにギター持ってきなよ」って言ったら、ちんぱんがたまたまスタジオを休んだときにギターを持ってきたんです。
ちんぱん だから、僕は次にスタジオに行くまで、ジンプルが加入したのを知らなかったんです。
candy 次の練習のとき、ちんぱんが「あれ、なんでこいついんの?」って言ったらジンプルが「俺もう入ったから」って勝手に言って。そういう、すごくテキトーな感じで始まったんです。
──四谷OUTBREAKとは、そもそもどうやって出会ったんですか?
ちんぱん 都内でライブ活動を始めたんですけど、最初のライブでお客さんが41人入ってチケットノルマをクリアしたのに、バックがゼロだったんです。僕らもバカなんでそのときはわからなかったんですけど、2回、3回とそれを繰り返してるうちに「何かおかしいぞ?」とさすがに思って。
──ちょっと舐められてたというか。
ちんぱん そうです。結局半年経っても何も変わらなくて、さすがにカチンときてそのライブハウスに出ないことを決めたんです。それからしばらくして、ある企画ライブで後の四谷OUTBREAKの店長・秋元さんがやってるバンドと一緒になって。そこで僕らのライブを観て気に入ってもらえて、あとで「今度四谷に新しいライブハウスがオープンするから」ってライブに誘われたんですよ。
──それがきっかけで、初めて四谷OUTBREAKでライブをやったんですね。
ちんぱん はい。2005年の4月頃の話です。
一度たりとも表社会に認められていない
──四谷OUTBREAKのスタッフさんとは、どのように親しくなっていったんですか?
candy 最初のライブ後の打ち上げで、スタッフさんから「すっごく良かったよ!」って言われていきなり握手を求められて。そこで初めて、ライブハウスにもこういう人がいるとわかって、ちょっと舞い上がっちゃたんです(笑)。
ちんぱん 店長さんが実はすごいドラマーだったり、ほかのスタッフさんもそれぞれバンドをガンガンやってきたバックボーンがあって、とにかく精鋭揃い。僕らはそこでやっと、ちゃんと音楽的な話ができるライブハウスに出会えたんです。そこからは、スタッフさんにあれこれ訊きまくりましたね。
──具体的にはどんなことを?
ちんぱん 音響面だったりパフォーマンス的なことだったり、訊いたらちゃんと答えてくれる人たちばかりで。だから、僕らだけじゃなくてあの頃ちゃんとスタッフさんにアドバイスを求めたバンドは、その後みんな伸びていったんちゃいます? 何も訊かなかったバンドはやっぱり消えていったり、よそのライブハウスに移ったりしてましたから。
──四谷OUTBREAKに出演するようになってから既に6年経ちました。ここまでバンドを続けてこられた原動力ってなんですかね?
ちんぱん ライブハウスなどの地下室以外で、一度たりともいわゆる表社会に認められていないからじゃないですかね。その悔しいって思いが強いです。
「ライブを観たら余計にわかんなくなった」
──そして今回、初の全国流通音源をリリースしたわけですが。
ちんぱん 今回は録音エンジニアをウネハラフミアキさん(凛として時雨などのエンジニア)が担当してくださったんです。「君たちは1テイク、2テイクでバーンと録った勢いある音を出したほうがいいよ」と何度も強く言ってくれて、実際の音源もそういう感じに仕上がっていると思います。
candy 今までもライブ会場で自主音源を販売してたんですけど、聴いたお客さんからよく「音源もいいんだけど、ライブのほうが全然いい」って言われて。うれしい反面、それってどうなんだろうって思ってたんです。
──バンドのスタンスにもよるんでしょうけど、CDってライブへの入り口として作ってる人もいると思うんですよ。そういう意味では、今回のCDは聴くとライブが観たくなる作品だと思いました。
ちんぱん ホントですか。たぶん爆音でCDをかけると、わりとライブでやってる音に近い感じだと思うんですよ。
candy ウネハラさんは前回のCDのときも一緒にお仕事したんですけど、今回は前より_ _ _ _*のことを理解してくれていたんだと思う。
──これを聴いたら、10月に発売されるアルバム「Over Under Sky to Hell'en」も楽しみになりました。
ちんぱん そうですね。実はシングルの曲は震災直後にレコーディングしたんです。あのときはエンジニアさんも被災して、物流的にも厳しい状況だったのでやるかどうか本当に迷ったんですけど、意地になって強引にレコーディングしたところがありますね。で、アルバムのほうは震災からちょっと落ち着いた時期に制作を始めたんで、シングルとはまた違う感じになるかなと。あれを世の中の人たちが聴いてどう思うのかなってすごく気になりますね。普通のトーンで歌ってないし、構成もちょっとおかしいし。でも、僕らはこれしかできないんで、どう思われてもいいって気持ちもあるんですけど、それでも聴いてはもらいたいですね(笑)。
candy 全国流通という形で作品を出すのが初めてだし、今までのCDって曲数が最高4曲だったから、どう感じてもらえるのか気になります。
──シングルやアルバムを聴いた人がライブを一度観てみたいと思うような作品に仕上がっていると思いますよ。
ちんぱん うれしいですね。観に来てもらわないと始まらないですから。
candy でも、以前「音源を聴いて気になったからライブに来たけど、ライブを観たら余計にわかんなくなった」って言われたことあるんでよ。そういう人ほど、もう1回確認してみようかなと思って2回、3回と繰り返し来てくれるんですよね。
お宅の娘さん、僕がいただきます/ _ _ _ _*(テイヘン)
_ _ _ _*(テイヘン)&四谷OUTBREAK共催イベント
- 2011年8月21日(日)
東京都 四谷OUTBREAK
_ _ _ _*(テイヘン)レコ発ライブ
- 2011年10月1日(土)
東京都 四谷OUTBREAK
_ _ _ _*(テイヘン)ライブスケジュール
- 2011年8月20日(土)
栃木県 足利SOUTH BBC - 2011年8月24日(水)
東京都 新宿WILD SIDE TOKYO - 2011年8月25日(木)
東京都 新宿LUSH - 2011年8月28日(日)
群馬県 桐生VAROCK - 2011年9月10日(土)
大阪府 天王寺FIRE LOOP
_ _ _ _*(テイヘン)
candy(Vo)、ちんぱん(Dr)、マー君(B)、ジンプル(G)からなるロックバンド。2004年に前身バンドが結成され、都内を中心にライブ活動を行う。2006年にバンド名を現在の「_ _ _ _*」に改名。これを機に活動を活発化させ、CDや映像作品を自主制作にて発表する。candyが生み出す歌詞世界とボーカル、一筋縄ではいかないアグレッシブなサウンドが魅力。2011年から現体制となり、同年7月に初の全国流通シングル「お宅の娘さん、僕がいただきます」を500枚限定でリリースする。