音楽ナタリー Power Push - TeddyLoid×tofubeats対談
平成生まれのトラックメーカー、交わる時間軸
鉛筆を持ってなかった
──お2人が共同でリミックスする楽曲を「天手力男」にしたのは?
TeddyLoid Skypeミーティングで決めました。
tofubeats 候補曲を見てわりと即決で「アメタヂだろ」ってなりましたね。
──それはなぜですか?
tofubeats 「天手力男」が一番、2人でやって面白そうだなっていうイメージが湧いたんですよね。
TeddyLoid うんうん。ワードも多いし、メロディもキャッチーだし。
──キャッチーとはいえ、オリジナルはなかなかの奇曲ですよね。
tofubeats 奇曲ですよね。展開は複雑だし、中東っぽいノリもあって、ライブで観てても「なんなんだこれは」みたいな。
──リミックス制作の前にYouTubeで公開された「TeddyLoid×tofubeats 10minutes remix Battle」もすごい企画でした。「天手力男」のサビをそれぞれ制限時間10分でリミックスするという。
TeddyLoid トーフくんがokadadaくんと一緒にやってるリミックスバトルが面白かったんで、僕もやりたいなと思ってたんですよ。
──同じ素材を使って、わずか10分なのにそれぞれの特色がモロに出ていて。トーフさんがコード当てただけで、あの中東風メロディがいきなりtofubeatsワールドに変わるのが面白かったし、あのコード感は本番にも反映されていますよね。
TeddyLoid 聴いた瞬間に感動しましたね。「ヤベえ! tofubeats節だ!」って。
tofubeats あれしかできないんですよ、ホント。「ヤベえ、またメジャー7th使いすぎちゃった」と思って調整しましたけど、むしろシンプルなコードのほうが時間がかかる。
──一方で画面左側のTeddyさんも、イントロ一発でもう完全にTeddyLoidワールドができあがっていましたよね。あと驚いたのは、作業風景から伝わる手際の早さ。
tofubeats おかしいですよね。そもそもあの企画って、海外のトラックメーカーが10分間で作って“できない”のを楽しむものなんですよ。でもTeddyさんは10分で完璧に仕上げてて(笑)。キャリアとプロとしての仕上がりの違いというか、使いたい音にすぐアサインできる環境とか、そういう細かい差をすげー感じて「ちょっと俺もソフト整理しないとな」と思いました(笑)。
──同じABLETON Liveを使った音楽制作でも、ソフトの管理法やちょっとした手癖で全然違いますよね。
tofubeats はい。「天手力男」のリミックスではまずTeddyさんが叩き台を送ってくれたんですけど、Teddyさんはオーディオファイルで並べてるんですよ。僕はオーディオだと2ティックずらすとか細かいことができないんで、全部MIDIデータに入れ替えて戻すとか。
TeddyLoid やりとりはすごく面白かったです。BPMがガラッと変わって戻ってきたり(笑)。僕のオーディオファイルをチョップしてサンプラーに組み込んでもらって、ビートの1粒まですごくこだわってくれました。
──手癖の違いで作業がやりにくくなることはなかった?
tofubeats それはなかったですね。お互いさんざんLiveを使い倒しているんで、やり方が違っても、ここをこうしたいんだなというのはすぐわかる。
TeddyLoid 並んでるデータを見ればよくわかるんですけど、トーフくんは使い方がめちゃめちゃうまいですね。僕は主に外部のソフトシンセを使ってるんですけど、トーフくんはLive付属の音源をけっこう使っていて。
tofubeats それは苦労時代が長くてソフトシンセが買えなかった名残ですね(笑)。すごく恥ずかしかったのが、DTMやってる人ならみんな持ってるソフトシンセをTeddyさんが使っていて、僕のほうでなぜか開けないからなんでだろうなと思って調べたら体験版だったんですよ(笑)。
TeddyLoid アハハハハハハハ(笑)。EDM界隈では持ってない人はいない、鉛筆みたいなソフトシンセなんですよ。
tofubeats 鉛筆を持ってなかった。もう1個の、ボールペンぐらいのやつは持ってたんですけど(笑)。
普通のリミックスで使う脳ミソとは真逆
──完成したアルバム「Re:MOMOIRO CLOVER Z」を聴いて、トーフさんはどんな感想を持ちましたか?
tofubeats まずはとにかく、よくこれだけの曲数をリミックスしたなあと(笑)。普通あれだけの曲数をリミックスしろと言われたら絶望的な気分になりますよ。4曲5曲作ったところで「ああ、もう俺の手札はねえよ」って。僕は去年、森高千里さんの楽曲のリアレンジをやったときに(参照:森高千里×tofubeatsコラボがアルバム化「森高豆腐」)、6曲目ぐらいで「ああっ、……あああっ!」「もう海に行こう!」みたいになって(笑)。でもTeddyさんはこの曲数を、しっかりグラデーションで自分の持ち味を出しながら多角的にやっていて。
TeddyLoid トーフくんにそう言われるとうれしいなあ。途中からはもう、曲と1対1で向き合ってましたね。もちろん全曲ダブステップ、EDMみたいなアルバムにはしたくなかったし、自分の中にある音楽のマインドをすべて込めたいという気持ちがあって。
──確かに今までのTeddyLoid作品にはなかったエッセンスが、奇しくもももクロのリミックスという形で表現されている箇所がちらほらとありますね。
tofubeats それこそお父さんも納得のロックンロールな要素も。
TeddyLoid アハハハ(笑)。ですよね。ちょっとは認めてもらえるかもしれない(笑)。
tofubeats リミックスって普通は逆で、いろんなアーティストが依頼してTeddyLoidというスタンプを押して返す作業なんですよ。普通のリミックスで使う脳ミソとは真逆なんで、ホント大変だったんじゃないかと思いますね。僕なんて手札3つぐらいなんですよ。1人のアーティストから3つ以上依頼が来るとすぐ手札がなくなっちゃう。
──かつこのアルバムは、ももクロのこと、モノノフのことも大事にしていて。これだけさまざまな手札で大胆な変換を施しているにもかかわらず、歌モノとしての機能が生きていますよね。
TeddyLoid ももクロのライブに参加させてもらってよくわかりましたけど、ももクロとモノノフさんの一体感は本当にすごいんですよ。1曲1曲の大切さがよくわかった。だからより連帯感が底上げできるような、一段と深くももクロの音楽を楽しめる作品にしたいという気持ちが強かったですね。
続編の機会があったらぜひ
tofubeats このリミックスがライブで聴けたりしても面白いですよね。
TeddyLoid このリミックスがさらにリミックスされちゃったりしてもいいと思う(笑)。
tofubeats それをTeddyさんが自分でまたやるんですね(笑)。
TeddyLoid ハハハハハ(笑)。でもね、リミックスしたい曲はまだいっぱいあるんですよ。アイデアはいっぱいあるので、続編の機会があったらぜひやってみたいですね。
──今作に入っていない候補曲もいっぱいありますし、なんだったら同じ曲を別ベクトルでリミックスするのもアリだから、モチベーションが続く限り永遠に続編が作れるという(笑)。あと今回のようないいコラボレーションの成功例もあるので。
tofubeats そうそう。Teddyさんがホストで、いろんなリミキサーと組んでみるのも面白いかもしれない。なんならTeddyさんの親父さんがギターを弾いて……。
TeddyLoid あーっ!(笑)
──「まだロカビリーやんないのか」の落とし前としては最高ですよね(笑)。
tofubeats 親父さんのギターソロをメインにして、ロカビリーアレンジでやる。最高じゃないですか。
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- TeddyLoid リミックスアルバム「Re:MOMOIRO CLOVER Z」 / 2015年9月16日発売 / [CD2枚組] 3240円 / EVIL LINE RECORDS / KICS-3287~8
- TeddyLoid リミックスアルバム「Re:MOMOIRO CLOVER Z」
DISC 1
- Link Link
- DNA狂詩曲
- CONTRADICTION
- 全力少女
- 天手力男(TeddyLoid & tofubeats Remix)
- 黒い週末
- 仮想ディストピア
- Chai Maxx ZERO
- GOUNN
- BIONIC CHERRY
- 夢の浮世に咲いてみな
- 青春賦
- 『Z』の誓い
- Neo STARGATE
DISC 2
- Re:MOMOCLO NONSTOP MIX
- MOMOCLO DJ REMIX Vol.1
- MOMOCLO DJ REMIX Vol.2
- tofubeats ニューアルバム「POSITIVE」 / 2015年9月16日発売 / unBORDE
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3888円 / WPZL-31099
- 通常盤 [CD] / 3240円 / WPCL-12238
CD収録曲
- DANCE&DANCE
- POSITIVE feat. Dream Ami
- T.D.M. feat. okadada
- Too Many Girls feat. KREVA
- STAKEHOLDER
- Throw your laptop on the fire feat. 小室哲哉
- I know you
- Without U feat. Skylar Spence
- すてきなメゾン feat. 玉城ティナ
- くりかえしのMUSIC feat. 岸田繁(くるり)
- 閑話休題
- 別の人間 feat. 中納良恵(EGO-WRAPPIN')
- I Believe In You
初回限定盤DVD収録内容
- 水星 feat. オノマトペ大臣
- No.1 feat. G.RINA
- Don't stop the music feat. 森高千里
- おしえて検索 feat. の子(神聖かまってちゃん)
- ディスコの神様 feat. 藤井隆
- Her Favorite & 衣替え
- Come On Honey!feat. 新井ひとみ(東京女子流)
- poolside feat. PES(RIP SLYME)
- 20140803
- 衣替え feat. BONNIE PINK
- STAKEHOLDER
- 朝が来るまで終わることのないダンスを
TeddyLoid(テディロイド)
1989年8月23日生まれの男性アーティスト / 音楽プロデューサー / DJ。18歳でMIYAVIのメインDJ / サウンドプロデューサーとして13カ国を巡るワールドツアーに同行した。2010年には☆Taku Takahashi(block.fm / m-flo)とともにテレビアニメ「Panty & Stocking with Garterbelt」のサウンドトラックを担当。翌2011年には柴咲コウ、DECO*27とともにgalaxias!を結成し、アルバムを発表した。またSOUL'd OUTのツアーではスクラッチDJとしてのテクニックも披露している。2013年にはももいろクローバーZの楽曲「Neo STARGATE」でアレンジを担当したほか、同年4月の「ももいろクローバーZ 春の一大事 2013 西武ドーム大会」ではDJとしてもライブに参加。さらにMEGやマドモアゼル・ユリア、TEMPURA KIDZ、Yun*chi、the GazettE、SuGなどさまざまなジャンルのアーティストの楽曲プロデュースやアレンジ、リミックスを手がけている。2013年8月からは自身のオフィシャルサイトで、「BLACK MOON RISING」と銘打った連作を発表。2014年7月にキングレコードの新レーベル「EVIL LINE RECORDS」とのアーティスト契約を発表し、同年9月に初のオリジナルアルバム「BLACK MOON RISING」を発表した。2015年9月、ももいろクローバーZ初の公式リミックス作品となるアルバム「Re:MOMOIRO CLOVER Z」をリリース。
- TeddyLoid | BLACK MOON RISING
- TeddyLoid(@TeddyLoidSpace) | Twitter
- TeddyLoid | Facebook
- TeddyLoidの記事まとめ
tofubeats(トーフビーツ)
1990年11月26日生まれ。神戸在住のトラックメーカー / DJ。中学時代からWeb上で自作の音源を発表し、高校時代には自作のCD-R作品をリリースする。2010年3月発表の「Big Shout It Out」、2012年6月発表の「水星 feat. オノマトペ大臣」がそれぞれiTunes Storeチャートを中心に話題を集める。2013年4月に初のオリジナルCDアルバム「lost decade」をリリース。同年11月には森高千里やの子(神聖かまってちゃん)をボーカリストに起用したミニアルバム「Don't Stop The Music」でワーナーミュージック・ジャパン内のレーベル・unBORDEからメジャーデビューを果たし、2014年10月に1stフルアルバム「First Album」を発表した。2015年9月に2ndフルアルバム「POSITIVE」をリリース。