自由な発想で楽しみ楽しませる、KREVAの配信ライブ論
──ではここからは無料配信ライブ「Technics presents “Connect” Online Live Season2」の話を。この3年ほどのコロナ禍で配信ライブは大きく進化しましたけど、KREVAさんはその始まりの頃、2020年2月の「敵がいない国」ホールツアーが急遽中止になったのを受けて、2日後に東京公演を行うはずだったLINE CUBE SHIBUYAで無観客・無料生配信のライブを行いました。同年6月の配信ライブではBillboard Live TOKYOの厨房から登場したり、打ち上げの様子を公開したりと、皆が3年かけて模索した「配信だからできること」をいち早く実践に移していた印象です。
確かに、早かったのは間違いないと思います。
──2020年9月の“クレバの日”ライブもオンラインでしたが、無人の広いアリーナ空間を使って「ここまで遊べるんだよ?」という、状況を逆手に取ったような内容で。そもそも「逆手にとる」が大好物な人だよなKREVAさんは、と。
(笑)。何かが起きたときのリアクションは得意なほうですから、こういうことが起きたらこう返すと。逆手になりがちっていうのはありますが、順手で勝てるなら順手で勝ちたいんですよ(笑)。そもそも最初の配信ライブをやることになったのは……さあホールツアーが始まるぞという、ゲネプロの日に急遽ライブの中止が決まったんです。ステージセットも組んでいて、衣装も着てメンバーもそろって、本番さながらの準備をしている最中に政府が記者会見をやると。それで中止にしようとすぐに決めたものの、もう準備は万全にできていたので、それだったらライブを見せちゃおうよと決めたのが始まりですね。
──本当に突発的なものだったんですね。
そこから何度か配信をやったけど、まさに「逆手にとる」ような、オンラインならではの見せ方をしなくちゃいけないというのは、最初の頃からスタッフにはしっかりと伝えてましたね。最初の配信ライブでは俺が客席に座っているところから始めたりとか。カメラのアングルも、普通にお客さんが入っている状態だとありえないようなことができる。客席にドローンを飛ばそうが何をしようが自由だから、頭を柔らかくして「できることはなんでもやりましょう」と。
──Billboard Liveの裏動線が見られるなんてたまらないですし(笑)、ファンは決して入り込めない打ち上げ現場に潜入した感覚が味わえるのもすごいサービスですよね。ファンサがすごい。
昔からライブの打ち上げでは毎回、その日のライブ映像を見返してたんです。3時間ライブをやったとしたら、その日の打ち上げで3時間分きっちり全部。配信だったらこれも見せたほうがいいよねって(笑)。
──KREVAさん自身がその状況を楽しんでいるのも伝わるし、毎回配信ならではの有効打をバシッと決めていますよね。
自分たち自身が楽しまないといけないと思ったし、シンプルにライブの映像を見せるだけだと「ああ、そこにいたかったな」という気持ちになるだけなんじゃないかと思うんです。
──とはいえ、ライブと言えばお客さんの生のリアクションがあってこそという部分もあったはずで、そのあたりの寂しさは感じませんでしたか?
それはもちろんありましたけど、それ以上に「どうやったら楽しんでもらえるか」を考えることが心の大部分を占めていましたね。
リアルの現場が戻ってきた今、配信ライブで
──今年3月には政府から「コンサート開催ガイドライン」緩和の発表があり、ライブ会場でも声援を上げることを可能とする公演も増えてきましたが、なんだったらKREVAさんには今後も有観客とオンラインの両方を走らせてもらいたいくらいで。
そうですね(笑)。今回の「Connect」もですけど、オンラインライブならではの“場所”の面白さはあると思うんです。北欧の国立公園で、広大な大自然の中でハウスDJがプレイしてたりとか。ライブハウスやホールじゃないところでライブがやれる配信ライブの可能性は、これからも広げていいと思います。
──今、このタイミングでオンラインライブをやるうえでの意気込みや期待する部分を教えてもらえますか?
配信のライブは意外とひさしぶりなので、すっごい楽しみにしていて。今は少しずつリアルの現場が戻ってきたなあと感じていて、そんな中でのオンラインライブだから、配信でしかできないことや見せられないものをなるべく取り入れられたらと思います。
──今日はライブの制作スタッフも同席していますし、せっかくだから「こういうことをやりたい」「これを用意しておいて」など注文があればぜひ。
いやいや(笑)、せっかくのコラボライブなので、提案があればなんでも聞き入れてやっていこうかなと思います。
KREVAがTechnicsに望むものは……?
──以前、音楽ナタリーで展開した「いい音で音楽を」という特集にご参加いただいたとき、ロービットなサンプラーが独自のムードを生み出したヒップホップ文化で育ったKREVAさんが考える「いい音」とは?という質問に対しての「濃い音」という回答がすごく印象的だったんですよね(参照:「いい音で音楽を」特集 KREVA “濃い音”を求めて)。そのインタビューから7年の間にはサブスクが普及したりリスニング機器が進化したりと音楽をめぐる環境は大きく変わりましたが、「濃い音」を求める感覚は変わらないのかなと。
はい。最近のBluetoothイヤフォンで自分の音楽を聴いても「俺の曲、薄くなっちゃったな」とは思わないですからね。「濃い音」というのはつまり、テクスチャを中に溶け込ませている音って言うんですかね。ヒップホップのトラックは、1回レコードやカセットテープから音を取り込むことで、ザーッとかサーッとか、そういったノイズまで音に組み込まれてる。そういう時代のヒップホップを聴いて育ってきてるから、その“濃さ”がないと物足りないんです。
──完全に余談ですが、最近KREVAさんが聴いて「これはヤバいな」と思ったアーティストの作品があったら教えてもらえますか?
Camouflyっていうハウス寄りのビートメイカーが4曲入りのEPを出したんですけど、それはヤバかったですね。どインディで、YouTubeの再生回数も1万回ないくらいの人なんですけど。まさにこの「EAH-AZ60」でCamouflyのEPを聴いてるときに、街中でヒップホップを聴いて最強になれたあの頃のことを思い出したんです。街と作品と自分がシンクロしているような感じがして、すごく気持ちよかったんですよね。きっといいスタジオでいい録音をして……という作品じゃなく、彼が1人でじっくり作って届けてくれた音楽だと思うんです。そういう作品ほど、イヤフォンで聴くとグッときますね。
──これも余談ですが、せっかくTechnicsのスタッフさんもいらっしゃるので。KREVAさんからTechnics製品に対して「ここをこうしたらいいんじゃない?」とか「こういう機能が欲しい」というアイデアがあったら伝えておきませんか?
……世の中のニーズはないかもしれませんけど(笑)、7chか8chあるDJミキサーがあったら欲しいかな。
──(笑)。自分が使うために?
最近のDJミキサーはデジタルに寄りすぎていて、ボタン過多なんですよ。それをなるべく排除して、チャンネル数を増やしてもらえるとうれしいかなあ。たぶん売れないと思いますけど(笑)。DJミキサーのRCAピンを経由してサンプラーに取り込んだ音が、大きく言うと俺にとってのヒップホップなんです。J・ディラは最近のローファイヒップホップやチルホップと呼ばれるものに多大な影響を与えていますけど、彼がMPC3000で作った音は、一緒にスタジオで作業した人の話を聞くと、サンプリングする前のDJミキサーのEQで音を決めていたそうです。DJミキサーのEQって、けっこう大雑把だと思うんです。J・ディラはその大雑把なEQでローを切ってハイをガバッと上げて、割れるギリギリの音をMPC3000に突っ込んだりしていたって話を聞いて、それだよなと。今はきれいに録ろうと思うと徹底的にきれいに録れる時代だから、最終的に「どうやって汚すか」というところに来ていると思うですよ。たくさんあるシンセやサンプラーを一度DJミキサーに入れて、その中でバランスをとったものを最終段階で流し込みたいなと思っていて。
──そんな化け物サイズのDJミキサーも、Technicsだったら信頼できそうだなという(笑)。
そうなんです。「ミキサー4台くらい買ってつないでください」って言われそうですけど(笑)、ざっくりまとめられる多chのDJミキサーがあったら俺は欲しいですね。
-
Technics「EAH-AZ60」
TechnicsがHi-Fiオーディオ機器の開発で長年培われた音響技術の粋を注いだ完全ワイヤレスイヤフォン。音楽が持つ表現や豊かな空間を再現する高音質を実現させた。ハイレゾ音質の伝送が可能なLDACに対応することで、ワイヤレスでありながらハイレゾ音質が楽しめる。
キャンペーン情報
「テクニクス 完全ワイヤレスイヤフォン いい音を楽しもう。新生活応援キャンペーン」
期間中に対象商品を購入のうえ、専用ページから応募した人全員に、選べるデジタルギフトをプレゼント。さらに30歳以下の人には抽選で100人にカフェで使えるギフト券が当たる。
購入期間
2023年3月15日(水)~5月7日(日)
応募期間
2023年3月15日(水)~5月23日(火)16:59
対象商品
Technics:EAH-AZ60、EAH-AZ40
Panasonic:RZ-S30W
プロフィール
KREVA(クレバ)
1976年生まれ、東京都江戸川区育ち。BY PHAR THE DOPEST、KICK THE CAN CREWでの活動を経て2004年にシングル「音色」でソロデビューを果たす。2006年2月リリースの2ndアルバム「愛・自分博」はヒップホップソロアーティストとしては初のオリコンアルバム週間ランキング初登場1位を記録し、2008年にはアジア人のヒップホップアーティストとして初めて「MTV Unplugged」に出演した。2012年9月08日に主催フェス「908 FESTIVAL」を初開催。“9月08日”は“クレバの日”と日本記念日協会に正式認定されている。さまざまなアーティストへの楽曲提供やプロデュース、映画出演など幅広い分野で活躍しており、2011年には初の著書「KREAM ルールなき世界のルールブック」を刊行。本書は2021年6月に電子書籍化された。2023年6月から7月にかけてライブツアー「KREVA CONCERT TOUR 2023『NO REASON』」を行う。
kreva_drk_dj908 (@kreva_drk_dj908) | Instagram
<衣装協力>
Children of the discordance
KIMMY
関連特集
- 「Technics presents “Connect” Online Live」特集|アーティスト3組のオンラインライブをYouTubeで無料生配信
- KANA-BOON×Technicsコラボオンラインライブ開催記念特集|“音”へのこだわりや新体制初シングル「きらりらり」に込めた思いを語る
- オーイシマサヨシ×Technicsコラボライブ開催記念特集|高機能イヤフォンで音楽、アニメ、ゲーム、配信ライブを楽しむ方法
- STUTS×Technicsコラボライブ開催記念特集|さまざまなシーン / ユーザーに対応した高性能イヤフォンの魅力を探る
- THE BAWDIES×Technicsコラボライブ開催記念特集|「音楽をより近くに感じられる」高性能イヤフォンを体験
- Kroi×Technicsコラボライブ開催記念特集|アーティストのこだわりを細部まで再現するイヤフォンの魅力