TEAM SHACHIの1stフルアルバム「TEAM」が2月16日にリリースされた。
昨年10月に神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホールにて、改名後としては過去最大規模となるワンマンライブ「OVER THE HORIZON~はちゃめちゃ!パシフィコ!~」を行ったTEAM SHACHI(参照:TEAM SHACHIが生バンド従えパシフィコ横浜公演堂々完遂、武道館公演開催を宣言)。目標に掲げていたライブの成功を経てリリースされた「TEAM」には、パシフィコ横浜公演で初披露され、現在テレビアニメ「ドールズフロントライン」のエンディングテーマとしてオンエア中の新曲「HORIZON」をはじめ、バラエティに富んだ楽曲群が収録されている。
音楽ナタリーのインタビューでは、パシフィコ横浜公演を振り返りつつ「HORIZON」の話題を軸に4人に話を聞いたほか、チームしゃちほことして“路上デビュー”を果たしてから10周年という記念日を迎える彼女たちに、現在の気持ちや今後の展望も語ってもらった。
取材・文 / 清本千尋撮影 / 曽我美芽
誰も100点と答えなかった
──2021年10月に目標に掲げていた神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホールでのワンマンライブ「OVER THE HORIZON~はちゃめちゃ!パシフィコ!~」を行いました。終わってしばらくしないと成功したかそうじゃないかわからないと皆さんは言っていましたが、あれから3カ月が経っていかがでしょうか?
咲良菜緒 あのライブでひさしぶりに私たちのパフォーマンスを観る人がけっこういて、そういう人たちがそれ以降にやったフリーライブにも来てくれてよかったなって。これはきっと“チームしゃちほことTEAM SHACHIの融合”がうまくいった結果だと思うんですよね。オンライン特典会でも「あの曲をやるとは思わなかった」みたいな声をたくさんもらったし。
坂本遥奈 想像していたよりもあのライブは達成感があったよね。リリースイベントには、いつも来てくれる人はもちろん、懐かしい方や友達に誘われてパシフィコで初めてシャチを観て好きになってくれた人も来てくれて。パシフィコのパフォーマンスがよかったから新しいタフ民(TEAM SHACHIファンの呼称)がついてきてくれたのかなって思います。素直にうれしい結果ですね。
秋本帆華 パシフィコでのライブが成功したから自信がついたし、1つ基準ができた感じがあるよね。それによって全員が今まで以上に前向きになれたこともよかったなと思います。
大黒柚姫 全員がやりたいことを実現して成功と言える内容になったけど、パシフィコのライブが終わったあとにみんなが満足していなかったことがよかったと私は思っていて。100点満点中何点かっていう話になったときに、誰も100点と答えなかった。まだまだ伸びしろがあるという共通認識があったことがうれしかったし、改めて素敵なチームだなと思いました。
──2021年はパシフィコ横浜公演に注力して活動してきましたけど、そのライブが終わって燃え尽きた感じはなかったですか?
咲良 翌週が「スタプラフェス」(TEAM SHACHIが所属するスターダストプラネット所属アイドルが集結したイベント「スタプラアイドルフェスティバル」)だったし、年末にもワンマンがあったから燃え尽きる暇がなかった(笑)。
大黒 余韻に浸る暇もなかったよね。それでよかったなと思う。
「沼ツアー」で進化したしゃちほこ曲
──パシフィコ横浜公演に向けて突っ走っていた2021年を振り返ってみるとどんな年でしたか?
咲良 チームしゃちほこ時代の曲をうまく使えるようになった年。しゃちほこ時代の曲はトリッキーな曲が多いから、今みたいなブラス民(ブラス隊)と一緒のライブスタイルにどうやったら馴染むのか、いろいろ試して、パシフィコでちゃんと形になったんです。それが最初に言った“チームしゃちほことTEAM SHACHIの融合”なんですけど、これができたことによってパフォーマンスの選択肢が増えて、また新しい武器をゲットできたと思いました。
──TEAM SHACHIに改名してすぐは、チームしゃちほこ時代の曲の割合が少なく、曲数が足りない分を埋めているような感じもあったんですけど、最近進んでチームしゃちほこ時代の曲を取り入れるようになったのはなぜですか?
坂本 改名してから1年はTEAM SHACHIの曲を知ってもらいたかったので、そちらを優先的にやっていたところもあったし、スタッフさんから「チームしゃちほこ時代の曲はあの頃のあなたたちががむしゃらにやっていたからよかった」と言われることもあったんです。でも「沼ツアー」(2021年6月に開催した東名阪ツアー「TEAM SHACHI TOUR 2021 ~東名阪でオトす!!~」)のライブを作っていく中で、「しゃちほこ曲は不思議な曲が多いけど、どれも強い曲だからせっかく持っている武器も生かしていきたいね」という話になり、「いいくらし」とか「首都移転計画」みたいな当時はへんてこりんだなと思いながらやっていた曲もカッコよくバシッと決まった。しゃちほこ曲が「沼ツアー」で進化したんですよね。
咲良 「沼ツアー」での挑戦がなかったら、きっとパシフィコはTEAM SHACHI曲を中心に固めていたんだと思う。もうTEAM SHACHIの曲でワンマンできるくらいの曲数はあるからね。
──パシフィコで昔のファンと再会できたのも、きっと「沼ツアー」でチームしゃちほこ時代の曲をやっているという口コミがあったからでしょうね。
秋本 それもある思います。だからパシフィコの前に「沼ツアー」ができてよかった。
畑違いな曲が来た
──パシフィコ公演で初披露された「HORIZON」は、アニメの世界観を色濃く反映した楽曲です。これだけ重厚なサウンドはきっと4人にとっては新境地ですよね。実はこの曲、けっこう前からあったと聞きました。
秋本 1年以上前から「ドールズフロントライン」のエンディングテーマを担当するというお話があって、初めてこの曲のデモを聴いたのがちょうど1年前くらい。ずっと披露したかったので、あの場でようやくお届けできてうれしかったです。
坂本 パシフィコのライブタイトルで伏線を張ってたしね(笑)。「OVER THE HORIZON ~はちゃめちゃ!パシフィコ!~」で、「はちゃめちゃ」のほうをプッシュしていたから、ファンの人は「HORIZON」というタイトルの曲が来るとは思ってなかったんじゃないかな。
秋本 うん。そうだと思う。
──「HORIZON」を初めて聴いたときの印象は?
咲良 ほかの人の曲みたいだなって。この曲をカバーするのか、みたいな(笑)。それくらい自分にとっては畑違いな曲が来たと思いました。
坂本 うちらに歌えるのかなって思ったよね。
秋本 うん。メロディに負けちゃうんじゃないかと思った。
坂本 しかも仮歌が英語だったんですよ。転調も多いし、これを私たちが歌ったらどうなるんだろうというのが当時の率直な印象でした。
──TEAM SHACHIの歌割りは、一旦全員がフルで歌ったものをレコーディングしてバランスを見てパートごとに組み合わせていくことが多かったと聞いていますが、今回もその方法で?
大黒 いや、今回はボイストレーニングの流れで一旦歌ったものをボイスメモに録音して、先にレコーディング用に歌割りを決めてもらったんですよ。「MAMA」(2020年8月発売)以降のレコーディングでは、全員の個性を生かした歌い方ができるようにそういう方法も増えていて。
咲良 「HORIZON」は、先に自分のパートを決めてもらわないとレコーディングまでに準備が間に合わなかったと思う。それくらい難しい。展開が多すぎるから、それぞれのブロックを極めていくには練習時間が足りなかったんじゃない?
大黒 そうだね。それぞれに与えられたパートに集中して突き詰めていった結果、完成度の高い歌が歌えたと思う。
──パシフィコでは24曲目、つまり本編の最後に披露しました。今日も着てくれている「HORIZON」の衣装に着替える時間はあったとしても、「We are…」「ULTRA 超 MIRACLE SUPER VERY POWER BALL」「AWAKE」「START」「DREAMER」と歌やダンスにパワーを使う曲を畳みかけたあとにあの曲を歌うのは相当キツかったのでは?
大黒 全員のテンションがおかしかったからなんとかなったんですよ(笑)。
秋本 本当にそう。
坂本 限界突破しまくりだった。
咲良 あのライブは普通じゃないからね。あそこまでのテンションになるのは(笑)。
大黒 伝説のライブだよ。あれをできたのは奇跡。
坂本 でもパシフィコは伝説のライブにするって言ってやってきたからね。
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苦戦した「HORIZON」のレコーディング