ナタリー PowerPush - 多和田えみ × 村上てつや(ゴスペラーズ)

2人が目指す“ソウル”とは? 魂のコラボ「Lovely Day」の秘密を探る

3月24日にリリースされた、多和田えみのニューシングル「Lovely Day」。昨年11月にデビューからの集大成と言える1stフルアルバム「SINGS」を発表した彼女が、次の一歩として選んだのは、ゴスペラーズの村上てつやをプロデューサーに招いた直球のソウルナンバーだった。

ナタリーPower Pushでは今回、東京・三宿のソウルバー「SOUL NUTS」に多和田えみと村上てつやの2人を招き、甘いソウルミュージックをBGMにインタビューを行った。2人のリラックスしたムードを楽しんでほしい。

取材・文/臼杵成晃 撮影/仁礼博 取材協力 / SOUL NUTS

Twitterでつぶやく このエントリーを含むはてなブックマーク この記事をクリップ!

最初の一声で「おっ、これはソウルだ!」

──村上さんが多和田さんの音楽を知ったきっかけは?

村上 えみちゃんのバンド「The Soul Infinity」でパーカッションを叩いているNonaさんがブログで紹介してるのを見たのかな。それでえみちゃんのサイトを見て。今、ネット上ですぐに音楽を聴くことができるけど、実際にクリックして聴くものって結局限られてますよね。でも、えみちゃんのサイトを見たら「お、“SOUL”って書いてあるぞ」と(笑)。そこで「Naturally」のビデオクリップが流れてたんです。

多和田 あー、最初のミニアルバム(「∞infinity∞」2008年4月リリース)のとき。

村上 最初の一声だけで「おっ、これはソウルだ!」と。「Naturally」は曲自体、そんなにソウルっぽい曲じゃないんだけどね。それで「∞infinity∞」を聴いたら「CAN'T REACH」って曲に非常にびっくりしたんですよ。「Naturally」は今っぽい曲だけど、「CAN'T REACH」は端的に言って、今っぽさみたいなものが全く無視された楽曲で。

インタビュー写真

多和田 あはははは(笑)。

村上 「えっ、このコはいったいいくつなんだろう?」みたいな。それでものすごく興味を持って。その後すぐに「FLOWERS」(2ndミニアルバム。2008年7月発売)が出たんですけど、このアルバムに参加しているDJ KAWASAKIさんとかJazztronikの野崎(良太)くんとかね、おそらく同じようにえみちゃんの声に惹かれてる人がいっぱいいるんだなと感じて、すごくライブが観に行きたくなったの。ageHaでやってたDJ KAWASAKIさんのステージで初めてえみちゃんが生で歌うのを観たんだけど、それで楽屋に会いに行ったらちょうど野崎くんがいて、話し込んでる間に「もう多和田さんは帰りました」みたいな(笑)。「なんだ野崎、お前とはいつでも会えんだよ!」って(笑)。

──多和田さんはその段階で「村上さんが自分の曲を聴いている」という話は聞いてたんですか?

多和田 私はNonaちゃんからメールもらってて「ねぇ聞いて聞いて! ゴスペラーズの村上さんがさ……」「エェ~ッ!?」って。もうびっくりですよ!

──直接お話ができたのはいつ頃ですか?

多和田 一昨年の大阪ABCテレビの開局イベントの打ち上げで、ゴスペラーズの皆さんにお会いしたんです。そのときに村上さんに初めてお会いできて。やっとお会いできた! って感じだったからもうドキドキして、めっちゃ緊張しました。いろんな出演者の方が集まる合同打ち上げみたいな感じだったから、ご挨拶して少しだけお話しできた感じだったと思います。

村上 そっかそっか。あれが最初かあ。

多和田 そのあと、去年の3月に私が東京と大阪と沖縄でワンマンライブをやったんですけど、その大阪会場にいらっしゃってくださって。

──そこではバッチリ話をして?

多和田 はい。お土産の韓国のりもいただいて(笑)。

心をくすぐる選曲リスト

──そのあたりから、日本のソウルの祭典「SOUL POWER SUMMIT 2009」に多和田さんの出演という話が上がってきたんですね。

村上 そうですね。なかなかお皿(CD)だけでは判断しかねるところがあるので。DJ KAWASAKIさんとのライブも打ち込みで1曲のみだったから、やっぱり生でライブを観たいなって。

──去年の3月のツアーはホーンセクションも入った生バンド編成ですよね。

インタビュー写真

村上 そうそう。ホントに“ソウルレビュー”という感じだったから、それを観て俺としても太鼓判、というか。その時点では何も決まってなかったけど、スタッフのみんなに「多和田えみちゃん、イケると思うよ!」みたいな話をして。それで「じゃあ出てもらいましょう」っていう話になったんですね。でもいきなり日本武道館や大阪城ホールに来て「さあなんかやって!」って言うよりは、少しでも一緒に歌ったりしておきたいなと思って、Skoop On SomebodyのTAKEちゃんと一緒にやってる「武田と哲也」の東京公演に出てもらったんです。それで俺も彼女のことがよくわかったし、たぶんえみちゃんも我々のことを理解するきっかけになったんじゃないかな。

多和田 そうですねー。

村上 「何を一緒に歌おうか」みたいな話をしたとき、まず最初にえみちゃんが選曲したリストを見て、もういきなり「SOUL POWER」にピッタリのシンガーだなって思ったの。いきなりアル・グリーンの「Let's Stay Together」を選んでくるなんて思ってもみなかったから。「Let's Stay Together」「I'll Be There」「FEEL LIKE MAKING LOVE」……もう1曲ぐらい何かあったかな。こっちの心をくすぐるものを投げてきたのがすごくうれしかった。それで「ああ、これから先も一緒に歌っていけるな」っていう。

ニューシングル「Lovely Day」 / 2010年3月24日発売 / 1200円(税込) / techesko / QVCB-9

  • Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. Lovely Day
  2. Rainbow
  3. Let's Stay Together
多和田えみ(たわたえみ)

アーティスト写真

1984年生まれ、沖縄出身の女性シンガー。高校卒業後、カナダへの語学留学中に出会ったストリート・ジャズ・バンドで歌ったことをきっかけに、本格的に音楽を志す。帰国後に作詞作曲を開始し、2006年2月から沖縄県内のホテルやライブハウスを中心に積極的なライブ活動を展開。翌2007年にMSN/EMI ARTIST主催のオーディション決勝大会で、NYLON賞を受賞する。同年5月に沖縄限定シングル「ネガイノソラ」がリリースされ、好セールスを記録。その後もアントニオ・カルロス・ジョビンのトリビュートアルバム「ジョビニアーナ~愛と微笑みと花~」や、沖縄出身アーティストによるコンピ盤「琉球LOVERS ROCK」などに参加し、注目を集める。そして2008年4月、ミニアルバム「∞infinity∞」で待望のメジャーデビュー。ブルースやソウル、ジャズ、ファンクなどブラックミュージックから強く影響を受けたサウンドと、ときに激しく、ときに優しく聴き手に訴えかけるソウルフルな歌声が高く評価されている。