夢眠ねむ、根本宗子が3人組に悩む人へ送る、たぬきゅんフレンズ主演舞台とそのテーマ曲

夢眠ねむがプロデュースするキャラクターユニット・たぬきゅんフレンズの新曲「3☆3☆3☆サンシャイン」が5月13日に配信リリースされる。

「3☆3☆3☆サンシャイン」はたぬきゅんフレンズが主演を務め、サンリオキャラクターのシナモエンジェルスも出演する舞台「根本宗子 presents 『たぬきゅんフレンズ、レッツオーディション!~3人組は波乱万丈!?~』」のテーマソング。作詞は安藤紗々、作編曲はKOUGAによるもので、「1人ひとりの個性を尊重しながら仲間を大切にしよう」というメッセージが込められている。

音楽ナタリーでは夢眠、舞台の脚本および演出を手がける根本宗子にインタビューし、新曲に込めたメッセージや舞台の見どころを聞いた。インタビュー後半にはたぬきゅんフレンズのたぬきゅんも登場し、レコーディング秘話や舞台のアピールポイントを語っている。

取材・文 / 南波一海撮影 / 入江達也

オタクの下心が見え隠れ

──たぬきゅんフレンズの主演舞台を上演することになった、そもそものきっかけはどんなことだったのでしょうか。

夢眠ねむ 最初から話すと、私、大学生のときにサンリオピューロランドでバイトしていたんです。その頃、シナモンくん(シナモロール)の友達のモカちゃん、シフォンちゃん、アズキちゃんで結成したシナモエンジェルスがちょうどデビューして。「Chu-Chu-Chu」という曲が出たんですけど、私はレジを打ちながらその曲をずっと聴いていたんですね。それまでもキャラクターを“好き”になることはあったけど、“推す”みたいな経験はそのときが初めてだったんです。

──シナモエンジェルスがキャラクターで初の推しだったんですね。

夢眠 そうなんです。シナモエンジェルスはスピンオフというか、シナモンくんの友達としてもしょっちゅう出てくるわけではなくて、数曲で活動が終わっちゃったんです。ファンからすると何もない時間がすごく長くて、「新曲を聴きたい」とか「ステージを観たい」という気持ちがずっとあったんですよ。そんな中、2018年にシナモンくんのデザイナーさんの奥村(心雪)先生と対談できる機会があって、「シナモエンジェルスは復活しないんですか?」って聞いたら、「その予定はないんです」と。それで「がんばってきっかけを作ればできますか?」と聞いてみたら、「実現できたらすごく面白そう!」と言っていただけて。それで火が点いたんです。

夢眠ねむとたぬきゅんフレンズ。

夢眠ねむとたぬきゅんフレンズ。

──復活のきっかけを作ろうと。

夢眠 自分もキャラクタープロデュースをがんばっていて、たぬきゅんたちもちょくちょくサンリオピューロランドでパレードに出させていただいたりとご縁はあったんですね。でも、たぬきゅんフレンズが“イケメンアイドルグループ”としてデビューしたのが2020年で、ちょうどコロナ禍真っ只中だったので、一度もステージを経験してこなかったんです。たぬフレの初ステージも絶対に実現したいと考えてたときに、たぬきゅんたちとシナモエンジェルスが共演するようなイベントができたら全部が叶うなって。オタクの下心みたいで申し訳ないんですけど(笑)。ただのライブだとつまらないなと思っていて。

──それが演劇につながっていく。

夢眠 たぬきゅんとは別個の話で、ねもちゃん(根本)とお仕事してきた中で自分のために台本を書いてほしいと思っていたんですけど、その時期を逃していたんですね。それが心残りで、その思いもふつふつと長く抱えていたんです。それで、あるとき思いついてしまった。

根本宗子 2人の間では打ち合わせしてたんですよね。ねむちゃんがでんぱ組.incを卒業して芸能界を引退するときに話をくれて(参照:でんぱ組.inc夢眠ねむが1月の武道館公演で卒業、芸能界も引退)、じゃあこういうのがいいかなってお茶しながらしゃべる、くらいの段階ですけど。

根本宗子

根本宗子

一番楽しんでほしいのはねむちゃん

──そんな背景があって今回の舞台に結実したというのは、お二人にとっても念願ということなんですね。根本さんはオファーをもらったときはいかがでしたか。

根本 うれしかったです。そもそも普通に演劇をしていてもサンリオピューロランドでやるという機会がないので。常設の劇を細川徹さんが書かれたり、演劇畑の方が携わることもあるんですけど、すごいミラクルで人選されない限りは担当することはないんですね。だから光栄でした。

夢眠 台本をもらって即、ゲラゲラ笑いました。お互いテーマパークやキャラクターが好きというのは大きいと思います。そこに理解がある人じゃないと任せられない。私、テーマパークで、ウケると思ってキャラクターいじりするような見せ方をする人が本当に苦手なんですよ。観に来てくれるのもキャラクターを大事にしている人たちだから、書いてくれる人もそのマインドがないと安心して観れないと思うんです。ねもちゃんはそこの部分でも信用できるんですよね。

根本 たぬきゅんはTikTokもすごい面白くて、あそこからラビやん(たぬきゅんフレンズのメンバー)の雰囲気を感じ取ったりしました。でも今回はそれを舞台という長い尺で成立させないといけないので、脚本を書くときはたぬフレがしゃべっている動画をなるべく見ました。

夢眠 えー! ありがとう!

根本 それに、でんぱ組.incのときのねむちゃんの活動を振り返って。

夢眠 え(笑)。なんで?

根本 一番楽しんでほしい相手はねむちゃんなんです。客席にはたぬフレとシナモエンジェルスのオタクも、ねむちゃんを推してる人も、私の演劇のファンもいて、自分のファンの人に楽しんでもらうものは作れると思うけど、今回初めて私の演劇を観る方も多いと思うんですね。ねむちゃんをずっと見てきた人は、たぬきゅんの舞台がどんな作品だったらグッとくるのかな、と。一旦ねむちゃんのオタクになって考えました。

夢眠 すごい! いろんな視点を持ってくれている。普段からコラボ的なショーを観ている人も、「まさかこんなに作り込んだコラボが観られるとは!」という気持ちになってもらえるんじゃないかなと思っていて。テーマパークのパレードとかショーって自分のピュアなところにスッと入ってくるんですけど、そういう要素もあるし、純粋に音楽も楽しめるし、ちゃんと演劇としても成立していて。私が皆さんに伝えたいこととしては、シナモエンジェルスも物語の鍵となるところでちゃんと出てきて、セリフがしっかりあるということです!

夢眠ねむ

夢眠ねむ

根本 うん。キャラクターのコラボって、お相手のほうがご挨拶程度にしか出てこないことも多いと思うんです。

夢眠 一緒に揺れる、くらいとか。

根本 それだと自分的に納得がいかなかったんです。

──“お客様”という感じではなく、がっつりと絡めたかった。

根本 もしかしたらそこまでは求められてなくて、サンリオ的にも「こんなに出るのかよ」と思ったかもしれないんですけど(笑)、出演してもらうからには最大限活躍してもらいたいので。たぬフレとシナモエンジェルスはちょうど3人組と“3にん組”なので、“3”をテーマに書きたいなと考えました。

小さい子も飽きずに楽しめる

──発表時の根本さんのコメントにもありましたが、まさに子供も大人も楽しめる舞台になっているんですよね(参照:たぬきゅんフレンズがピューロランドで主演舞台、脚本&演出は根本宗子)。

根本 子供の感想は気になっていて。この1、2年よく考えるようになったんですけど、演劇って自分が初めて観たものが大事だと思うんです。初めて観たものがつまらないと、「演劇ってムズいし眠くなるよね」という印象になってしまう。学校の行事で鑑賞する演劇って、だいたいつまらないじゃないですか。

──わかります。

根本 あれがけっこうな問題だと思っていて。日本は子供のときに観る演劇があまり魅力的ではないなと個人的に思うんです。子供と大人が一緒に観に行って、どちらも楽しめるということがあまりない。いや、あるにはあるんですけど、多くの子供用の作品は本当に子供専用に作られているので、そこをなんとかしたいなと。自分が子供に見せる演劇を作るとしたらどんなものになるだろうというのはちょいちょい考えていたので、今回のオファーはありがたかったです。キャスト全員が人間の劇よりもキャラがいるほうが飽きないし、ストーリーもわからせようとしなくても感じ取ったりできると思うんです。「今怒ってるっぽい」とか、「悪い人っぽい」とか。だから、あえて子供に歩み寄ってセリフを書かなかったんですけど、たぶん、飽きずに観られるようにはなったと思ってます。小さい子の感想はすごく気になりますね。子供は正直ですから。

夢眠 姪っ子が4歳なんですけど、普通に話が合うし、同じアニメを観たりもできるんですよ。だから全然大丈夫だと思う。

左から夢眠ねむ、たぬきゅん、根本宗子。

左から夢眠ねむ、たぬきゅん、根本宗子。

左から夢眠ねむ、たぬきゅん、根本宗子。

左から夢眠ねむ、たぬきゅん、根本宗子。

──根本さんが演劇に対して啓蒙的であったり教育的であったりする立場は一貫していますよね。

根本 自分はたまたま最初に面白いなと思える演劇を観られたけど、演劇が趣味で観に行く人の人口が増えないのは、さっき言ったようなことが原因だと思うんです。バレエ好きの一家に生まれたからバレエを観る、とか、宝塚好きなお母さんだから宝塚を観る、みたいなことはあるじゃないですか。でも、それを1つに絞るのではなく、家族でいろんなものを観に行くという文化にしないと、私が4、50歳になったときの演劇がもっとヤバそうだなと思って。

夢眠 私も小さい頃に連れて行ってもらえたから、チケットにいくらくらいかかって、何時間くらい楽しめるというのが想像できる。でも、そもそもそこからわからないということだってありますよね。話を聞いていて、私が本屋をやってる理由と一緒だなと。夢眠書店は本好きを育てるために始めたんです。

──出版レーベル「夢眠舎」を作って雑誌を出したのもそうでしょうし。

夢眠 本当にそうですね。自分が触れていてよかったものが、下の世代からどんどんそうではなくなっていくのがイヤだというのがあるんだと思います。演劇観てほしいな。私もいろんなファミリーミュージカルを毎年観に行ってたし、なんなら出たかったもん(笑)。