ナタリー PowerPush - タニザワトモフミ
今までのイメージをブッ壊す J-POP愛にあふれた新作完成
J-POPシーンに対して「そうじゃないだろ」って言いたい
──で、やっぱり聞かなきゃならないのは、さきほどからお話に出てきている「くたばれJ-POP」という曲についてなんですけど。ストレートにブチまけてますね(笑)。
アハハハ。そういうことを中途半端に匂わせて歌うのは、なんか卑怯な感じがしたんですよ。それはつまり自分が矢面に立ってないことだと思うから。僕はもうさんざん批判されても結構ですっていう覚悟を持って歌おうと。
──それはやっぱりJ-POPというものに対して常々思っていることがあったから?
ありましたね。日本のポップスっていうものが僕はものすごく好きなんですけど、最近テレビから流れてくる音楽とか、チャートに入ってる音楽ってなんか物足りなく感じてたんです。もっと感動したいのにとか、もっと驚きたいのにとか、そういう根っこの欲求みたいなものがずっと溜まってたんだと思うんですよね。で、それがついに噴出したっていう(笑)。普通にJ-POPというジャンルで括られる僕が、そういうことを歌う面白さもあるんじゃないかなって思ったので。
──ただ、この曲がどこに向けられているかが気になります。アーティストなのか、リスナーなのか、それともシーン全体なのか。
僕が「そうじゃないだろ」って言いたいのは、あくまでもシーンに対してですね。特定のアーティストに対して文句を言いたいわけでもないし、今のJ-POPのことが好きな人を批判したいわけでもない。あくまでも、知らないうちに“J-POP”って名前がつけられて、気持ち悪い雰囲気になっている音楽シーンに対して、胸を張って“くたばれ”と言いたかったというか。
──シーンに対して一石を投じたいという気概もそこには含まれてます?
僕が日本の音楽を変えられるかっていったらわかんないですけど、でもこの作品はそういう意味でも価値のあるものだとは思ってるんです。より整えられた音楽が溢れるシーンに、ここまでデコボコしたものをやれたことがまず価値のあることだと思う。あとは、僕自身が日本の音楽を引っ張っていけるようなアーティストになりたいっていう、自分へのプレッシャーもあると思います。世の中にシンガーソングライターっていう人種はいくらでもいて、その中でいかに異端でいられるかっていうところでみんなしのぎを削ってると思うんですよ。誰とも似てない場所に行きたいってみんなが願って、がんばってる。で、そのひとりでもある僕が今できることがこれだったというか。あんまり計算してやったわけではないので、感覚的にこれだったっていうのが正しいと思うんですけど、僕がやらなかったらいつか誰かやっちゃう気がしていたので、誰よりも早くやるぞみたいな気持ちはありましたね。
「2ちゃん」で批判されるのも含めて楽しみ
──このアルバムに収録されている曲たちって、いわゆるラブソングだったり結婚ソングだったり聴く人の背中を押す応援ソングだったりっていう、ある種“くたばれ”と言っているJ-POPシーンにあふれてるテーマ性を持っていると思うんです。でも、表現方法という部分で、まったく新しい視点を持った曲になっているんですよね。それがタニザワさんからシーンに向けた回答になっているような気もして。
ありがとうございます。すごくうれしいですね。普通に喜んでしまいました(笑)。ありふれたテーマでもそうじゃない見え方があるはずだっていうことを、自問自答しながらさんざん突き詰めた結果がそこにあるんだと思いますね。
──どういう反応が返ってきますかね。
すっごい楽しみですね。「2ちゃん」ですごく批判されたりとか、そういうのも含め僕はけっこう楽しみです(笑)。
──それもすべて受け入れる覚悟だと。
うん。なにしろあんまり批判されたことがないんですよ、僕。だから批判されたい欲求みたいなのが強まってるのかもしれない。落ち込んだりっていうのも、あんまりないほうだと思います。実際はわかんないですけどね。さんざん批判されたときにめっちゃくちゃ落ち込むかもしれない(笑)。でも今はそれも楽しみです。
タニザワトモフミ
1981年生まれ、岐阜県飛騨市出身のシンガーソングライター。15歳でギターを手にし、オリジナル曲を作り始めバンド活動を開始。2000年に上京し、都内各所でライブ活動を始める。インディーズレーベルから3枚のミニアルバムをリリースしたのち、2009年2月にシングル「東京ハロー」でメジャーデビュー。同年11月発売の2ndシングル「きみにとどけ」は日本テレビ系アニメ「君に届け」のオープニングテーマに抜擢。翌2010年3月には1stフルアルバム「まぼろし時計」をリリース。2011年1月からスタートした日本テレビ系アニメ「君に届け 2ND SEASON」に、新曲「爽風」を提供し脚光を浴びている。独創的な歌詞の世界観と圧巻のライブパフォーマンスで、現在着実に人気を高めているアーティストのひとり。4月16日には渋谷CLUB QUATTROにてワンマンライブ「日本に落ちてきた男の祭典」を予定している。