ナタリー PowerPush - タニザワトモフミ
今までのイメージをブッ壊す J-POP愛にあふれた新作完成
「これって本当のタニーじゃないよね?」
──今回、プロデューサーにcafelonの石崎光さん、エンジニアにmolmolの佐藤宏明さんが参加しています。その布陣で制作をしようと思ったのはどうしてだったんですか?
お2人とはプライベートでもつき合いがあるので、僕のことを本当によくわかってくれているんですね。酔っぱらってダメな僕とか、ものすごく女の子が好きな僕とか(笑)、そういうところも全部知ってくれているので、例えば過去の僕の曲に対して「これって本当のタニーじゃないよね?」とか「本当はこんなこと思ってないでしょ?」とか平気で言うんです。で、それだけなんでも言い合える仲だったら、絶対面白いものができるって確信があったというか。なので、今回はこの3人でやろうと。
──これまでに築いた自分のイメージをブッ壊したい、本当の自分を出したい、みたいなタニザワさんの思いを引き出してくれるメンツだったと。
そうなんです。だからきっと、僕ひとりではこのアルバムはできなかっただろうなって思ってます。
──実際の制作作業はどんなふうに進んでいったんですか?
詞と曲は僕が書くんですけど、アレンジは一切しないことにして。弾き語りっていう一番シンプルな状態で渡して、それに対して信頼している光さんがどんなビジョンを持つかっていうことを最優先にしたかったので。まったく自分のビジョンと外れてたとしてもそれはそれで楽しいし、っていうスタンスで今回はやりましたね。光さんから返ってきたものはほぼ最高で、よりよくするために議論することはもちろんあったけど、すべてがお互いに納得できる方向に行ったので良かったなぁって思います。
新作は音楽人生を長く続けていく僕にとって重要なもの
──タニザワさんが抱いていたイメージとのギャップが激しかった曲ってあります?
「まぼろシーン」が一番ビックリしました。「うわ、めっちゃTHE BEATLESだ!」と思って、最高に笑えましたね(笑)。僕が子供の頃、親父にさんざんTHE BEATLESを聴かされてきたってことも光さんは知っていたので、僕のルーツだろうっていうことでそういうアレンジにしてくれたと思うんですけど。
──そのほかの曲に関しても、アレンジの多彩さがハンパじゃないですよね。1曲の中で遊び倒しているというか。
光さんもね、ここまで自由にやらせてくれる現場はないって言ってました(笑)。その場で思いついたことは基本的にノーと言わず、全部試してみるんですよ。で、アリだったら使うし、ナシだったらナシにする。みんなの想像性が消える方向に行かないようにっていうことを、現場のみんなが大事にしてたと思いますね。アシスタントのエンジニアさんがミスって思いっきりズレた場所に貼ったフレーズがおもしろかったので、それを採用した曲もありますし。
──現場の楽しい空気感が音にもきっちり表れていると思います。
うん。「くたばれJ-POP」もかなり盛り上がりましたよ。ギターはチュールの(酒井)由里絵ちゃんと、小日向しえさんが弾いてるんですよ。由里絵ちゃんはリズム感あるしうまいからいいんですけど、しえさんはCとGしか弾けないっていう感じで。僕が押さえ方を教えながらやったんですけど、そのヘタクソな感じが良かったんですよね。あと、ドラムはバスドラをドラマーの方が、タムとシンバルを光さんが、スネアとハットを僕がやってるんです。それを同時に録るっていう(笑)。
──ドラムに3人集まっているということですか。ものすごい画ですね、それ(笑)。
そうそう。フィルの部分とかは僕が叩いてて、明らかにリズムがズレてるんですけど、まぁアリでしょっていう。通常では使われないものがどんどん使われたっていう意味では、「くたばれJ-POP」が一番楽しかったですね。楽しむっていうことはもちろん、最高のものを作るんだっていう気持ちでみんながものすごく集中できていたんですよ。そうやってできた作品は、この先も音楽人生を長く続けていくつもりの僕にとって、とっても重要なものになったんじゃないかなって思います。
タニザワトモフミ
1981年生まれ、岐阜県飛騨市出身のシンガーソングライター。15歳でギターを手にし、オリジナル曲を作り始めバンド活動を開始。2000年に上京し、都内各所でライブ活動を始める。インディーズレーベルから3枚のミニアルバムをリリースしたのち、2009年2月にシングル「東京ハロー」でメジャーデビュー。同年11月発売の2ndシングル「きみにとどけ」は日本テレビ系アニメ「君に届け」のオープニングテーマに抜擢。翌2010年3月には1stフルアルバム「まぼろし時計」をリリース。2011年1月からスタートした日本テレビ系アニメ「君に届け 2ND SEASON」に、新曲「爽風」を提供し脚光を浴びている。独創的な歌詞の世界観と圧巻のライブパフォーマンスで、現在着実に人気を高めているアーティストのひとり。4月16日には渋谷CLUB QUATTROにてワンマンライブ「日本に落ちてきた男の祭典」を予定している。