今の自分に合う曲をもっと増やしていきたい
──今作は今年2月リリースの「恋は天使のチャイムから」に続くCana ariaから2作目のシングルとなります。ここも以前から変わらない部分ですけど、シングルはカップリングにインスト音源を入れず、オリジナルのカップリング曲が3曲入っていますよね。あと1、2曲あればミニアルバムなんじゃないかと。
そうなんですよ。これじゃ儲かんない(笑)。まあ、今は曲をどんどん増やしていきたいというのがあるから、シングルは4曲入りを守ろうとしているんです。過去の曲をなくしちゃうわけじゃないけど、今の自分に合う曲をもっと増やしていきたいんです。
──確かに、レーベル立ち上げから3作ですでに16曲もあります。
もうちょっとあれば今の曲だけでライブ1本できますしね。
──今作も4曲入りで、表題曲「永遠のひとつ」は田村さんが声優として出演している現在放送中のテレビアニメ「ISLAND」のオープニングテーマです。田村さんはご自身が演じる凛音というキャラクターについて、少し前にTwitterで「とてもシンクロする」とおっしゃってましたね。
はい。ただ今回はキャラクターソングではないので、がっつり作品やキャラに寄せて曲作りする感じではなかったです。オリジナルのゲーム作品自体私は好きだし、ごぉさん原案の作品に出させてもらうのは2作目なんですけど、ごぉさんはどうやら王国民らしくて。ゲームをプレイしていると「あれ? 今のセリフ、私が前ラジオで言ってたやつじゃん」みたいなことがけっこうあるんですよ(笑)。
──王国民の方が田村さんに当て書きするようにセリフを作っているのかもしれない。
そうですね(笑)。ラジオなどから漏れ出てくる人となりみたいなものをすごく拾ってくださっている感じはします。もちろん凛音は凛音というキャラクターなのでイコールではないですけど、共感できる部分は多いです。
比喩よりも心情
──「永遠のひとつ」はどのようなイメージで楽曲のテイストや歌詞を考えていったのでしょうか。
誰かのことが愛おしすぎてキュンとなる、みたいな感情ってありますよね。あの感じを絶対に入れたいと思っていて。この曲は私の中では、すごく風が強い夏の日のイメージ。
──歌詞で描かれているのは「ISLAND」のキャラクターの年齢感に合った恋愛模様だと思いますけど、切ない曲調も相まって、過ぎ去った時代を大人になって思い出しているようなニュアンスも感じました。
昔は恋の歌を歌うときは、マンガの中の世界みたいな歌詞になることが多かったんです。でも、ある時期からもうちょっとリアリティがある歌詞がいいなと思って、それから松井五郎さんによくお願いするようになりました。歌詞を発注するときには内容以外のお約束として、「比喩的な表現をなるべく避けてほしいです」とお願いしているんです。
──比喩を避ける?
比喩表現は歌詞としてカッコよくなりますけど、自分の心情で進んでいく歌詞がいいんです。もしかしたらそこが大人びた感じに聞こえるのかもしれないです。比喩がゼロではなくていいんですけど、なるべく感情で進んでいきたい。清竜人さんがいいなと思ったのもそこなんですよ。清 竜人25は別ですけど、後追いで清さんのソロの作品を聴いて、歌詞の技巧よりも心情で進んでいく感じがすごく好きで。
──田村さんはご自身で作詞をするわけではないけれど、「こういう心情を伝えたい」という希望は作詞家さんに具体的に伝えているんですか?
そうですね。なるべくはっきり伝えます。清さんにお願いした2曲はわりとお任せしちゃいましたけど、それでも「清さんの曲のこういうところが好きです」という部分ははっきり伝えました。「ごめん、そういう曲にはならなかったわ」というお返事でしたけど(笑)。松井さんにお願いするときは心情をしっかりお伝えして「こういう歌詞にしたいです」という希望はいつも具体的にお話してます。
「永遠のひとつ」と「Closing tears」の関係
──今作は表題曲も含め、4曲中3曲が松井さんの作詞と白戸佑輔さんの作編曲というタッグになっています。楽曲のセレクトはどんな基準だったんでしょう。
曲は全部コンペなので、たまたま白戸さん曲が集まったんです(笑)。
──そうなんですね。白戸さんにお願いして全体のバランスを見ながら作ってもらった3曲なんだとばかり。
実は2曲目の「Closing tears」も「ISLAND」のオープニングに使われるんです。あるタイミングで登場するオープニング曲で。アニメ側からは「2曲作ってください」「そのうち1曲は少し大人っぽい曲に」というオーダーだったんですけど、「大人っぽい」ってけっこうあいまいですよね。だったら2曲でどこか落差を付けようと思って、1曲目はいわゆるギャルゲのさわやかな夏のイメージで、もう1曲はむちゃくちゃ悲観的な曲にしようと(笑)。そんなイメージで選んだら、たまたまどちらも白戸さんの曲で。「Closing tears」は「永遠のひとつ」の夏要素からはスパッと離れて、この人このあと死んじゃうよぐらいの大失恋をした感じ。
──「永遠のひとつ」と「Closing tears」は同じ主人公が描かれているのかな、と思うほど対になっている印象だったんですけど、それは同じアニメの主題歌として考えられたものだからなんですね。
そうなんですよ。私の中ではどちらも同じ人……と言うか私なんですけど。「ISLAND」の主題歌と考えたときに、私はどうしても自分が演じているキャラクター目線で作品について考えていましたけど、それだと腑に落ちない点がけっこう出てきて。なんでだろうと考えた結果、物語の主人公は三千界切那という男の子だからなんです。本当はもっと俯瞰して作ったほうがよかったのかもしれないけど、私は自分が歌うというところで、自分の心情と、自分が演じる凛音の心情に若干でも近付けたいなと考えたので、作品が求めているものとはズレてるかもしれません(笑)。
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今の気分に合うアッパー曲
- 田村ゆかり「永遠のひとつ」
- 2018年8月15日発売 / Cana aria
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初回限定盤 [CD+DVD]
2160円 / CNRA-0004 -
通常盤 [CD]
1512円 / CNRA-0005
- CD収録曲
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- 永遠のひとつ
- Closing tears
- ジェラシーのその後で
- SUKI KIRAI
- 初回限定盤DVD収録内容
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- 永遠のひとつ MusicClip
- MusicClip メイキング映像
- 公演情報
ゆかりっく Fes '18 in Japan -
- 2018年10月6日(土) 千葉県 幕張メッセ国際展示場1~3ホール
- 2018年10月7日(日) 千葉県 幕張メッセ国際展示場1~3ホール
出演者 田村ゆかり / 神楽坂ゆか / 120600mAh -Metal Ampere Hour- / 風の香りと太陽 / スイミィスイミィ / Charlotta Mueller / 田村ゆかり(Voice Actress) / Don't MOVE / and more
- 田村ゆかり(タムラユカリ)
- 2月27日生まれ、福岡出身の声優アーティスト。1997年にCDデビューを果たし、声優および歌手としての活動を始める。いずれも精力的な活動で着実に評価を集め、2008年には声優として3人目となる日本武道館公演を行った。2016年8月にアミュレートへと移籍し、2017年には5pb.Records内の新レーベルとしてCana ariaを設立。同年9月には神奈川・横浜アリーナで2年3カ月ぶりのワンマンライブ「20th Anniversary 田村ゆかり LOVE ♡ LIVE2017 *Crescendo ♡ Carol*」を行い、11月にはCana ariaレーベル第1弾作品となるミニアルバム「Princess ♡ Limited」を発表した。2018年2月にはレーベル第1弾シングル「恋は天使のチャイムから」、続いて8月に第2弾シングル「永遠のひとつ」をリリース。10月には千葉・幕張メッセ国際展示場1~3ホールでの2DAYSイベント「ゆかりっく Fes '18 in Japan」に参加する。