ナタリー PowerPush - たむらぱん
分析不能の特別な曲 勝負シングル「ラフ」完成
何が当たり前なのか? ってことをよく考える
──2曲目の「ズンダ」で歌われてることも「ラフ」とつながってますよね。
はい。前半だけ聴くとテンションも高いし、楽しい感じで終わっちゃいそうなんですけど(笑)。毎日を「ズンダズンダ」と踏みしめて歩いてる人たちに対する応援歌っていう雰囲気もあるんだけど、同時に「目標を達成しちゃった後ってどうなるんだろう」という気持ちもあって。例えば大学受験を目指してがんばった人って、合格しちゃった後、何したらいいかわかんなくなったりすることも多いと思うんですよ。いろんなことが身について、もしかしたら地位とかも上がってるかもしれないけど、全部いいことばかりでもないかもしれないなって。
──そうですね、確かに。
もしかしたら、そのこと自体を後悔するかもしれないし。曲の中では「1年前とは違ってる」とか「ちゃんとその姿を見てる人がいるから大丈夫」ってことも歌ってるんだけど、その一方で「失ってるものもある」ってことを自覚していたいんですよね。
──さっき話してた「見落としてる部分がある」ということと同じですよね。例えば勉強をがんばれば、その他のことをやる機会を失うことでもあるっていう。
そうそう。それ以外のことに触れられないっていうのが、良いことなのか悪いことなのか。時間の経過とともに下がっていきたくはないけど、何かが増えれば何かが減っていきますからね。ということは、人はいつも一定なのかも……って、今思ったんですけど(笑)。
──まあ、巨大な才能を持ってる人って、その分どこか大きな欠点を抱えてるって言いますからねえ。でもたむらぱんさんはバランスいいと思いますよ。音楽だけじゃなくて、絵を描いたり、ビジュアルのことにもかかわってるし。
ひとつのことだけで「これが自分の仕事です」って言えないところが欠点かもしれないし(笑)。でも、いろんなことがやりたいんですよね。それも「見落としたくない」ってことかもしれないけど。
──まあ、見落としますけどね。というか、ほとんどのことを見落としてる気もする。見てるようで見てなかったり。
そうなんですよねえ……。「マトリックス」じゃないですけど、こうやって(と目の前の紙コップを見る)見えてると思ってるものも、もしかしたら嘘かもしれないし。それが本当だって思えれば安心して生きていけるんですけど。
──モノを見るっていうこと自体、脳のなかで情報処理をしているだけですからね。他の人と同じように見えてるかどうかは証明できないんですよね、厳密に言うと。
うーん。じゃあ……って続けちゃいますけど(笑)、何かを見たときに、それが普通である、普通じゃないっていう前提はどういうふうに決まったんですかね?
──えーっと……(笑)。
(笑)あの、「ラフ」のPVを作るときも、そういうことをイメージしてたんですよね。手の部分が足になってても「普通の人」というか、それが当たり前になってる雰囲気にしてほしいって。星新一の小説の中にそういう話があるんですよ。地球人がある星に行くんですけど、そこの人たちは唇とオシリの位置が入れ替わってるんですよね。だからキスするときはオシリ同士をくっつけるんですけど、その地球人が女の人の唇を奪おうとしたら……。
──そこはオシリだったっていう。アブノーマルな人になっちゃいますね。
そうそう。何が当たり前なのか? っていうこともよく考えますね。当たり前と当たり前じゃないことのギャップに対して、寂しいなって思ってるのかもしれないけど。
「自分って小さいな」って気づく曲
──そして3曲目の「伝心棒」はピアノの弾き語り。ブレス(息づかい)まではっきり聞こえるテイクが印象的でした。
「近い」って言われます(笑)。他の人の作品でも、ブレスが聞こえてくるのが好きなんですよ。気合とかテンションがわかるじゃないですか。レコーディングしてるときはたまにモメますけどね(笑)。ちょっと(ブレスの音が)デカすぎないか? とか。でも今回はそのままやりたくて。
──たむらぱんさん自身の息づかいが伝わりますよね。
そうかも。曲の内容としては「ラフ」「ズンダ」ときて、最後に「自分って小さいな」って気づくっていう。今まで「平和」とかっていうテーマには一切触れたことがなかったんですけど、「ラフ」では比喩っぽく想像できるようにしてるんですよ。ちょっと世界規模ってところもあるんですけど、「伝心棒」では「やっぱり小さいな、自分」ってところで終われた気がしていて。広いことを考えるためには、もっと近いところを見たほうがいいとも思ったり。シングルの締めとしてはいいんじゃないかな、と。
──最初にも言いましたけど、たむらぱんさんの人間性が出てるシングルだと思うんですよね、やっぱり。
客観的なイメージでは書いてるんですけど、もしかしたら主観の部分が強いかもしれないですね、今までよりも。そこはもともと信じてるところというか、音楽は(自分を)わかってもらうためのツールだとも思うし。でも難しいですよね。例えば普通にお仕事してて「この仕事で俺のすべてがわかってしまう」ってことになったら、できなくなっちゃうことも多いと思うし。まあ「だからどうなんだ?」って話ですけど(笑)。
──つい考えてしまうっていう(笑)。
そうですね(笑)。でも自分が表現してる時点で、自分じゃないわけはないので。そこは伝わるんだろうなって思ってます。
全国ワンマンライブツアー
「パンダフルツアー」
- 2011年2月12日(土)
東京都 代官山UNIT
OPEN17:30/START18:30
- 2011年2月17日(木)
福岡県 DRUM Be-1
OPEN18:30/START19:00 - 2011年2月19日(土)
大阪府 UMEDA AKASO
OPEN17:30/START18:30 - 2011年2月20日(日)
愛知県 ell.FITS ALL
OPEN17:30/START18:30 - 2011年2月25日(金)
宮城県 仙台CLUB JUNK BOX
OPEN18:30/START19:00 - 2011年2月26日(土)
新潟県 新潟LOTS
OPEN17:30/START18:30 - 2011年3月6日(日)
東京都 LIQUIDROOM ebisu
OPEN17:30/START18:30
たむらぱん
作詞・作曲・アレンジはもちろん、ジャケットやWEBサイトのアートワークまで手掛けるマルチアーティスト・田村歩美のソロプロジェクト。2007年からMySpaceにおいて自ら楽曲プロモーションを開始。4カ月で1万人のファンを獲得し、18万PV、24万回のストリーミング再生を達成したことが大きなきっかけとなり、日本初の「MySpace発メジャーデビューアーティスト」として、2008年4月にデビューアルバム「ブタベスト」をリリースする。 その後3枚のシングルを経て、2009年6月に多くのCMやTV番組のタイアップ曲を含む2ndアルバム「ノウニウノウン」をリリース。その後、自身初となる全国ワンマンツアー「世界パンタム級ツアー」を敢行。東京は追加公演も含めてチケット完売という大盛況ぶりで幕を下ろした。さらに「ゼロ」のビデオクリップではイラストレーター田村歩美としてSTUDIO4℃とコラボレーションを行い映像制作にもたずさわるほか、shing02の楽曲にボーカルとして参加、ロッテ「Fit's」CM曲の歌唱など、多岐にわたる活動でその才能を発揮している。