TAKU INOUEがMori Calliope、星街すいせい、ONJUICYと描く一夜の物語 (2/2)

いつかMori Calliopeと一緒に

──「ALIENS EP」は時間の流れを意識して制作されたとおっしゃっていましたが、リードトラック「Yona Yona Journey」はちょうどピークタイムにあたりますよね。

そうですね。ちょうど深夜1時から2時くらい。この曲は「3時12分」の次に作り始めたもので、そのときから「Calliopeさんにボーカルをお願いしよう」というのは決めていました。

──Calliopeさんをボーカリストに選んだ理由は?

以前から彼女の曲を聴いていてラップも歌声もすごくよくて、いつかご一緒したいなと思っていたんです。

TAKU INOUE

TAKU INOUE

──「Yona Yona Journey」の歌詞はCalliopeさんとの共作です。

流れとしては先にサビの歌詞だけ書かせてもらって、それをCalliopeさんにお渡しして。オンジュくんへのオーダーと同じように「エイリアンをキーワードにしてほしい」「時間の表記も入れてほしい」とお願いして、あとはお任せです。英語詞がメインでありながらサビでバチっと日本語に切り替わるところがすごく好きで、ネイティブな英語だからこそ生まれるグルーヴ感もあって気に入っていますね。

Mori Calliope

Mori Calliope

──この曲ではサックスがフィーチャーされていますね。

これまでにいろんな作品でお世話になってきた武嶋聡さんに吹いてもらいました。生の楽器を入れることでジャズ感が増すというか、音楽に血が通う気がしますね。聴いてると1人で盛り上がっちゃいます。

TAKU INOUEが歌う理由

──3曲目の「Club Aquila」はTAKUさんが歌っている曲です。2曲目までボーカリストを選んで曲を書いていますが、ここでなぜ自ら歌うという選択をされたんでしょうか。

「3時12分」を配信リリースしたときに「あれ? イノタクが歌うんじゃないんだ」というリスナーからの反応が少なからずあったんです。それをレーベルのスタッフが見つけて「今回は1曲くらい歌いましょうか」と提案されて(笑)。僕が歌うという前提で作りました。とはいえ、基本的にほかのボーカリストの方に歌ってもらうスタイルでやってきたので、自分の声に合う曲調がわからなくてだいぶ苦労しましたね。収録順だとリード曲の「Yona Yona Journey」と「3時12分」をつなぐ役割なので、歌い上げるより早口のほうが合うだろうと、歌詞については少しラップっぽく言葉を詰めながら書いてみました。

──この曲の舞台はまさにクラブですよね。

宇宙のどこかにある架空のクラブという設定で、そこの様子を描写するような歌詞にしました。

──ご自身で歌う歌詞となると、ほかのアーティストに歌ってもらう内容とは変わってきますか?

そうですね。自分の気持ちをグイグイ出す歌詞にはならない。夜に出かけて“Club Aquila”という場所にたどり着く……収録曲5曲をまとめるストーリーの要になればと思いました。

──「わし座」というフレーズがいいですね。

僕は星座の名前を歌詞にするのが好きで、「今回はわし座にするか」という軽い気持ちで入れてみました。深い意味はないです。

TAKU INOUE

TAKU INOUE

TAKU INOUE

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3時台を任される

──7月に配信された「3時12分」の反響はいかがでしたか?

アッパーな曲調でもないんですけど、意外とみんな楽しんで聴いてくれたりクラブで流してもらえたりしてすごくうれしかったですね。僕としてはリスナーに求められてる音楽とは少し違うものを作ってみたんですけど、好意的に聴いていただけて、今後も攻めていって大丈夫だなと安心できたところがあります。「ALIENS EP」の中で唯一の既発曲ですが、「ALIENS EP」を構成する1つとして聴くと、また違う風景が見えてくると思うので、サブスクであってもぜひ収録曲順に聴いてみてください。あと、「3時12分」をリリースしてから、DJで3時台を任されることが増えました(笑)。

TAKU INOUE

TAKU INOUE

──(笑)。最後の曲は「Taillights(Outro)」。このアウトロで表現されているのは3時12分以降の出来事ですね?

そうですね。「チュンチュン」という鳥の鳴き声を入れてみたりして、クラブの帰り道というイメージで作りました。実は締め切りギリギリでこの曲を制作していたんですけど、そのときにすでにジャケットができあがっていて。カセットテープを持っているこのビジュアル(通常盤ジャケット)に関連して、冒頭に「カチャッ」というカセットテープを再生する音も入れました。環境音を入れると没入感が増すので、好んで入れがちですね。

──初回限定盤には「TAKU INOUEの3時12分に聞くラジオ - GUEST 星街すいせい -」も収録されています。

すいせいさんにゲストで来てもらってとりとめのない話をしています。今回に作品に関連して「夜は何してますか?」「宇宙人っていると思いますか?」とか。楽しい収録でしたね。

星街すいせい

星街すいせい

──「ALIENS EP」が完成して、何かこの先の展望は見えてきましたか?

先のことは具体的に決まってないんですけど、「ALIENS EP」はジャズというテーマでうまくまとまったので、また違うコンセプトで何か作りたいですね。最近はロックをよく聴くので、そっちの方向性でもやるのもありかなと。常に面白いポップスを作り続けていきたいです。

TAKU INOUE

TAKU INOUE

プロフィール

TAKU INOUE(タクイノウエ)

サウンドプロデューサー / コンポーザー / DJ。「アイドルマスター」シリーズや任天堂とCygamesによるアクションRPGアプリ「ドラガリアロスト」などゲームの楽曲をはじめ、DAOKO、Eve、ナナヲアカリ、STU48、月ノ美兎、HOWL BE QUIETといったアーティストのサウンドプロデュースや楽曲提供を担当する。2021年7月にTOY'S FACTORY内のレーベル・VIAより「3時12分 / TAKU INOUE&星街すいせい」でメジャーデビューした。12月にはコンセプト作品「ALIENS EP」をリリースする。