音楽ナタリー PowerPush - 瀧川ありさ
「七つの大罪」新EDでデビュー! 期待の新人を作りし“バンド”と“沼”と“誰か”
誰かのためにクッキング部から転部する
──では言ってしまえば、ソリストになったのは“誰か”のため?
そうですね。逆に自分のこととなると、いろんなことがどうでもよくなるんですよ。1年間沼にいたのも、1人で音楽活動することに躊躇していたのもそういう理由ですし(笑)。誰かのためじゃないとがんばれない。バンドをやっていたのも、もちろん楽しいからっていうのが一番の理由ではあるものの、3人のためにカッコ悪い演奏や歌は見せられないっていう気持ちがあったからでもあるんです。中2のとき軽音楽部に入ったのにもそういう理由がありますし。
──誰かのために軽音に?
「忙しい部活はやめなさい」って母親から言われたこともあって、中1の頃、ほとんど活動休止状態のクッキング部にいたんですけど、ある日の放課後「私はこのまま誰とも深く関わることなく死んでいっちゃうのかなあ」みたいなことを考えながらグラウンドで運動部の子たちを見てたら、みんなランニングをしてるときにイヤホンを耳に突っ込んで何か音楽を聴いてたんですよ。で、運動部の友達に話を聞いてみたら「音楽を聴いてると練習の励みになる」って言っていて。「がんばっている人の支えに」って言っちゃうと上から目線すぎるし、大げさなんだけど、それで音楽をやっていれば誰かと関われるって思ったんです。あとひとりっ子だったので、誰かと何かを一緒に作るのがすごく楽しそうで(笑)。さっきもお話した「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」を観たとき、音楽ってほかのメンバーやプレーヤーの人たちだけじゃなくて、大勢のお客さんとも共有できるんだって気付いたのも軽音部に入ったきっかけであり、私の大きな転機の1つだったって感じですね。
自分のことはどうでもいいタイプなので
──中学2年生の頃から本気で音楽で食っていくことを射程に入れていたわけだから……。
もう10年以上ですね(笑)。
──じゃあ苦節10年(笑)、このたび「Season」でメジャーデビューを果たすことになりました。デビューのきっかけは?
バンドをやっていた頃からお世話になっていたレコード会社の人に、ソロになってからもデモを聴いてもらっていたからですね。
──そして、その曲はアニメ「七つの大罪」の新エンディンググテーマです。で、今「七つの大罪」のテーマソングを歌っているのは、いきものがかりと、FLOW×GRANRODEOです。
なのでビックリしたし、正直な話ちょっとビビってます(笑)。でも、そんなにマンガに詳しいタイプではないんですけど、もともと「七つの大罪」の原作は好きで読んでいたので、本当にありがたいし、うれしいなっていう気持ちのほうが大きいですね。
──ただ、レーベルは新人シンガーソングライターさんに高いハードルを課したなあっていう気はしてるんですよ。アニメソングとなると、沼時代に買ったファイヤーバードを思うがままにかき鳴らしながら、思うがままに自分の好きなことを歌うわけにはいかない。エンディング曲にはその日放送されたエピソードを締めくくって「来週もまた観てね」ってアナウンスする機能も求められるわけだから。
むしろそうやって自分の音楽が何かに携われること、テーマソングであるっていうことがありがたかったですね。それにバンド時代に映画の主題歌を担当させてもらったときに気付いたんですけど、音楽を通じてほかの芸術とかかわれることってすごく楽しいので。曲を作るときの刺激にもなりますし、音楽ファン以外の方にも聴いてもらえる。曲を知ってもらうための間口が広くなることもすごくうれしいことですし。なのでなんて言うんだろう? ……なんか全然大丈夫でした(笑)。
「七つの大罪」に寄り添って楽曲を生かす
──じゃあ制作はスムーズでした?
この曲はデビューのために書いたものではなくて、もともとデモとして提出していた曲だったので、「Season」っていう曲を作るっていう意味では特に悩んではいないですね。
──すごくアップリフティングではあるんだけど、響きはどこかメロウでちょっとセンチメンタル。サビもアガりはするんだけど、バカみたいにアガりっぱなしにはならない。瀧川さんの歌声もメロディラインも、ちょっと抑制の効いた聴かせるものになってますよね。
ありがとうございます。そのデモを聴いた「七つの大罪」のスタッフさんに「いいね」って言っていただいて。それもデビューのきっかけなんです。
──作詞も特に悩まず?
「七つの大罪」を読んだとき、自分が今まで感じていた違和感をきちんと描いてくれている気がしたんです。自分は善意のつもりで、誰かのために何かをしているんだけど、それ自体がその相手であったり、ほかの誰かであったりにとっては罪になってしまうこともあるんじゃないかって。
──確かにそういうストーリーですよね。誰かを守るため、誰かとの明かせない秘密を守るためにあえて罪を犯した人たちがメインキャラクターですし。
私もバンドのメンバーのため、って言ってはいるけど、もしかしたらそんなの独りよがりな考え方なのかもしれないわけですし。だから「七つの大罪」のために思ってもないことをムリして歌ったつもりはまったくなくて。普段自分が思っていることをそのまま書けたし、新しい歌詞が乗ったことでこの曲がより生きるようになったなって思ってます。
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- メジャーデビューシングル「Season」 / 2015年3月4日発売 / SME Records
- 通常盤 [CD] / 1300円 / SECL-1646
- アニメ盤 [CD+DVD] / 1500円 / SECL-1647~8
CD収録曲
- Season
- ロストラブレター
- ふたりよがり
アニメ盤DVD収録内容
- 「七つの大罪」ノンクレジットエンディング
瀧川ありさ(タキガワアリサ)
5月8日、東京都生まれのシンガーソングライター。幼少期より音楽に親しみ、小学2年生の頃から本格的な歌手を目指す。中学2年生のときからバンド活動を開始し、高校時代には彼女の手がける楽曲群が数多くのコンテストで評価を集める。高校卒業と前後してバンドが解散すると1年のブランクののち、ソロアーティストとして活動を再開。2015年3月4日、アニメ「七つの大罪」1~3月期のエンディングテーマにして、デビューシングル「Season」をリリースする。
2015年3月27日更新