SMAPが歌えば名曲なのに！

──じゃあ、楽曲提供もしてみたい？

はい。自分の声質には合わない、自分では歌えないような曲も、誰かに歌ってもらえれば救われます。

──自分以外が歌う前提で曲が浮かぶことも？

ありますよ。「SMAPの5人に歌ってほしいな」って思って曲を書いたり。でも、私の頭の中ではあのユニゾンで歌われて完成してるんですけど、自分が弾き語ったデモをスタッフに出すとボツになるんですよ。だから悔しくて、「SMAPが歌えば名曲なのになあ」って（笑）。

──ははは！（笑） とはいえやっぱり瀧川さんはシンガーでもあるわけで。ただお話をお聞きする限り、どうも歌に関しては曲ほど自己評価が高くないような。

そうなんです。歌に関してはまだまだなので、だからこそ「Again」を書いたわけですし、この曲を歌い続けることで自分の歌のアイデンティティを確立したいと思ってます。そう、歌のアイデンティティが足りてないんですよ。ソングライティング面では、“らしさ”らしきものが出ているみたいなんですけど、歌については悩みが尽きなくて……。なんというか、まっすぐすぎるんですよ、私の歌って。

──だからいいんじゃないですか？ というか、それがアイデンティティなのでは？

確かにそこを気に入って皆さん聴いてくださっているとは思うんですけど、でも、例えば水曜日のカンパネラさんのような存在を目の当たりにすると、私のコンプレックスが大変なことになるんですよ。なんというか、私の声は今の時代の声じゃないんです……。

──今まさに、地のネガティブが発動してますね。でも、それこそ「Again」に込めた思いとしてご自身がおっしゃったように「そのままでいいよ」と肯定してあげればよいのでは？

ホントにそうですね（笑）。うん、声がまっすぐな分だけ「Again」の歌詞も私だからこそ伝えられるんだと思ってがんばらなくちゃいけないですね。

早くバンドで全国を回りたい

──そのメッセージを届ける舞台として、6月に東名阪ワンマンライブツアーがありますね。

この1年、ずっとインストアイベントで、アコギ1本で全国を回らせてもらったんですけど……それもけっこう悩んだんですよ。と言うのも、自分はアコギの人間じゃないんです。ずっとエレキギターを抱えて歌ってきた人間なんです。私の感覚としては、エレキとアコギはギターとベースくらい違うんですよ。だから最初はアコギの演奏に苦労して。

──ホントに悩み多き人生ですね。

それを言ったら、自分の見え方にも悩んでますね。これは最初から懸念していたことでもあったんですけど、やっぱりシンガーソングライターという肩書きが、ときに足かせにもなってしまうというか……。乱暴に言うと、例えばバンドが好きな人はシンガーソングライターにあまり興味がないし、シンガーソングライターが好きな人はシンガーソングライターしか聴かない、みたいな。

──シンガーソングライターというと、ギター1本で弾き語りしているようなイメージもありますしね。

最近はアコギを持って歌う女性アーティストの方も増えて、ギタ女なんていう言葉も生まれましたし。そういう先入観みたいなものは無視できなくて、実際インストアではない、バンド編成での私のライブを観てびっくりされる方もいらっしゃるんですよ。でも、「バンドの中の自分が本来の姿なんです」って（笑）。ただその苦手だったアコギにも最近はようやく慣れて、仲よくなれてきたんですよ。だから今回のシングルの曲にもアコギが入ってるんですけど。

──一緒に全国のインストアイベントを回ってきた分、アコギへの愛着も湧き。

はい。一方、全国の行く先々で「早くバンドで来たいな」って思ってたんです。そして今回、初めてバンドで大阪と愛知に行けるので、もちろん不安やプレッシャーもあるんですけど、すごくうれしいんです。東京公演はLIQUIDROOMという昔から憧れていた会場ですし、本当に楽しみです。この東名阪ツアーを成功させて、愛知、大阪以外の都市も回れる全国ツアーにつなげていきたいですね。