100点満点を目指した「Roar」と「XX」
──6曲目「Roar」と8曲目「XX」は共に竹内さんが作詞を、GRPさんが作曲とアレンジは手がけています。この2曲には竹内さんの今の思いが強く打ち出されているような印象を受けました。
そうですね。自分が消化しきれていなかった気持ちを歌詞にしたいという思いがあってGRPさんからすごくいいトラックをもらえたので、そこに今までにないくらいの攻撃的な歌詞やメロディを乗せるのもアリかなと思ったんです。
──歌声にもそういったニュアンスは出ていますよね。
はい。そういうスイッチは自然と入りましたね。ただ、「XX」も含め、この2曲は自分のエゴがめちゃくちゃ詰まっている楽曲なので、歌のレコーディングはいつも以上に時間をかけたかもしれないです。「本当にこれでいいのか?」と自問自答しながら、いくつもいくつもテイクを重ねていって。自分の言葉で、自分の思いをしっかり書き切ったからこそ、完璧を、100点満点を目指そうとがんばりました。
──一方の「XX」には、これまでと今、そしてここから先の未来に向けたリアルな思いが描かれています。
こっちのトラックは感動的なメロディを持っていたので、そういう雰囲気の歌詞が合うんじゃないかなと思って。ただ、この歌詞はレコーディング前日の夜までまったく書けてなかったんですよね。「Roar」のブリッジの歌詞でちょっとつまずいてレコーディングが長引いてしまったから、翌日に録らなきゃいけない「XX」の歌詞に全然手をつけられなかったんです。「これ、間に合わないかもな」とか思いながらいろいろ考えていたところ、出だしの「俺もそう 君もそう」ってフレーズがふと浮かんで。そうしたらもうバーッと手が止まらなくなっちゃったんですよ(笑)。歌詞とメロディが同時に出てきて、それをとにかく書き留めていく、みたいな。
──堰を切ったように思いが一気にあふれ出してきたと。
そうそう。で、できあがった歌詞を見たら、音源になっているものの2倍くらいの長さがあって(笑)。最初はめちゃくちゃ早口でラップっぽくすればいいかなと思ったんですけど、それだと伝えたいことがぼやけるかもしれないなと感じたので、ギュッと凝縮して今の形になった感じですね。作詞に関しては、書き始めてから書き上がるまでが今までで一番短かったし、そこで描かれていることも一番ストレートな内容になっていると思います。トラックも含め、今作の中では一番気に入っている曲かな。だからこそ、「XX」をミニアルバムのタイトルにもしましたし。
フルアルバムでもっと深い表現をしたい
──竹内さんのリアルな思いが詰め込まれた2曲に挟まれて、7曲目には変態紳士クラブのGeGさんがプロデュースを手がけた「I Believe Myself(Prod. GeG)」が収められています。この歌詞はご自身で書かれたものではないですけど、言ってみたら竹内さんの生き様を強くアピールする内容で。そういった意味で、このラスト3曲の流れにはすごく胸を打たれました。
自分を強く信じることは僕自身、大切にしていることだし、だからこそこの曲を聴くと改めて自分も元気付けられるところがあって。配信リリースして以降、自分でもめちゃくちゃ聴いている曲ですね。この曲があったから「Roar」や「XX」のようなストレートに思いをぶつける歌詞を書いてもいいかなと思えたところもあったんですよ。「MIRAI(feat.$HOR1 WINBOY)」(2020年4月に配信された楽曲)とか「「YOZORA(feat. VILLSHANA & $HOR1 WINBOY)」のような曲でも自分のことをリアルに描いてはいましたけど、まだどこかオブラートに包んでキレイに聴かせようとしているところがあった。でも、この曲をきっかけに何も包み隠さず、自分の思いを伝える歌詞の書き方ができるようになったんですよね。そこはGeGさんのプロデュースによって気付かせてもらえたところだと思うので、めちゃめちゃ感謝してます。
──前回のインタビューで、「一緒に曲を作ってみたいと思っていた人とつながることができた」「あの人と一緒にやれるんですよ!」と匂わせていたのがGeGさんとのコラボなんですね。改めて制作の過程を振り返るとどうですか?
めちゃめちゃ楽しかったし、勉強になりました。「ここからどんなふうに、どんな気持ちで音楽をやっていきたいか」ということを最初にZoomでお話させてもらって。そのうえで、「こういう曲をやってみたいです」と、変態紳士クラブさんの曲をリファレンスとして提示させてもらったんですね。そうしたら、「大きいスピーカーで聴くか、スマホで聴くか。どっちがいい?」と聞かれたんですよ。俺は普段スマホで音楽を聴いているのでそう伝えたら、結果としてこの曲が上がってきて。まさに俺が求めていた、大好きなタイプの楽曲を作っていただけたんですよね。GeGさんは間違いなく天才ですね。いやー、本当にすごい経験をさせてもらいました。
──音楽を聴く環境によってサウンドメイクのアプローチが変わってくるということなんでしょうね。
そうなんだと思います。この曲は歌詞の1行1行に気持ちをグッと込めることができるので、ライブで歌うとめちゃめちゃ気持ちいいですね。制作中にはGeGさんが「声がすごくいいね」と何度も褒めてくれたし、全部の作業が終わったときには「もう一度、機会があったらぜひ一緒にやりましょう」と言ってくれたんですよ。俺のInstagramのストーリーにもよく反応してくれるし。すごく優しい方でうれしかったです。
──竹内さんは来年1月9日、21歳の誕生日を迎えます。その直前に“20歳”の今の気持ちを刻んだ本作がリリースできたのはすごく大きいのではないでしょうか。
本当にそう思います。このミニアルバムを作れたことで、やっと自分がやりたい音楽の方向性が固まった気がするんですよ。そんな意味のある作品を21歳になる前の、人生の1つの節目である20歳のうちに出すことができてよかったです。このミニアルバムを作り終えてみて、今までに僕がやってきたような音楽性はたぶんこれで終わりかなって気もしているんですよ。
──新たなフェーズに突入するというイメージですか?
そうですね。今回の作品を通して、GeGさんとやった「I Believe Myself(Prod. GeG)」や、GRPさんとやった「Roar」「XX」の雰囲気が自分的に「キタな!」という感じだったので、ここからはその方向性を突き詰めていこうかなって思ってます。
──そういう意味では、未来へのヒントは本作にちりばめられているということでもありますね。
うん、そう思います。今度はフルアルバムで、もっといろいろ深いところまで表現したいです。
──楽しみにしています! ちなみに「XX」には「おばあちゃんにCD渡す約束を果たせる時がくる」というラインがありますが……。
もちろんCDができたらソッコー渡しに行きますよ(笑)。待っていてくれていると思うので。
プロフィール
竹内唯人(タケウチユイト)
2001年1月9日生まれ、東京都出身。2019年にABEMA「オオカミちゃんには騙されない」に出演して一躍脚光を浴び、俳優、モデルと多岐にわたって活動している。同年10月には「Only Me」でアーティストデビューを果たし、12月には2ndシングル「CINDERELLA」を発表。2020年2月に配信がスタートした3rdシングル「ニビイロ」は、自身初のドラマ主題歌タイアップ曲となった。2021年7月にメジャー1stデジタルシングル「After the rain」、12月にメジャー1stミニアルバム「XX」をリリースした。
竹内唯人 (@Takeuchiyuito) | Twitter