竹内唯人インタビュー|20歳の今の思いを包み隠さずさらけだした「XX」

竹内唯人がメジャー1stミニアルバム「XX」(トゥエンティ)を12月1日にリリースした。

現在竹内が20歳であることから題された「XX」には、GeG(変態紳士クラブ)、UTA、SHUKI(I Don't Like Mondays. / Dr)、MATZ、辻村有記、GRPという多彩なクリエイター陣が参加。竹内の盟友・$HOR1 WINBOYとラッパー・VILLSHANAとのコラボレーション曲「YOZORA(feat. VILLSHANA & $HOR1 WINBOY)」や竹内が作詞した表題曲「XX」と「Roar」など計8曲が収録される。

音楽ナタリーでは竹内にインタビューし、彼のリアルな思いが詰め込まれた本作の制作過程やレコーディングについて聞いた。

取材・文 / もりひでゆき撮影 / 映美

堂々とステージに立てるようになってきた

──今年7月にメジャーデビューしてから約5カ月が経ちましたね。

はい。コンスタントにリリースできていますし、今の状況を「自分の好きな音楽をちゃんとやれてるな」と噛みしめながら、充実した時間を過ごせてますね。

──前回の取材で、「以前ほどはハイペースでリリースしない」とおっしゃっていましたけど(参照:竹内唯人、ニューシングル「After the rain」の制作を通して生まれた決意と探究心)、7月に「After the rain」、9月に変態紳士クラブのGeGさんをプロデュースに迎えた「I Believe Myself(Prod. GeG)」、10月にVILLSHANAさんと$HOR1 WINBOYさんをフィーチャーした「YOZORA(feat. VILLSHANA & $HOR1 WINBOY)」、11月に「Land of Dreams」と新曲が続々と届けられていますよね。

確かにそうですね。ほぼ毎月配信リリースしてたので、結局以前と変わらないくらいハイペース。まあ、いい曲がどんどんできていたので、いち早く届けたいという気持ちからそうなっちゃった感じですね。

竹内唯人

竹内唯人

──ここ最近は「EXIA Presents KANSAI COLLECTION 2021 AUTUMN&WINTER」(2021年9月開催のイベント)などのイベントでライブパフォーマンスも経験されています。

そうですね。「After the rain」「I Believe Myself(Prod. GeG)」「YOZORA(feat. VILLSHANA & $HOR1 WINBOY)」はお客さんの前で歌わせていただく機会をたくさんもらっていて。どれも難しい曲だからライブは緊張しますけど、けっこういい評判をいただけています。

──自分なりのライブスタイルは見えてきました?

ぶっちゃけまだそこまで固まってはいないと思いますけど、少しは堂々とステージに立てるようにはなってきたんじゃないかな。僕は1年前に「尼FES. Jack in the BOX 2020」(2020年11月開催のイベント)で初めてライブを経験したんですけど、当時の映像を見返すとライブ慣れしていない感じがすごいんですよ。ライブというよりカラオケ感があるというか(笑)。でも、そこからいろんな経験をさせてもらったことで、今はしっかりライブで自分なりの表現をできるようになったと思うんです。お客さんと一緒に、その空間、時間を楽しむ余裕も出てきたし。今年の11月20日にはまた「尼フェス」に出られることになったので(取材は11月上旬に実施)、そこでは成長した自分の姿をしっかり見せたいなと思っています。そろそろワンマンライブもやりたいですね。

新たな出会いで得た、有意義な制作時間

──ハイペースで配信されていた楽曲群は、どれも新作ミニアルバム「XX」をめがけて制作されたものだったんですか?

ミニアルバムを作ろうかという話になったのは、「After the rain」をリリースした直後、「I Believe Myself(Prod. GeG)」のマスタリングをしている時期だったと思います。そこから「Land of Dreams」を含めて、いろいろな曲を作り始めた感じでした。制作期間としてはだいたい1カ月間くらいだったかな。けっこうギュッと集中してやった感じ。「YOZORA(feat. VILLSHANA & $HOR1 WINBOY)」に関しては、もともとリリースすることも考えず、$HOR1くんとVILLくんと一緒に遊び感覚で作ったものだったんですよ。でもすごくいい曲になったから先行配信して、ミニアルバムにも収録しようということになったんです。

──今作には辻村有記さんやI Don't Like Mondays.のSHUKI(Dr)さん、GRPさんといったクリエイター陣が参加されています。そういった新たな出会いを求めたのは竹内さんの希望だったんですか?

最初はそこまで深く考えていたわけではなかったんですけど、GRPさんとは今回、一緒にやってみたいなとは思ってましたね。以前、一緒に食事をしたことがあったし、GRPさんの作る曲が個人的に好きだったから。J-POPのセオリーを生かしつつ、でもヒップホップっぽいサウンド感を持った曲を作れる人って、僕の周りではGRPさんしかいなかったから。あと辻村さんとSHUKIさんに関しては、レーベルを通して紹介してもらった感じでした。そういった今までに関わったことのない人たちや、自分ではあまり聴いてこなかった音楽と触れ合うことが今の自分にとって一番やらなきゃいけないことだなと思ったので、今回はスタッフに協力してもらいながら新しい人脈を増やした感じですね。結果として制作はすごく有意義で楽しいものになりました。

──辻村さんが作詞、作曲、アレンジを手がけた「Land of Dreams」は、これまでの竹内さんの楽曲にはなかった独特のリズムやポップなメロディが印象的な曲になっていますね。

こういった曲は今まで聴いたことがなかったし、「これ、自分に合うのかな?」という不安は最初ありました。ただ、「18禁の恋がしたい」(Paraviの恋愛リアリティドラマ)の主題歌になることが決まっていたので、この疾走感のあるサウンドはそこにばっちりハマるはずという確信もあって。自分の歌を曲にどう落とし込むかが大事になってくると思ったので、けっこう気合いを入れて臨みました。

竹内唯人

竹内唯人

竹内唯人

竹内唯人

──レコーディングはスムーズに進みました?

けっこう大変でした(笑)。辻村さんが細かくディレクションしてくださって、それを実際に表現することがなかなかできなくて。ただ、何度かテイクを重ねることでだんだん方向性が見えてきて、やりながら経験値を積んでいった感じでした。辻村さんの狙いが明確だったし、それをしっかり表現できたからこそ、ちゃんと新しさを感じられる曲になりましたね。サビの歌い方とかフェイクとか、けっこう自由にやらせてもらったところもあるんですけど、でもこの曲を自分のエゴだけで歌っていたら、きっと最悪な仕上がりになってたと思う。辻村さんのイメージに委ねて正解でしたね。

──Bメロの譜割りが独特ですけど、そこもうまく乗りこなせていて。日頃からラップミュージックに親しんでいるだけあって、そのリズム感はさすがだなと思いましたよ。

あそこのメロディ、すごいですよね(笑)。どうやったらこんなメロディが浮かぶんだろうっていう。どこにブレスを置くかとか、言葉を一瞬止めるところとか、そういう部分はめちゃくちゃ難しかったですけどね。まあそこはとにかく曲を何度も聴きまくって体に入れていった感じでした。辻村さんは話すとすごく気さくで面白い方なんですけど、曲を聴くとやっぱ天才だなと改めて思いますね。

アイドラSHUKIアレンジのスルメ曲

──SHUKIさんは2曲に参加されていますね。「エンドロール」では作曲とアレンジ、「Last Scene」ではアレンジのみ手がけられています。

最初にお願いしたのは「Last Scene」でした。この曲はもともとアレンジまでできていたんですけど、ちょっと自分的に雰囲気が違うなという思いがあって。なのでスタッフからの提案でSHUKIさんにアレンジしてもらうことにしたんですよね。で、その仕上がりがすごくよかったので、改めてもう1曲、「エンドロール」もお願いすることにしました。SHUKIさんのアレンジは生音がメインになっているし、曲の構成や進行もキレイだし、音がごちゃごちゃしすぎていないから自分の声がよく聞こえてくるんですよ。だから歌いやすさもすごくあって。この2曲は聴けば聴くほどよくなってきますね。完全にスルメ曲。

──ともに切なさのあるミディアムテンポのラブソングになっていますよね。

これもまた最初に聴いたとき、「俺っぽくないな」とは思いました。今まで歌ってきた「ニビイロ」(2020年2月に配信されたシングル)のようなバラードとは違い、しっかり歌い上げる雰囲気ですからね。そういう意味では表現に関しては難しさもあったんだけど、でもやっぱり歌いやすさはあったかな。そこはたぶんSHUKIさんが、僕の声がまっすぐ前面に出るトラックの作り方をしてくれたからだと思いますね。

竹内唯人

竹内唯人

──SHUKIさんもレコーディングには来てくれたんですか?

はい。SHUKIさんは「歌、うまいね!」「それいいよ!」ってずっと言ってくれるんですよ(笑)。特に細かいディレクションもなく、「唯人くんっぽい感じで、語尾とかも自由にアレンジしちゃっていいからね」と。レコーディングの途中で、ちょっと声が出づらくなってしまった瞬間もあったんですけど、そのときもブースに入ってきてくれて。「声が出やすくなる体操しようか」と言われて、首を上に向けたりいろいろやったら、本当に声がよく出るようになって。「手を上げて歌うと声がよく出るよ」と言われたからそれもやってみたら本当に出るんですよ! SHUKIさんとのレコーディングはそういう部分での学びもたくさんありましたね。本当に優しくて、めっちゃ素敵な方でした。

──「エンドロール」の大サビではファルセットを使われています。「After the rain」のインタビュー時にも言いましたけど、竹内さんのファルセットはすごく心地いいんですよね。

あそこはもともとチェストボイスで歌うところだったんですよ。それを俺が勝手にファルセットに変えちゃったんだけど、「そっちのほうがいいね」とSHUKIさんに言っていただけたので、そのまま生かすことにしました。自分のファルセットを好きだと言ってくださる方がけっこう多いので、うれしいです。