竹内唯人が新作「THE FIRST」を12月10日に配信リリースした。
ABEMAの恋愛リアリティショー「オオカミちゃんには騙されない」への出演で一躍注目を浴びた竹内は、昨年10月にデジタルシングル「Only Me」でアーティストデビュー。その後ほぼ月イチのペースで新曲の配信を重ね、約1年の活動の集大成として7曲入りの本作を完成させた。作詞・作曲にも積極的に参加する竹内は今回、Matt CabやBBY NABE、MATZといった実力派クリエイターとのコライトにより、洋楽ライクな質感をJ-POP的な聴き心地へと昇華させた楽曲を多数生み出し、そのうえで多彩なボーカリゼーションを披露している。
音楽ナタリー初登場となる今回のインタビューでは、竹内唯人の音楽遍歴や本作に注いだ思いについてじっくりと話を聞いた。
取材・文 / もりひでゆき 撮影 / NORBERTO RUBEN
音楽ってめっちゃ楽しい!
──今年の10月29日でアーティストデビューから1年が経ちましたね。
歌以外のことも含めて本当にいろんな出来事があったので、あっという間の1年でした。その中で今回、これまでの作品を集大成的にまとめられたのはよかったですね。そういう意味では、この作品のためにがんばってきた1年だったとも思います。
──デビュー以降、非常に速いペースで配信シングルをリリースし続けてきました。
ほぼ月イチくらいのペースで出してきました。そこに関してはレーベルの方と相談したうえで、とにかく自分がやりたいと思った曲を1つひとつ作っていく中でいろんなことを勉強しようという狙いもあって。初めてのレコーディングのときにはリバーブのことをエコーって言ってましたから。カラオケじゃないんだから、みたいな(笑)。最近はようやく音楽的な会話もできるようになった感じですね。
──もともと音楽はずっとお好きだったんですよね?
そうですね。両親の車の中でよく音楽を聴いていたし、テレビの音楽番組なんかも観ていたので、小さい頃からずっと音楽は好きでした。当時はテレビに出て活躍する人になりたいという漠然とした夢があって、その手段の中にサッカーや音楽が入っていた感じだったと思います。とは言え、まさか本当に音楽活動ができるとは思ってなかったので、単純に「この曲カッコいいな!」みたいな感じで音楽に触れていただけではあったんですけど。
──その後、音楽への思いが強まったきっかけもあったんですか?
ありました。高校2年生の夏、文化祭でドラムを叩いたんですよ。それまでドラムを叩いたことはなかったんですけど、誘われたからやってみたら耳コピで案外うまく叩けて。「音楽ってめっちゃ楽しい!」と思いました。でも、同時に「なんで俺は後ろにいるんだろう?」とも思っちゃったんですよね。
──(笑)。ボーカリストとしてフロントに立ちたい欲求が芽生えたわけですね。
そうですそうです。もともとカラオケにもよく行ってたし、歌うことが大好きだったので、人前に出て歌いたい気持ちが強くなった。そこからですね、シンガーになりたいと本気で思うようになったのは。ちなみにその後、ドラムは全然やってないです(笑)。
同世代から受ける刺激
──歌手になるという夢を叶えるために何か始めたこともありました?
普段聴く音楽の幅を今まで以上に広げたりはしました。幼稚園くらいから父親にエリオット・ヤミンとかをずっと聴かされていたし、Backstreet Boysが好きだったりもしたので基本的に洋楽志向なんですよ。でも、そのあとスピッツとかコブクロとかJ-POPもいろいろ聴くようになって。最近はサブスクでランキング上位にある曲を、洋楽・邦楽関係なく片っ端から再生している感じです。「へえ、こんな人いるんだ」みたいにいろんな出会いがあるので楽しいですね。
──そういう聴き方をしていると必然的にジャンルレスな嗜好になりそうですよね。
そうかもしれないです。中にはアーティスト名が英語で読めない人もいるし(笑)、単純に曲が好みかそうじゃないかで聴いています。そのアーティストがどんな人なのかはまったく知らない、でも曲は好きという。
──自分の好みに合うさまざまなアーティストから影響を受けてきたことで、今の竹内唯人は形作られているんですね。
はい。それは普段聴いている音楽からの影響もそうだし、この世界に入ってからできたアーティストの友達からの影響もすごく大きいと思いますね。今、身近にRude-αっていうラッパーがいて、彼からは本当にたくさんの刺激をもらっているんですよ。Rudeくんが作る楽曲自体も大好きだし、彼と一緒に音楽の話をすると本当に勉強になるなって。
──比較的、年齢が近いからこそ惹かれ合う部分もあるんでしょうね。
それはめっちゃありますね。僕自身、今の年齢だからこそ感じる等身大の思いを楽曲に込めたいという気持ちが強いんですよ。だからこそ同世代のアーティストからはたくさんの刺激を受けます。デビュー曲「Only Me」を出してからの1年の間に、そういった自分のやりたいことはより明確になってきているし、それがどんどんできるようになっている実感もありますね。
──では、現状の竹内唯人らしさってどこにあると思いますか?
“声”じゃないかなと思います。僕の声に似ているアーティストってあまりいないなと思うし、声の高低差をはっきり出せるのも強みのような気がしていて。パッと聴いたときに「あ、竹内唯人の曲だ」ってすぐわかると友達にもよく言われますね。活動を始めた当初はあまり自分ではわからなかった部分だけど、今は確かにそうだなって思えるようになりました。そういう意味でも今回の作品には、自分らしさがかなり出ていると思います。
──自分の声がより好きになりました?
まさに! 昔は自分の声を聴くと「何この声?」って思ってましたけど、今はもう「自分の声ってこんなにカッコいいの?」「こんなにきれいな声なの?」とまで思うようになって(笑)。それはデビュー曲の時点から感じていましたけど、活動を続ける中でその気持ちはどんどん強まってます。ホントに自分の曲が大好きすぎて、家でもつい無限ループしちゃうんですよね。
勉強するべきだなと思った
──竹内さんはほぼすべての曲で作詞・作曲にもガッツリ関わっていますよね。そのスキルはどう育まれたものなんですか?
作詞も作曲もデビュー前はまったくやっていなかったんですよ。ただ、歌詞というか言葉に関しては、日常の中で「エモいな」と感じることがあったときとかにメモるようにはしていたんです。それはマメに日記を書いていたお姉ちゃんの影響なんですけど。
──どんなことを書き留めることが多いんですか?
例えば車にガソリンを入れてるときとかに、ほわーって漂ってくる匂いに対して、「この匂いって何色なんだろう?」みたいなことが気になってメモってみたりとかですかね。どうでもいいことではあるんですけど。
──普通の感覚からすると匂いを色に結びつけたりはしないですからね。そこは竹内さんならではの感性なんだと思います。ちなみにガソリンの匂いは何色だと思ったんですか?
結局わかんないんですよ(笑)。いろいろ考えたけど、答えが出ないという。でも、例えば空を見て青いなと感じるのってすごく表面的な捉え方だなとは思うので、そこからもう一歩深く踏み込んで物事を見たいと僕は思うし、歌詞にするときもそういう表現は大事にしたいなとは思っています。とは言え今はまだスキルが足りないから、いろんなクリエイターの方と一緒に作っていくことでそこを引き出してもらっている感じです。
──曲に関してはどのように作っていってるんですか?
それも感覚的なんですよね。なんとなく即興でメロディを口ずさむという。最初に作ったときは「メロン食べたーい♪」みたいな感じでしたからね。僕、メロン大好きなんで(笑)。でも、そのメロディを聴いてもらったら「けっこういいね」という反応をもらえたんですよ。自分ではそのメロディが成立しているかどうかはまだ判断できないんだけど、一応いろんなものが出てはきます。
──これまでに蓄積されてきたさまざまな音楽の情報が、ご自身のフィルターを通して自然と湧き出してくる感じなのかもしれないですね。
そうかも。デビューしてからちょっとフロウのあるラップを入れた曲を作るようにもなったんですけど、それはちょうどヒップホップをしっかり聴くようになったタイミングだったりもして。きっとラップミュージックを聴いてなかったら、まったく違う曲になっていたと思うので、聴いている曲からの影響はあるんだと思います。もちろん、そこもまた一緒に作ってくれているクリエイターさんの力があってこそではありますけどね。
──今作では、ほぼすべての曲が竹内さんを含めてのコライトという形で制作されています。そういった流れになったのはどうしてだったんですか?
最初は何もわからないなりに全部を自分だけで作るのが偉いと思っていたんですよ。作詞・作曲に竹内唯人の名前がクレジットされていることがとにかくうれしい、みたいな。でもデビューしたばかりの自分にはまだまだできないことも多いので、だったらいろいろ勉強するべきだなと思って、クリエイターさんにお願いすることにしたんです。自分から出たものがほかの方のフィルターを通ることでまた違った雰囲気になるし、それをまた自分で消化すれば想像以上のものになったりもする。そういうやり取りが面白いんですよね。
──今回は作詞・作曲共にMatt CabさんやBBY NABEさん、MATZさんらと共作した曲が多いですよね。
7月にリリースした「MOMENT」からの付き合いになるんですけど、今のチームはみんなでいろんな意見を出し合いながら1曲を作っていけるのがすごく楽しくて。それぞれの役割分担がありつつも、ギュッと一緒にやる部分もあるから全体としてのまとまりがすごくいい。それは作品全体の統一感にもつながったと思います。Mattくんのトラックは僕が好きな洋楽のテイストをすごく意識してくれているし、NABEちゃんは僕が発声しやすいメロディを作ってくれるし、この2人との相性は素晴らしいですね。
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もう俺にとって友達だよ