竹内アンナがフルアルバム「TICKETS」をリリースした。
「TICKETS」は「1曲1曲がいろんな場所、時間に連れて行く素敵な旅路のチケットになりますように」という竹内の願いが込められたアルバム。リード曲「手のひら重ねれば」や斉藤伸也(ONIGAWARA)がアレンジで参加した「一世一遇Feeling」、AFRO PARKERとのコラボ曲「Now For Ever(with AFRO PARKER)」など全11曲が収録されており、機内アナウンスを思わせるイントロおよびアウトロも収められている。
音楽ナタリーでは竹内がファンを公言しており、プライベートでも親交のあるフィロソフィーのダンス・佐藤まりあとのインタビューを実施。2人は互いの音楽にまつわるトークや交流秘話など、さまざまな話題で盛り上がった。
取材・文 / 西廣智一撮影 / 梁瀬玉実
変わらずお姫様のまま
──お二人で取材を受けるのは……。
竹内アンナ・佐藤まりあ(フィロソフィーのダンス) 初めてです!
竹内 緊張するよね。
佐藤 そう。「何話そう?」って(笑)。
──先に行った撮影でも、お二人が対面した瞬間の空気で仲のよさは十分に伝わりました。そもそも、どういうきっかけで仲よくなったんですか?
竹内 もともと私がフィロのスが好きで、ちょこちょこSNSで話題にしていたんです。そうしたらフィロのスのラジオであんぬちゃん(佐藤)が私の曲をかけてくれたことがあって、その話題がSNSに流れてきて。「えーっ、流してくれたんだ!」とツイートしたら、あんぬちゃんもそれに気付いてくれて、そこからやりとりするようになった記憶があります。
佐藤 それも、アンナちゃんがライブ開場時のBGMにフィロソフィーのダンスの曲を流してくれたってことをSNSで知って、何かお返しできないかなと思ってラジオでかけたんです。
竹内 えーっ、そうだったんだ。うれしい!
佐藤 お互い曲をかけ合って、つながった感じですね。
竹内 そこから、ライブに招待してもらったり、一緒に遊びに行くようにもなりました。
──実際に接してみて、お互いどういう印象を持ちましたか?
佐藤 アンナちゃんはしっかりしている印象が強くて。遊びに行く場所も食べたいものも全部決めてくれるので、本当に頼りになります。
竹内 あんぬちゃんは、もともと思っていた印象とあまり変わらなくて。いちファンとして聴いていた頃からかわいいなと思っていたし、初めてライブを観たときも歌っている姿や踊っている姿が本当にお姫様みたいだなと思ったんですけど、実際に会ってもそれが健在でした。
佐藤 姫のままなんだ(笑)。
竹内 ふふふ。でも、会ったときもすごく優しかったし、私にとってはお姉さんみたいな存在です。
竹内アンナとフィロのスの音楽に共通するもの
──一方で、アーティストとしての相手の魅力的な部分はどういうところでしょう?
佐藤 アンナちゃんの歌はかわいさとかキュンとする要素だけじゃなくて、アンナちゃんにしか出せないちょっとスパイシーなところがあって。ほかの誰とも被らない、アンナちゃんにしか出せない魅力がたくさんあるんです。あと、歌詞にもクセになる言葉がたくさんちりばめられていて、本当に素晴らしいなと。いちアーティストとしても尊敬しています。
竹内 うれしい。私はフィロのスの楽曲がとにかく大好き。自分にとってフィロのスはアイドルの概念を壊してくれたアーティストだなと思っていて、よく「アイドルらしからぬ楽曲」と言われているけど、そう言ってしまうのも野暮だなと思うくらいフィロのスというジャンルを確立していると思うんです。コツコツと努力を積み重ねるストイックな姿からは、同じアーティストとしてもパワーをもらえますね。
佐藤 なんだか恥ずかしいね? 普段はこういう話をしないし。
竹内 でも、私は(フィロのスの)新曲が出るたびに「めっちゃいい!」って毎回連絡してるよ?(笑)
佐藤 そうだった(笑)。私もアンナちゃんの新曲がリリースされると、SNSを通じてファンのみんなに聴かせたくなるしね。
竹内 ライブ開場時のBGMでフィロのスをかけると、「この曲なんだろう?」とShazamして、そこからフィロのスのことを知ってくださったお客さんもいらっしゃるみたいで。音楽面でも共通している部分があるのかなと、すごく思いますね。
──お互いの歌詞や表現していることで共感できるポイントはありますか?
竹内 フィロのスは歌詞がすごく哲学的な言葉を使っていて、パンチラインが多いところがすごいなと思うんです。どこを切り取っても耳に残る言葉があるというのは、自分もすごく参考にしている部分ですし。
佐藤 フィロソフィーのダンスはどちらかというと、愛とか大きなテーマを歌うことが多いので、アンナちゃんの曲を聴くとすごく日常に寄り添ってくれているなという気がして。いつか私たちもそういう歌詞に挑戦してみたいなと思いながら聴いています。
竹内 女の子の背中を押すみたいなポイントは、共通してるのかな。
佐藤 確かに。
竹内 強い女性像というのは自分も意識しているし、フィロのスの楽曲でも衣装やアートワークからもそういったことを感じるので、そこは共通しているのかなと思います。あと、同世代の子たちに届いてほしいと思う一方で、わりと幅広い年代の方に聴いていただく機会も多くて。さっきも言った開場時のBGMで私と同い年くらいの子が「フィロのス、めっちゃいい!」と言うこともあるし、私の親ぐらいの世代の方も同じように検索していいと言っているのをTwitterで見かけたりしたので、その幅広さというのはお互いあったりするのかな。
音楽を聴くと広がる景色
──ここからは完成したばかりの竹内さんの2ndアルバム「TICKETS」について、ぜひ佐藤さんの口から感想を聞かせていただけたらと思います。
佐藤 はい。感想としては、最近サブスクではシャッフルで聴かれることが多いじゃないですか。あとは1曲だけつまんで聴くとか。それに対して、このアルバムは1曲目からラストまでの流れで聴いてほしいなと個人的に思いました。
竹内 ありがとう! 本当にその通りで、確かにサブスクではシャッフルとかしがちなんだけど、やっぱりアルバムのよさって全体を通したコンセプトがあったり、曲順に意味が込められていたりするところなので、最初の1回ぐらいは流れで聴いてほしいなと思います。
──オープニングのイントロダクション「Intro: "Have a nice trip"」から2曲目「一世一遇Feeling」へと流れる構成も、ちゃんと必然性が感じられますし。
竹内 このアルバムはタイトルにもある通り、聴いてくれた人をいろんな場所や過去の記憶、まだ見たことのない未来に連れて行けるような切符になればいいなと思って作ったものなんです。そもそもきっかけは、以前ラジオの企画で「真夜中の夢旅行」というテーマでプレイリストを作ったこと。去年の夏あたりはまだ自由に旅行とかできない時期だったので、せめて夢の中ぐらいいろんな場所に旅できたらいいなという思いで、地名が入った曲とか自分が実際に旅行したときに聴いていた曲とか、行ったことがない土地でもその景色を連想させる曲を集めて聴いたら、部屋の中にいてもいろんな場所に行けるんだということが感じられたんです。私はThe Beatlesの「Get Back」を聴くと行ったこともないイギリスの景色が思い浮かぶし、くるりを聴くと私の地元・京都の風景が一気に広がるし。
──不思議なもので、音楽って思い出や記憶とセットになっていて、聴いた瞬間に絵が浮かぶんですよね。
竹内 本当にその通りです。私がフィロのスに出会ったのは大学生の頃で、初めて「ダンス・ファウンダー」(2017年11月にリリースされたアルバム「ザ・ファウンダー」の収録曲で、2018年2月発表のシングル曲)に触れたときの衝撃や景色は聴くたびに思い出せるし、音楽の持つパワーというのは本当にすごいなと思います。
佐藤 私はK-POPがすごく好きで、アイドルになる前から何度も韓国に行っているんですけど、その頃に韓国で流行っていたチョンギゴさんとソユさんの「Some」という曲が街中に流れていて。
竹内 ああ、その曲めっちゃ好き!
佐藤 ふふふ。なので、「Some」を聴くと「また韓国に行きたいな」って気持ちになるんです。あと、Apinkの「Mr.Chu」って曲も流行っていて。
竹内 聴くとテニスしたくなるよね(笑)。MVにテニスコートが出てくるから。
佐藤 そうそう(笑)。
──「TICKETS」は家で聴いていても旅気分を味わえるのと同時に、例えば近所を散歩しながら聴いていると今までの景色がちょっと違って見えるような、そういう効果もあると思いました。
竹内 ありがとうございます。いつも見ている景色なんだけども、この曲を聴くといつもよりちょっと輝いて見えたり、なんでもない路地なんだけど何かときめきを感じられたり、猫が通っただけでも「何か今日はいいことあるかも?」と感じられたり、なんてことない日常が映画みたいになるという、そういう感覚を大切にしながら曲作りをしているので、その言葉はすごくうれしいです。
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