ナタリー PowerPush - 竹達彩奈

成長するあやちと“チーム竹達”の可能性

竹達彩奈×沖井礼二×小林俊太郎 インタビュー

「母ちゃん、ただいま!はらへった!」みたいな

竹達彩奈

竹達彩奈 おはようございまーす。

沖井 今、欠席裁判してたんだよ。

竹達 ふえ? けっせき? 誰が欠席するの?

沖井 あなたがいない間にいろんな話をしてたんですよ(笑)。

竹達 やだ! じゃあ帰ろうかな(笑)。

──ということで(笑)、ここからは竹達さんを交えて。前作は“脱ピアノロック”への挑戦でしたが、今作はいかがでしたか?

竹達 おかえりなさい!って感じですね(笑)。「わんだふるワールド」は初めて聴いたときから心がときめいて。でも最初はこれがシングルになるのか、カップリングになるのか、もっと先にアルバムに入る曲になるのか、全然わからない状態で聴いたんですよ。私は絶対この曲をシングルのA面にしたいというひそかな野望があったので、今回それが叶ってよかったなって。

沖井 今おかえりって言ってましたけど、我々としても……ランドセルをバーン!と投げ出して「母ちゃん、ただいま! はらへった!」みたいな(笑)、そういうリラックス感は制作中常にありましたよ。行儀のいい感じじゃなく、母ちゃんはらへった感のある作業ができたのは非常によかった。

竹達 「週末シンデレラ」が変化球だとすると、今回はストレートでドーン!と来たなという感じがすごくします。

──ご自身の中でも「これが竹達彩奈の王道だ」という感覚がある。

竹達彩奈

竹達 でも私は自分で「私はこれ」って決めつけたくはないので、これが私の王道だとは言えないですけど、2012年から歌を始めて今まで積み重ねてきたものがあったからこその曲だなと思うんです。なんだろ、うまく言えないなあ。ニホンゴむずかしい……。

沖井 いや、言ってることはよくわかるよ。1周回って同じところに来てるんだけども、違う地点に到達することができてる。しかもリラックスしながら。……ということを彼女は言わんとしてるんじゃないかな。

竹達 合ってます(笑)。

──じゃあ曲に求められていることは自分の中ですぐ理解できた?

竹達 はい。難産ではなかったです。レコーディング自体も早く終わったし。

小林 うん、あっという間だったね。

竹達 もともと「Candy Love」という軸があってそこから発生した曲だから。出てくる女の子が一緒なんですよ。その女の子のことを考えながら歌ったので、私としてはラクじゃないけど歌いやすかったです。

声優ならではの距離感表現

──竹達さんの中で「わんだふるワールド」の最も重要なポイントはどこですか?

竹達彩奈

竹達 歌詞で言うと「ちょっとくらい自己チューになったっていいじゃん」です。このセリフがこの女の子の性格を一言で表していて私は好きなんですけど、ライブ的に盛り上がってほしいのは「まーだだよ」「もーいいよ」ですね(笑)。みんなに「まーだだよ」「もーいいよ」ってかくれんぼしてる気持ちになって言ってもらいたい。

小林 レコーディングのときに、「まーだだよ」「まーだだよ」「もーいいよ」という3つの流れを、だんだん近付いてくるように表現してほしいって言ったんです。これって普通に考えると小さい声から大きい声になる印象がないですか? でもさすがだなと思ったのが、彼女は「逆ですよ」って言うんですよ。最初は遠いから大きな声で、最後は耳元だから小さくていいんですよ。

──ああー。「もういいよ」はもはやささやき声になってますもんね。ファンの人が萌え殺されるポイントだと思うんですけど(笑)。

小林 うん(笑)。その距離感の表現はさすが声優だなって。

竹達 ……ほめられてる? やったー! いろんなパターンで「まーだだよ」「もーいいよ」を言わせてもらって、すごく楽しかったんですよ。

ソロで歌うときはまっさらな自分でいたい

──では一方の「サーフでゴゴゴ」はいかがでしたか? 今までの沖井さんの楽曲とは違う方向に足を踏み入れていますが。

竹達 こう来たかと。今まで沖井さんの曲ってわりとシリアスめで、いつも寂しい曲だったんですよ。この曲はひたすら楽しくて、きっと沖井さん自身も楽しかったんだろうなって(笑)。

──そうですね。今までの曲は沖井さんのセンチメンタルな側面を連作で見せたような格好でしたけど。

竹達 でも寂しさはまだちょっとあるんですよ。あるんだけど……この曲の主人公は、ホントはすごく寂しいし孤独なんだけど、はしゃいでみたらこうなりましたみたいな(笑)。

──竹達さんがこの曲の主人公に当てたキャラ設定をもう少し詳しく教えてもらえますか?

竹達彩奈

竹達 私に近い子だなと思いました。たぶんこの子は引っぱり出されたんですよ、サーフィンに行こうって。サーフィンなんてしたことないし、いいよいいよって断ったのに引きずり出されて(笑)。しょうがないかって行ったんだけど、雨降っちゃうし、おなか減っちゃうし、海にたどり着かないし。「だから行かないって言ったじゃん! もう! でもうまくいかないのが私らしいよね」って(笑)。

沖井 んふふふ(笑)。

──感情移入しやすかった?

竹達 すごく想像できました。マジ私バーニンなんだけど!みたいな(笑)。

──「話が違うぜベイベー? どうなんだぜ?」とか、今までになかったような言い回しには違和感ありませんでしたか?

竹達 あー、そこはけっこう悩んだ気がするなあ。私が言うとすっごいマヌケで、子供ががんばって「だぜ?」って言ってるみたいになっちゃって(笑)。歌ってたらどんどんロックっぽい感じになっちゃって、沖井さんはわりと気に入ってくれたんですけど、私はちょっと違う気がして修正、修正って。

沖井 ちょっとYAZAWA降りてきてたよね(笑)。僕がディレクションをやってたんだけど、ブレーキをかけたのはこの人(竹達)なんですよ。「これは私、行きすぎてますよ」って。どうしようかなと思ってたら自分から、ちょうどいい中間地点で、なおかつちょっと盛ったものを出してきたんですよ。それがこの塩梅だったんだけども、そういう意味では僕はなんのためにそこにディレクターとしていたのかわかんない。最初に話したように、キャラソンともまた違う、アーティスト竹達彩奈の歌として今までにない歌唱法を自分で開発することができるようになった。しっかりした軸に筋肉が付き始めているというのはそういうところなんですよ。

竹達 私、ソロで歌うときに気を付けていることがあって。ストレートに表現することを心がけてるんですよ。キャラソンとかユニットのときは、ビブラートを入れたり声を変えてみたり、キャラクターらしさをちょこちょこ入れてるんですけど、自分の名前で歌うときはまっさらな自分でいたくて。まっさらな状態で表現したものを届けたいし伝えたいと思うんですよ。「サーフでゴゴゴ」は楽しすぎてタガが外れちゃったんですけど(笑)、そのタガが外れた感じをちょっとずつ広げていけたらいいなって思っています。2年間やってきて軸はつかめてきたというか、土台はできたと思うので、そこからまた別のまっさらな自分が出せるかもしれないなと思わせてくれた曲ですね。

ニューシングル「わんだふるワールド」 / 2014年6月4日発売 / PONY CANYON
初回限定盤 [CD+DVD] / 1890円 / PCCG-1404
通常盤 [CD] / 1350円 / PCCG-70212
CD収録曲
  1. わんだふるワールド
    [作詞:加藤哉子 / 作・編曲:小林俊太郎]
  2. サーフでゴゴゴ
    [作詞・作曲・編曲:沖井礼二]
  3. わんだふるワールド(Instrumental)
  4. サーフでゴゴゴ(Instrumental)
初回限定盤DVD収録内容
  • わんだふるワールド(MUSIC VIDEO)
竹達彩奈バースデーライブ
2014年6月22日(日)
千葉県 舞浜アンフィシアター
OPEN 16:00 / START 17:00
料金:5800円(吉野家「アタマの大盛り」無料券付き)
応募抽選制(申込券はシングル「わんだふるワールド」に封入)
竹達彩奈(タケタツアヤナ)

竹達彩奈

埼玉県出身の声優アーティスト。2009年放送のテレビアニメ「けいおん!」中野梓役で大きな注目を集める。「けいおん!」から派生したユニット「放課後ティータイム」では数々のヒット曲を生み、2009年12月には神奈川・横浜アリーナ、2011年2月には埼玉・さいたまスーパーアリーナにてコンサートを行った。2012年4月には初の個人名義によるシングル「Sinfonia! Sinfonia!!!」でソロアーティストとしてデビュー。同年9月には2ndシングル「♪(おんぷ)の国のアリス」、2013年1月には筒美京平書き下ろしの3rdシングル「時空ツアーズ」をリリースした。2013年4月10日に1stアルバム「apple symphony」を発表し、同年6月23日には東京・TOKYO DOME CITY HALLにて初のワンマンライブを大成功に収めた。2014年6月には通算5枚目となるニューシングル「わんだふるワールド」をリリース。