ナタリー PowerPush - 竹渕慶
Goose houseの歌姫が明かす誰かのために歌う理由
人の心に響く曲
──アメリカで初めて曲を作ったときもそうだと思うんですけど、自分で作った曲を他人に聴いてもらったとき、やっぱりそのリアクションが気になったんじゃ?
聴かせる前と聴いてもらってる最中はもう恐怖でしかなくて、「消えたい」みたいな(笑)。自分ではいいと思っていてもほかの人はどう思うかわからないし、なんかいろいろ考えちゃうんです。聴いた人も「えっ、何この曲?」って思ってもそうは言わないし、言えないだろうし(笑)。でも聴き終わったあとに……特にアメリカ人ってジェスチャーも含めて感情表現がすごいストレートで、小学生のときに作った曲を聴いてもらったときはみんなすごく褒めてくれて。あんな小声で囁いてるだけの曲なのに(笑)。だけど自分が作ったものが誰かに響いてるっていうのが直に感じることができたのは、とってもうれしかったですね、単純に。
──そこで1つ手応えを得たのに、なぜ曲作りを続けようと思わなかったんですか?
たぶんそのときはまだ、曲を作ることよりもただ歌うことが本当に好きで。聴いてくれる人のためとか誰かに何かを伝えたいからとかではなくて、自分が気持ちいいから、楽しいから歌っている。ある意味自己満だったんでしょうね。
──じゃあ作る喜び、表現する楽しさは「舞花~my flower~」を作った頃から少しずつ芽生えてきた?
そうだと思います。「舞花~my flower~」を作ったときは、目の前で自分の曲を聴いて泣いてる人がいるのを直に見られたのが大きかったです。その先輩は歌詞の内容でたぶん自分のことだってわかって、すごい号泣してて。ほかにも涙してる先輩たちがたくさんいたので、人の心に響く曲を作れたんだなって実感できました。
──高校生のときに作った「舞花~my flower~」が現在の活動の原点になっていると思いますが、そこから現在に至るまでにGoose houseやその前身のPlayYou.Houseを含めて、歌うことや曲作りに関していろんな刺激を受けてきたと思うんです。
そうですね。歌うことに関しては、やっぱり1人で歌ってるのとGoose houseのみんなで歌ってるのとでは全然違って。最初にPlayYou.Houseが始まった頃は、「これが自分です!」っていう自分の歌い方にある意味すごく分厚いプライドみたいのを持っていて、それを絶対に崩したくないってアピールしてたところがあったと思います。でも自分がいいと思ってる歌い方や表現が必ずしも聴く人にとってもそうであるとは限らないってことが、PlayYou.HouseやGoose houseのみんなと一緒にやってわかるようになりました。あとはみんなで歌っている中で協調性というか、自分を大人数の中になじませることも学んでいって。
──そういうことって1人だけで活動しているときはなかなか気付けないことかもしれないですしね。
「こうしたほうがいいよ」って言ってくれる人もなかなかいなかったですし。でも今はみんなと「こういう歌い方のほうが響くんじゃない?」って言い合える関係を作れているので、お互いの成長にとっても大きいですね。
Goose houseの魅力は“親近感”
──Goose houseの動画を観てると、皆さん歌うことをすごく楽しんでいるのが伝わってきます。カバー曲にもたくさん挑戦していますが、その選曲だったりアレンジだったり遊び心にあふれてますよね。特にGoose houseは10代を中心に大きな注目を集めていますが、ここまで支持される理由を竹渕さんご自身はどのように分析していますか?
よくYouTubeのコメントとかTwitterのリプライとかお手紙とかで、「本当にただただ楽しそう」「観てるとこっちまで元気になってくる」「一緒に歌いたい。皆さんの輪に入りたいです」って声がすごく多くて。だから……変に気取らず作らずに、ありのまま音楽を楽しんでいる姿に親近感を覚えるのかもしれないですね。実際見たらわかると思うんですけど、私たち本当に普通の人たちなので(笑)。だからこそ「自分もこうなれるんじゃないか」って身近に感じるのかな。そんな気がします。
──そこにみんなが知ってるような楽曲をカバーすることで、より入っていきやすいのかもしれないですね。
それはもう原曲を歌うアーティストの皆様のおかげなんですけど(笑)。でも逆に「Goose houseがカバーしてるのを聴いて、原曲を知りました」っていう人もとても多くて、それもすごくうれしいし。カバーをすると入り口がたくさんできるので、いいですね。
──実は先日、Goose houseにも何度か出演している片平里菜さんが地元福島でライブをしたとき、4月に郡山でGoose houseと対バンすることを発表したんですけど、そのときのお客さんのリアクションがとにかくすごくて。ちょっと悲鳴に似た歓声が上がったんですよ。
へえーっ! そうなんですね(笑)。
──僕はそのときに初めて「あっ、この子たちなんだ!」って、Goose houseを支持している人たちが肌感覚でわかった気がしました。
うふふふ(笑)。たぶん年齢はかなり若いですよね。
──若かったですね。
多いんですよ、大学生とかその年代の方が。でも里菜ちゃんは番組にもゲスト出演してくれてるので、たぶん里菜ちゃんを通じてGoose houseを知った人も多いんじゃないですかね。でもファンの年齢層的にはすごくかぶってるんだと思います。
- 竹渕慶 ミニアルバム「KEI's 8」/ 2014年3月5日発売 / Sony Music Records / SRCL-8480
- 竹渕慶「KEI's 8」[CD] 2500円 / SRCL-8480
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収録曲
- ありがとう
- ブルーラブソング
- ドロシー
- cotton snow
- MERMAID
- ごめんねなんて言わない
- 車輪の唄
- 舞花 ~my flower~
竹渕慶(たけぶちけい)
Sony WalkmanのPlayYou.House企画から独立したシンガーソングライターが集う次世代ユニットGoose houseのメンバー。2011年からGoose houseの活動がスタートすると主だったメディア露出がない中、インターネットの口コミを中心にファンを獲得し、YouTubeの総再生回数は2億5000万回、チャンネル登録者は70万人を超える。CD制作、ライブにも精力的に活動。2014年2月にはGoose houseとして、アニメ「銀の匙 Silver Spoon」第2期エンディングテーマ「オトノナルホウヘ→」をCDリリース。そして竹渕自身も「Goose house×Sony Music Records Inc.」というソロプロジェクトで、3月にミニアルバム「KEI's 8」でデビューを果たした。