高橋優|10年後もワクワクしながら転がり続けたい

7月にメジャーデビュー10周年を迎えた高橋優が、10月21日にニューアルバム「PERSONALITY」をリリースした。

アニバーサリーイヤーを飾る本作は、6thアルバム「STARTING OVER」以来、約2年ぶりのフルアルバム。ケンカイヨシや蔦屋好位置をはじめとする多彩なアレンジャー陣が参加した、バラエティ豊かな計15曲が収められている。

音楽ナタリーでは本作の発売を記念して高橋にインタビュー。アルバムの制作過程や10周年を迎えた心境、活動の節目に彼が口にしている“原点”という言葉に込められた意味を聞いた。

取材・文 / 酒匂里奈 撮影 / 笹原清明

続けることだけはできる

──Twitterで更新されている“今日の目標”シリーズを拝見したら、今日は「素直な受け応え」と書かれていて。素直に受け応えしていただけるのが楽しみです。

Twitterで更新してるやつ? バカバカしいでしょ?

──そんなことないですよ。

ありがとうございます。あと僕はいつもこんな感じですよ! そんなに嘘ついてるイメージあります?

──いえいえ、伝え方が難しくてすみません。では元から今日の目標は達成しているようなものなんですね。

あ、でも僕、たまに嘘つくんですよ(笑)。それを今日は控えめにしようかなと。嘘つかないようにします。

──“今日の目標”は8月から続けられていますが、始めようと思ったきっかけはありますか?

きっかけはないです。単純にやってみただけで。

──それで毎日続けられているのはすごいですね。

続けることだけはできるんですよ。音楽やジョギングとか。中学で陸上部に入ってから、プライベートでもずっと走ってるんです。だから続けるとなったらずっと続けられる。ただ、ちょっとやって三日坊主になってしまうことも多くて。ドラマを観ていても、どれだけ面白くてもだいたい3話までしか観れないんです。自分が主題歌を担当させてもらったり、仲のいい友達が出ていたりとか、そういう作品は感想を語らいたいから最後まで観ることもありますけど。でも“今日の目標”はなんとなく2、3日続けていくうちに「今日も書こう」という気持ちになって続けられていますね。

高橋優の原点とは

──「僕らの平成ロックンロール2」(2012年12月発売のアルバム)、「STARTING OVER」(2018年10月発売のアルバム)のリリースタイミングなど、節目となるタイミングで高橋さんは「原点に戻る」という言葉を口にされています。高橋さんにとって原点とはなんなのかということを言語化できますか?

言語化するとチープな言葉になってしまうんですけど、「ワクワク」とか「グッとくる感じ」ですかね。それに尽きます。初めておもちゃに触った瞬間とか、初めて東京ディズニーランドに行った日とか、「世界が変わった!」と思うくらいうれしい瞬間が子供の頃にあったと思うんです。でも大人になっていくにつれて、そういった出来事に慣れていく。どれだけ素晴らしい瞬間に出くわしても「ハア? それで? 感動しないですけど」と感じてしまうこともあるかもしれない。僕は歳をとるごとに心から「おおっ!」と思うことが減ってしまったら、それは決していい人生とは言えないんじゃないかと思っていて。逆に言うとそう思える瞬間が多ければ多いほどいい人生だと思うんですよ。僕の場合だと、音楽がマンネリ化したら万死に値する。「まあこのくらいの曲作っておけばいいっしょ」みたいなやり方だと、作る意味がないと思うんですよ。僕は曲作りを始めた頃は、誰にも見せないようにしてたんです。でも当時一緒にバンドを組んでいたギタリストに初めて聴いてもらったら「これいいじゃん!」と言ってもらえて。その瞬間、世界が開けたような気分で、女の子に告白するときよりドキドキしたんです。僕は今でも自分の曲を聴いた人に「何これ面白い!」と言われるのも、「いい曲だね!」と言われるのもうれしい。そういう気持ちが僕の原点だから、そう言ってもらうためにはもっと工夫していかないといけないなと思います。

高橋優

──確かにワクワクする気持ちは大切ですよね。

そうなんです。学生時代に弾き語りで作った曲に、友達がMTRを使って打ち込みでドラムの音を入れてくれたときのワクワクもまたすごかった。でもメジャーデビューして10年経って、ドラムを叩いてもらうのなんて当たり前だと思ってしまえばその感動もなくなってしまうじゃないですか。曲を書けて当たり前、聴いてもらうのも当たり前、ライブができるのも当たり前と思ってしまったら、その1つひとつに感動しなくなる。ほかのことに感動を追い求めるのもいいと思うんだけど、僕は今やっている1つひとつのことにモチベーションを保っていたい。

──ありがとうございます。すごくわかりやすかったです。

わかりやすかったですか? 僕はもう自分の話長いなと。そういうおっさんにはなりたくないと思っているんですけどね。

秋田で広がる輪

──9月20日にはYouTubeで動画「高橋優 デビュー10周年&秋田CARAVAN MUSIC FES 5周年記念生配信」が配信されました。私は「秋田CARAVAN MUSIC FES」の、横手市で開催された1年目と由利本荘市で開催された2年目に伺って、高橋さんやスタッフの方の苦労やお客さんの温かさをとても感じました。「秋田CARAVAN MUSIC FES」はBEGIN主催のイベント「うたの日コンサート」に影響を受けているそうで。

以前「うたの日コンサート」に出させてもらったことがあって、そのときはまだ「秋田CARAVAN MUSIC FES」はやってなかったんですけど、「こういうフェスだったら自分もやりたいな」と思ったんです。そのあとも沖縄には何度も行って、海辺で(比嘉)栄昇(Vo / BEGIN)さんとベロベロになるまで泡盛を飲んだこともありました。BEGINには「秋田CARAVAN MUSIC FES」の1年目、2年目と連続で出てもらいましたし、BEGINなしには語れないフェスです。

高橋優

──なるほど。4年間「秋田CARAVAN MUSIC FES」を開催してきて、野外イベントのノウハウを得たり、慣れてきたりはしました?

ステージにいる時間が長いので、見えている景色に感動してばかりはいられない忙しさがあって。運営面でいうと毎年会場を変えて開催しているので、導線や売店の場所、その会場ならではのホスピタリティも毎回考える必要があるので、ノウハウはまだあまりないかもしれないです。

──運営面にもがっつり高橋さんは携わっているのでしょうか?

はい。ほぼ毎年0から作っています。慣れはないけど、段々と輪が広がっていっている実感はありますね。最初は全部自分たちでやろうと思っていたんですけど、2年目からは「うちの市でやらないか」と言ってくださる方がいて。段々そうやって手を挙げてくださる市が増えてきたり、「高橋優の『秋田CARAVAN MUSIC FES』を応援しよう」という団体が現れたり、JR東日本さんも協力してくれたりして。ありがたくも輪が広がっていっている実感があるし、自信につながっています。

──大曲市で開催された4年目は花火も上げられたんですよね。

あの花火は大曲市からのプレゼントだったんです。大曲という街では毎年「全国花火競技大会」が行われていて、この大会に70万人くらい人が集まるんですよ。そういう花火の街・大曲だから「『秋田CARAVAN MUSIC FES』でも花火をあげましょう」と言ってくださって、うれしかったですね。