ナタリー PowerPush - 高橋優

沈黙を破り、見えてきた本質

秋田をバカにされるのは許せない

──「泣ぐ子はいねが」の曲調や歌詞には、正直びっくりしました(笑)。

いきなり秋田弁全開ですからね(笑)。ただこれも「時が満ちた」って感じてる曲なんです。僕は今まで、秋田生まれということにこだわりはなかったんです。プラスはないけどマイナスもない、差し引きゼロって感じてた。でも、これってすごく恐ろしいことだと思って。

──恐ろしいこと?

高橋優

だって大阪や広島や沖縄の人って、プライドを持って地元の言葉を話すでしょ。それが、東北弁にはないんです。例えば、東京に出た女の子は率先して東北弁をやめていく。それがダメだとは言わないけど、僕としてはここで一発、「秋田しっかりしろよ!」って言いたかった。

──高橋さん自身はいつまで東北弁を?

北海道の大学に入って、最初の1年間だけでしたね。これも思い出があって、友達が「~だべ」っていう僕のしゃべり方をモノマネし始めたんですよ。僕をバカにするのはいいけど、秋田をバカにされるのは許せないと思って、封印しちゃったんですよね。

──高橋さんのほかに東北弁をしゃべる人はいなかったんですか?

いや、もう1人だけいたんです。同郷っていうことで入学してすぐに意気投合して、「オレらはずっと秋田弁を通そうぜ!」なんて話をしてたのに、1カ月後にはそいつ、「なまら楽しいわー」って北海道弁でしゃべってた!

──さっそく秋田弁を捨てて!

あれは驚きましたね、社交的だったし、人生で成功するタイプですよ彼は。友達もたくさんできて、ザ・キャンパスライフ!って感じだった。合コンばっかり行くようになって、すぐに僕を誘うんだけど、絶対に行かなかったです。

──行けばいいじゃないですか(笑)。

いや、行かない。なんか苦手なんですよね、ああいう空気。キャンパスライフみたいなものに憧れはあったけど……合コンは行けなかったなあ。

歌う意味があると信じないといけない

──では作品に話を戻すと……。

すみません、全然違う話でヒートアップしちゃった。こういうバカみたいな話も大好きなんですけどね。でも取材ですからね、進めてください。

──ありがとうございます(笑)。ではこれからホールツアーが始まるということで、その意気込みを。

5月までやっていたライブハウスツアーは、2013年前半までの総決算という意気込みでやったので、次はアルバムの曲をメインに、まったく違う内容になると思います。会場は大きいほうが演出も凝れるのでいろいろ考えてはいるんですが、細かいことは抜きにして、来てくれた人1人ひとりに僕の生声を届けるテンションでやるつもりです。

──リリースとツアーが続いていますが、ぶっちゃけ疲れてないですか?

正直、多少はありますよ。レコーディングでもジョギングでも、「もうやめねーか?」ってストップしようとする何かが出るんですよね。それは本能だから仕方ないけど、「でもまだやるんだ!」っていう意思を持ってが負けないようにフィジカルを鍛える必要性は感じてます。疲れたら休むっていうペースでやってる余裕はないし、今は這ってでも歌いたい意欲が何よりも勝ってるんですよ。

──焦りみたいなものも感じる?

というより、単純にもっと聴いてほしいという思いですね。さっき、チームしゃちほこのメンバーと一緒だったんですけど、若くてすごい元気でね。新しい人もたくさん出てくるし、あれくらいの勢いがないとダメだなって改めて思いましたよ。

──その流れで言うと、いわゆるアイドルグループやパフォーマータイプのアーティストが世間的には人気ですよね。その中で、シンガーソングライターの役割ってなんだと思いますか?

やっぱり、自分の色を持つこと。世間で何が聴かれていて、何が売れてるかはもちろん気になりますよ。でも、僕は高橋優というシンガーが今の時代に必要だと思っているし、歌う意味があると信じないといけない。それだけは変わらずにいたいですね。

高橋優
ニューアルバム「BREAK MY SILENCE」/ 2013年7月10日発売 / unBORDE
初回限定盤[CD+DVD] / 3570円 / WPCL-11519
通常盤[CD] / 3150円 / WPCL-11521
CD収録曲
  1. ジェネレーションY
  2. (Where's) THE SILENT MAJORITY?
  3. 陽はまた昇る
  4. 人見知りベイベー
  5. 空気
  6. CANDY
  7. スペアキー
  8. 泣ぐ子はいねが
  9. 同じ空の下
  10. 涙の温度
初回限定盤「ボツ曲大全集(1)」
  1. 傍観悲観者
  2. 足フェチ
  3. ブランク
  4. テレビを見ながら
ライブインフォメーション
高橋優2013全国ホールツアー
「BREAK OUR SILENCE」
  • 2013年7月27日(土)
    福岡県 福岡国際会議場 メインホール
  • 2013年8月11日(日)
    秋田県 秋田市文化会館
  • 2013年8月17日(土)
    東京都 渋谷公会堂
  • 2013年8月18日(日)
    東京都 渋谷公会堂
  • 2013年8月24日(土)
    大阪府 オリックス劇場
  • 2013年8月25日(日)
    大阪府 オリックス劇場
  • 2013年8月30日(金)
    北海道 札幌市教育文化会館
  • 2013年9月21日(土)
    宮城県 仙台市民会館
  • 2013年9月23日(月・祝)
    福島県 いわきアリオス中劇場
  • 2013年9月27日(金)
    広島県 アステールプラザ 大ホール
  • 2013年9月29日(日)
    愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
高橋優2013日本武道館
「YOU CAN BREAK THE SILENCE IN BUDOKAN」
  • 2013年11月24日(日)
    東京都 日本武道館
高橋優(たかはしゆう)
高橋優

1983年生まれ、秋田県出身のシンガーソングライター。大学進学と同時に路上で弾き語りを始める。2008年に活動拠点を東京に移し、2009年7月に初の全国流通盤「僕らの平成ロックンロール」を全国リリースする。2010年7月にシングル「素晴らしき日常」でデビュー。2011年4月にリリースされたメジャー1stアルバム「リアルタイム・シンガーソングライター」はロングヒットを記録する。その後もコンスタントに作品を発表し、2013年4月には「(Where's)THE SILENT MAJORITY?」、5月には「同じ空の下」と2カ月連続でシングルをリリース。7月にはアルバム「BREAK MY SILENCE」を発表する。社会、友情、恋愛、性、孤独など自身が感じた思いをストレートな言葉で表現した歌詞、聴き手の感情を揺さぶる熱い歌声で、支持を集めている。