ナタリー PowerPush - 高橋優

沈黙を破り、見えてきた本質

高橋優の3枚目のフルアルバム「BREAK MY SILENCE」が完成した。タイトルが示す通り、「自分の沈黙を破る」というストイックなコンセプトのもとに、今まで以上にまっすぐな言葉がつづられた作品だ。

「今日思ったことを今日歌う」をテーマにメジャーデビューしてから、ちょうど3年。正直に歌い続けてきたはずの彼の中にあった「沈黙」とはなんだったのか。そして、「自分らしさ」を模索した末に生まれた今作の秘話を聞いた。

取材・文 / 田島太陽 撮影 / 佐藤類

これは僕にとってファンファーレ

──最初のフルアルバムのとき(参照:高橋優「リアルタイム・シンガーソングライター」インタビュー)は「自己紹介の1枚になった」、2枚目(参照:高橋優「この声」インタビュー)では「改めて、自己紹介の1枚になった」とおっしゃっていました。今回はどんな作品になりましたか?

高橋優

“のろし”ですね。これは僕にとってファンファーレだと思ってます。ここから戦い……っていうと誰と戦うのかわからないけど、これでまた始まるんだっていう気持ちです。

──なるほど、力強い宣言ですね。でも高橋優は今までも戦ってましたよね。

もちろんそうだけど、もっと素直になれた気がする。余計な鎧を取り去れたっていうのかな。どうしたら僕が目指す理想的なシンガーになれるかを考えたら、ハダカで転がることが必要だと思ったんです。鎧をつけることは簡単だし自分を守れるけど、そんなことじゃダメ。傷付く覚悟を持って、自分からハダカにならないと。

──鎧というのは具体的には?

自分をよく見せようとする気持ちですかね。過去に「自己紹介」って繰り返したのは、自分をこう見てほしいって願望が強かったからだと思うんです。もちろん人気者になりたいし、カッコいいって言われるのはうれしいけど、ときには賛否両論じゃないといけないんですよ。高橋はいいシンガーだって言ってくれる人と同じくらい、高橋はダメなシンガーだって言う人がいないといけない。どっちもいないとダメだと思うんです。

──それはなぜ?

それが、高橋優の“らしさ”なのかなって思うから。僕は自分で思っている以上にさわやかだし、皆さんが想像している以上にドス黒い部分がある。透明に見えるくらいクリアな白も持っているし、ドロドロするほど濃い黒や緑や赤もある。いろいろ考えたけど、やっぱりそれが僕なんですよ。自分の両極端さは、今回アルバムを作っていてすごく感じたことですね。

自分の本質が初めて出せた

──自分らしさを追求するために、まずは沈黙を破ろうということで生まれたのが「(Where's) THE SILENT MAJORITY?」だったわけですよね。今回のアルバムもその続きという意識ですか?

そうですね。その結果、自分の本質みたいな部分がこのアルバムで初めて出せた気がしてるんです。例えばイジメられていたとか、人見知りだなんて曲も書いたけど、それって本当は恥ずかしい部分だし、いちいち歌にする必要がないと思ってたんです。でも、それも言っちゃおうと吹っ切れたし、そうすることが高橋優なんだと思えた。だから自己紹介ではなく、“のろし”なんです。そして、火ぶたが切られるきっかけになったのは、たぶん「僕らの平成ロックンロール(2)」だった。

──リリース当時のインタビュー(参照:高橋優「僕らの平成ロックンロール(2)」インタビュー)では「原点回帰」「自分にとってターニングポイントの作品かもしれない」とおっしゃってましたね。

高橋優

本当にそうなりましたね。実は去年のホールツアーで「今の自分は、本当にやりたいことがやれてんのか?」っていう自問自答があったんです。全力を尽くしているつもりだったけど、まだもっと上があるんじゃないかって。それは途方もなく大変なことかもしれないけど、人生あっという間に終わっちゃうぜ、やるなら今だぜ、って焦りが出てきた。それで、夜も眠れないくらいに悩んで生まれたのが「僕らの平成ロックンロール(2)」だった。

──今振り返れば、去年までの自分は本音が言えていなかった?

言えなかったわけではなく、足りなかったんだと思う。僕の本音は、今までのすべての作品に詰まってるんです。インディーズでリリースした「僕らの平成ロックンロール」が原点であって、あの頃から僕は何も変わっていないし、メジャーになってからもずっとその延長線上にある。それはちゃんと掘り下げて聴いてくれれば理解してもらえると思ってます。ただ、そこまで僕の曲だけをじっくり聴いてくれる人は多くはない。だから、高橋優はこういう人間だってもっとアピールする必要があると思ったんです。

ニューアルバム「BREAK MY SILENCE」/ 2013年7月10日発売 / unBORDE
初回限定盤[CD+DVD] / 3570円 / WPCL-11519
通常盤[CD] / 3150円 / WPCL-11521
CD収録曲
  1. ジェネレーションY
  2. (Where's) THE SILENT MAJORITY?
  3. 陽はまた昇る
  4. 人見知りベイベー
  5. 空気
  6. CANDY
  7. スペアキー
  8. 泣ぐ子はいねが
  9. 同じ空の下
  10. 涙の温度
初回限定盤「ボツ曲大全集(1)」
  1. 傍観悲観者
  2. 足フェチ
  3. ブランク
  4. テレビを見ながら
ライブインフォメーション
高橋優2013全国ホールツアー
「BREAK OUR SILENCE」
  • 2013年7月27日(土)
    福岡県 福岡国際会議場 メインホール
  • 2013年8月11日(日)
    秋田県 秋田市文化会館
  • 2013年8月17日(土)
    東京都 渋谷公会堂
  • 2013年8月18日(日)
    東京都 渋谷公会堂
  • 2013年8月24日(土)
    大阪府 オリックス劇場
  • 2013年8月25日(日)
    大阪府 オリックス劇場
  • 2013年8月30日(金)
    北海道 札幌市教育文化会館
  • 2013年9月21日(土)
    宮城県 仙台市民会館
  • 2013年9月23日(月・祝)
    福島県 いわきアリオス中劇場
  • 2013年9月27日(金)
    広島県 アステールプラザ 大ホール
  • 2013年9月29日(日)
    愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
高橋優2013日本武道館
「YOU CAN BREAK THE SILENCE IN BUDOKAN」
  • 2013年11月24日(日)
    東京都 日本武道館
高橋優(たかはしゆう)
高橋優

1983年生まれ、秋田県出身のシンガーソングライター。大学進学と同時に路上で弾き語りを始める。2008年に活動拠点を東京に移し、2009年7月に初の全国流通盤「僕らの平成ロックンロール」を全国リリースする。2010年7月にシングル「素晴らしき日常」でデビュー。2011年4月にリリースされたメジャー1stアルバム「リアルタイム・シンガーソングライター」はロングヒットを記録する。その後もコンスタントに作品を発表し、2013年4月には「(Where's)THE SILENT MAJORITY?」、5月には「同じ空の下」と2カ月連続でシングルをリリース。7月にはアルバム「BREAK MY SILENCE」を発表する。社会、友情、恋愛、性、孤独など自身が感じた思いをストレートな言葉で表現した歌詞、聴き手の感情を揺さぶる熱い歌声で、支持を集めている。